携帯
忙しい朝のアパートのドアの前で、不意に万奈に呼び止められた。「携帯の天気のお知らせで、雨降るって! 傘持った?」と…。
傘のお陰で濡れずに、会社に着く頃に雨は止んだ。
間もなく「配達 本日19時予定」と、澤和運送からのお届けアプリで知らせが来た。
その画面にはニュース速報が流れ、「北◎鮮 ミサイル発射の模様」と…。
その毎日の情報の有難さには、誰も気付かない。
決算期で仕事の忙しい時期に、携帯電話が震えた。
ま〜、いつもの他愛のない連絡やお知らせだと、たかを括り少し落ち着いてからと、放って置いた。
また携帯が震えがやけに長いくて、携帯画面に見知らぬ電話番号が…。
なんだろうか?と思っていたら、携帯電話が震え、スワイプした。
「赤田さんの携帯ですね、山中総合病院ですが、万奈さんが…」
その携帯を持つ手の震えが止まらない。
病院に着き窓口に「"赤田”」と言うと、すぐに病棟に連れて行かれた。
看護師さんが「赤田さん、奥さんが自動車事故で…」と、その後の言葉は聞こえない。
「もう30分早ければ…」と、看護師さんが話した。
夕方のニュースを病院のテレビ見た、そこには“携帯電話”で撮影された“事故状況が映されて”、血まみれの妻が間近に映し出されていた。
“何故助ける事より、動画撮影?’'
“どうして、携帯を見なかった?”
日常の情報の多さに、どんどん鈍くなっていく自分を感じてしまう。
目の前の血まみれと携帯画面の惨劇、同じなのだろか?
冷たくなった愛した妻を目の前に、僕は携帯電話で連絡を…。
…………………… 終 ……………………
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