実は数ヶ月前に「ニセ逮捕状詐欺」という特殊詐欺にあい、60万円を騙し取られてしまった。詐欺グループは3人(電話番役、担当刑事役、刑事部長役)の非常に手の込んだ劇場型犯罪である。
本稿では、詐欺被害防止の観点から、実際のやり取りの全貌を晒しておく。
ちなみに私は40代会社員であり、所謂、この手の詐欺によく引っかかってしまうような「高齢者」ではない。しかしながら、高齢者でなくとも、電話を取った時点で洗脳されてしまうという恐ろしさがある。
状況によっては、誰でも被害に遭うリスクがあることに注意が必要である。
そもそもなぜ電話に出たのか?
私はIT関連のシステム運用の仕事をしていて、当日は休みをとっていた。
しかしながら、例え休日であっても、システム障害があると、昼夜問わず運用担当者から電話が入る。
このような状況から、私には電話番号を確認せずに電話に出てしまう癖があった(当然だが、これは非常に良くないと、今では思っている。電話に出た時点で危険なのだ..)。
すべては、寝起きのぼんやりした状態で受けた電話がきっかけだった。
朝一番に警察からの電話
というわけで、午前9時前、朝一で受けてしまった電話の内容が以下である。先に言ってしまうと「警察からです」と言われた時点で私の洗脳は完了していた形になる。
※私の回答についてだが、ほぼ「はい」など、相手の質問に従う内容しか答えていないので省略する(バカすぎるという話は置いておいてほしい。睡眠中に電話で叩き起こされたのだから、マトモな思考は働いていない)
※私の名前は例で「佐藤一郎」としている
電話内容
担当警部とのやりとり
電話は暫くの保留音の後、担当警部の「吉田」という者に繋がる。
先程聞いた事件名と事件番号を真面目にメモっていたのでそれを伝える。
事件の説明
LINEビデオ通話開始
秋田県署なんて、行けるわけない。電話を切るなんて、逃亡の意思ありと伝えてしまうようなものなので、それもない。もはや、リモートでの取り調べを希望するしかない。この時は、本気でそう思っていた。犯罪グループの思うツボである…。そして、吉田がLINEのビデオ通話に切り替える。
めちゃくちゃな指示だが、この時点で私はもう完全に洗脳されている。妻には「システム障害で必要な参考書があるので買いに行く」などと変な嘘を付いて家を出る。
※あとで妻から聞いたが「なんか怪しいとは思っていたけど、気付けなかったのが悔しい」とのこと..
漫画喫茶へ移動
1件目の漫画喫茶は半個室で上が空いているので音が漏れるということで移動。2件目の漫画喫茶については完全個室だったので、そこでLINEの取り調べを開始。取調べ中にしてはいけないルール(パソコンなどを見ること、水やトイレの時は断ること等)を事細かに説明される。
取り調べの内容
以降、取り調べの問答はかなり長かったので、さすがに要約とさせていただく。
謎の口座調査
本部長との会話
通話を継続したまま、担当警部と本部長との会話が流れる。
その後の顛末
詐欺にあった旨を妻に連絡し、一緒に交番へ駆け込み事情聴取と口座凍結をしてもらう。本署の詐欺専門の部署に連携してもらい、後でそちらへ向かうことになる。
専門部署の方にも事情聴取してもらったが、被害届けを出したところで、お金を取り戻すのは自分でやってもらわないといけなくて、お金が戻って来るかは別の話になる、との説明を受ける。
記録は残すので、もし犯人が捕まって万が一返金されるなんてことがあれば連絡はしますが、可能性としてはほぼないです、とのこと。
それなら被害届けは面倒なだけなので、出さないことにした。
その後、イオン銀行に調査依頼を出したが、後日連絡があり、口座残高は残っていなかったと報告された..。
あとがき
警察からLINEに誘導されても、最終的に伝えられる振込先の振込先名がイオン銀行の個人名であっても、その時点ではもう、洗脳されているので気付けないのだった…。
一度本当に騙されないと、この洗脳の恐怖はわからないと思う。
もちろん私自身「高齢者でもないんだから、LINEの振込詐欺なんてひっかかるわけないだろう」とタカを括っていたことは言うまでもない。また、自分にそんな詐欺電話がかかってくるとさえ思っていなかったが、まさにそこが盲点だった。
実際のところ、今は高齢者だけでなく若者もターゲットとして狙われており、全く同じ手口のニセ逮捕状詐欺の被害にあっている若者もいる。本当に誰でも騙されてしまう可能性があると強く感じた。
世の中的には被害者側の「恥ずかしい」という思いからか、実際の詳細なやりとりに関する情報が少ない。
詐欺グループはそれこそ24時間ずっと、どうやって人を騙すかということを考えているような集団である。
願わくば、こういった情報が、誰かの役に立つことを願っている。
検索用:偽逮捕状詐欺事件