『火の鳥 エデンの宙』 感想
ディズニープラスで配信されているアニメ
『火の鳥 エデンの宙』全4話の鑑賞をしました
原作である漫画の『火の鳥 望郷編』とだいぶ違っているところもありましたが、古典宇宙SFとしてとても楽しく鑑賞ができました
漫画の『火の鳥』がすごく好きなので、他の編をちょっとずつ思い出したりするシーンも良かったですし、作画も美しく、後半のアクションシーンも楽しかったです
原作の凄味のあるところ、個人的に好きなところとの相違が気になる部分はありましたが、『火の鳥』のアニメが新しく気軽に観れる配信サービスで作られるのはとても嬉しいことでした
ここからはネタバレ感想をいくつか書きます
閲覧はご注意ください
(ネタバレコーナーです)
原作では、主人公のロミは息子のカインを一人にしないために、そしていつか地球に帰るため、冷凍睡眠で成長した息子と子供をもうけるという選択をします
そして産まれた子供たちはいずれも男子であったため、息子であり夫であるカインは、息子たちとロミでふたたび子供をもうけて欲しいと願い、ロミはそれを受け入れて、また冷凍睡眠につくのです
しかしその後、孫である男たちとの中で、ただ一人の女であるロミは奪い合いの争いの原因になってしまう…という、なかなかのショッキングな展開なのです
それほどまでに地球に帰りたいという、切実な望郷の想いを抱く物語、それが『火の鳥 望郷編』のはじまりなのですが、さすがにそれを今のアニメで行うのはハードルが高かったのか、母子相姦のエピソードは変更されていました
でもこのアニメでも、ロミはそれを決意して冷凍睡眠についていた描写がありました
だから、起きたことは原作と違っても望郷の想いの強さは変わらない説得力がありました
それほど、そのシーンでの声優の宮沢りえさんの演技が良かったです
ただ気になった事として、声優さんの演技力に大きく差があったのが宜しくないと感じました
ロミの最初の夫のジョージの声優さんがあまり達者でなかったので、せっかくのロミの相手役なのに残念でした
こういう(達者でない声優さんの起用)現象が起きちゃうのって、昔からどうしてなん? と思います
でも、そのロミとジョージの息子にあたるカインの声優さんは、ジョージの癇癪持ちで抑制の利かない性格がそっくりである…という完璧な演技をされてて、おっ! じゃあいいね! ってなりました
(でも、そのジョージとカインの癇癪を起こすシーンがなかなかに不快に感じる内容だったので、面白い一方、ストレスでもありました)
60歳近くなった頃のロミの作画が漫画のとだいぶ違ったのも気になりました
顔にしっかり皺があって、安直な老女のデザインに見えてしまって…(それで後の若返りの描写が分かりやすくはなりますが)
手塚治虫さんの描かれた老年期のロミは、憂いのあるほっそりした、しかし美しい顔だったので、こちらの若い顔にそのまま皺を描いたような顔は不満ですね
不満と言えば、地球の大気が汚染されていてマスクが必要とか、ロミは優秀な遺伝子を持つために臓器を腑分けされて利用される予定だったとか、まったくよその作品の話みたいな要素が出てきて、これは必要なエピソードか? と疑問に感じたり
あの美しいエデン島は、結局なんのためにあったのかの説明がきちんとされてない点も気になります
でも、終盤でのチヒロのアクションシーンがしっかり増量されていて、チヒロ萌えですね、分かります! と、そこはめっちゃ嬉しかったです
中盤から最後まで、もうひとりの主人公であるコムくんの作画と声優さんもすごく良かったし
物語全体のテーマとして、どうして生命は生まれて生きるのか? だけではなく
生まれたからには生き抜かなきゃダメなんだってことが、描かれてもいたと思います
だからこそ、ロミもコムも生きてエデン17に帰れたという改編も安易なものには感じませんでしたし、2人でまたエデンを復興させるのだろうという終わりで、作中ほぼ登場しなかった火の鳥が飛び去るエンディングも、新しく語られた火の鳥だったと思える結末でした
ところで、手塚治虫氏の漫画が原作で、漫画とはだいぶ違った映画と言えば『メトロポリス』を思い出しますが
ありがたい事に、Amazon primeに配信があったので、こちらも観ました
作画がやはり素晴らしく、そしてボーイミーツガールものとして傑作だと思ってます
新旧の手塚さんアニメが配信されてる未来の世界観の今が、大変ありがたいですね
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