老人ホーム
灰色の視線
グレーな目の色をした眼差しで大型液晶テレビを見ると言うよりは眺めているのは、年老いて身体がうまく動かせなくなった多くの“老人”達。
特別養護老人ホーム、老人介護施設、ショートステイなんて言葉を耳にした時は無いだろうか?
施設内に誕生日と年齢と書かれた紙に目がとまる。
102歳、99歳なんて年齢が並んでいて、“長寿大国 日本”を実感し、不思議な感覚になるが、大勢の介護士達の懸命な介護を見て納得した。
施設に入れるのはなかなか難しく介護されている老人達は入れただけでも幸運で入れない人は子供や孫が介護していて、介護する人は多くの時間を拘束され、悩んでいる。
ニュースで“親を介護疲れで殺した”と流れる。
「自分の親なのに、考えられない」と言う人達は経験せずに言ってるだけで、薄ペラな倫理感を振りかざす。
介護士、看護師は休日、休憩があり、決められ時間で終わるが、自宅介護は24時間体制で過ごし、ゴールの見えない日々を暮らす。
施設にいるグレーな目をした老人達を見ると、何とも言えなく刹那さを感じる。
夏は冷房、冬は暖房の快適な空間で羞恥心までも剥がされ時計の秒針だけは確実に進み、昨日と今日の違いすらない中で生きてはいるが、活きていない様に見える。
幼い頃に“おかあさん”と、見上げていた母もすっかり小さくなり、気丈な人で決して弱音を吐かなかった人だが最近めっきり気弱になった。
これが“年老いる”と言う事かと傍にいて感じる。
かつて父親の施設の“空き待ち”をする間、一年間だけ“自宅介護”をしたが体にチカラが入らない父親を入浴させるのは大変で身の周りの事もした、介護士さんに脱帽です。
父親は結局、施設入居待のまま亡くなった。
母親には、“長生き”をして欲しいと僕は願う、そして活きて欲しい!
そう願う僕も、一秒毎に確実に老いに進んで行く。
“長寿大国 日本”
“生かされる命”と“活きる命”
どちらも、命。
……………………終……………………