振り向くと…
“特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、ショートスティ、デイサービス、訪問介護”。
どこの町でも見かけるありがちな光景が、少しずつ少しずつ変化する。
それはまるでテレビの間違い探しで、赤色帽子がゆっくりとピンクへ変わり、そして最後は白に変わる様なスロースピードで変化するから気付かない。
多くの高齢者がいる時代に、多くの高齢者施設が有るけれど、そこに働く現役世代の人が減っていき、長寿の人が増えていく。
“廃校"とか“統合"とか小手先の事が通用しない…。
小学生のいない小学校とは違い、もっと深刻なのかも知らない。
老人施設が廃止されたら、溢れ出す長寿の先輩達はどうすればいいのか?
身体が利かない高齢者は増えるのに、介護士は減り続けていく…。
祖母が入所した十数年前とは違い、同じ施設なのに介護士の仕事は増え続け…、介護士も生身の人間だからバテもする。
そんな時にホローする後輩の介護士がいない…。
介護士の先輩はいつの間にか、“介護される側"になってしまった…。
体調不調を知りながらも休めずに介護をしてる私に施設入居者のおじいちゃんが、声をふり絞り優しく話しかけられ「体調が悪いのにありがとう…」そんな苦いコーヒーにほんの僅かな砂糖を入れる様な、優しい言葉に包まれる。
後輩はいなく、最前線で働く私はいつまで働けるのだろう?
いや、働かないとならないのだろうか?
親の長寿を願い、子供の未来を束縛しない事を考えながら働く私自身の未来は、苦いコーヒーの様な深味のコクがあるものなのかも知れない…。
そんな事がふと過ぎりながら働き、振り返る後に後輩がいない…。
…………………… 終 ……………………
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