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新垣樽助さんのふたり芝居「黒白」CD感想(と演技を食べる話)

先日、新垣樽助さん主宰のふたり芝居の前夜祭に参加してきました。(イベントレポなどはひとつ前の記事に書きました)
あまりのふたり芝居の素晴らしさに感動して、ふたり芝居の初演の作品「黒白」(こくはくと読む)のドラマCD版を購入したものを聞いたので、感想をしたためます。
こちらはまだ専用サイトでの購入が可能なので、あくまでもネタバレはしないように心がけたいと思います。ネタバレぶちまけるものは、今後ぷらいべったーなどに載せようかと思っています。

過去の「黒白」の感想ポストなど遡らせていただいて拝見しましたが、初演が1日で、コンパクトな会場のようだったのでチケットが取れなかった方も多かったようですね。だからこそ、この音源化は貴重ですね😭
舞台の録音ではなく、改めて録ったものです。
視聴動画はこちら。

お話は、どこかの村にいる、二人の少年のお話から始まります。カールは元気で運動神経も良くて人気者、対してクルトは内気で友達が少なく詩を書くのが好きな少年です。
CDの初めのトラックが、タイトルと、このお話のテーマである、「俺が、■■■を殺した」というセリフだけが入っています。なにこれ???不穏だよね???どゆことだよおい???となりながら、次のトラックに行きました(ネタバレになるので書けませんが、既にここでとても気になることが出てきます。ゆーますさんのマジックは既にここから始まっているのだと、「シンキングブルー」を味わった私は納得しました。)
背景に流れる音楽はケルト風の曲で、のどかな村を思わせます。(聴き始めてすぐに記憶忘却レベルが高い私は先ほどの不穏さをすっかり忘れていました)自然が豊かで、二人はまだ学校にも通っていて、どちらも母親、父親とのふたり暮らしをしているようです。どちらも教員をしている片親家庭同士で、性格は違えど似たような境遇を持ち、仲良くしているのです。

このお話は、少年期、青年期、壮年期に分かれており、この二人の登場人物の人生を描いていきます。子供の頃、といえば、遊び、勉強、家族、恋…私達の子供の頃と変わらない伸びやかな二人の少年時代から、どういう運命を辿っていくのかがおおまかな筋です。

ここで、二人の演じ分けについて。ちょっと言い訳しておきますと、私は2024年春に興津さんの沼に飛び込んだばかりで、新垣さんと古川さんのご活躍についてはそれぞれレベル1くらいの習熟度だと思うので、お二人のファンの方にはお手柔らかに読んでいただきたいです(興津さん習熟度レベル12くらい到達してたい気持ちですが果たして🤔)

昼公演は、カールを新垣さん、クルトを古川さんが演じています。
同い年なのにお兄さん感のある新垣さんカール。大人しい印象なのが古川さんのかわいいところが出ているクルトでした。新垣さんの声って、私はウッディな感じというか、白樺林とか檜みたいな伸びやかなところがあって、癒される声なんです。その声で演じられるカールは、子供の頃から徐々に変化していくのがすごいと感じました。
古川さんのクルトは、少年時代が特にみずみずしい果物みたいな感じで、かわいいところがあって、好きな詩のフレーズを言うところが余韻があって素敵です。

夜公演では交換していくわけですが、変わるとまた印象が違います。古川さんがカールになると、エネルギーが溢れている感じが炎のようで、輝くような明るいオーラがありました。対する新垣さんのクルトは動に対する静、穏やかでやさしい印象になります。新垣さん的にはこちらのクルトの方が演じやすいのかなと勝手に想像しました。

それぞれの話には二人以外の喋る脇役がシーン毎に出てくるのですが、それぞれのキャラ設定が違うので、一枚のCDでお二人のキャラ毎の演じ分けを楽しめちゃうのがお得です。きっとこんなイメージで考えてるのかな〜など、想像するのが楽しいです。(台本にはある程度指定はあるのかと思いますが)新垣さんの脇役の演じ方は流石先輩、なところがありましたし、古川さんの演じる脇役さん、味濃いんですよ…🤭

そして、2つの昼夜で、途中から話しが分岐してエンディングが変わるんです!!!ついうっかり、「シンキングブルー」と同じでラストトラックから違うのかなと思っていたので、びっくり!!!!だから、実はこの変化、既に初めの方から演じ分けに含まれている気がして、これは何度も噛み締めて聴かないとだめだ…と思いました。

話の内容はCDを聴いていただきたくここまでにしますが、私はこの朗読劇、ふたり芝居「黒白」には、特別な価値があるなあと思うことを述べたいと思います。

私は普段はアニメやドラマCDなどで声優さんの声を楽しんでおりますが、興津さんのラジオなどで「コスプレトーク」なるコーナーがあって、リスナーさんからのお題に合わせて寄せられた声のコスプレ、キャラクターを演じつつお話するんです。それを聴いていて思うのが、演技にも色々あるな、ということなんです。(そういえば、今年の夏前にやっていた、ゆーますさんの関わるぐだぐだレイディオ?を聴いた時も告知がコスプレ系で、とんでもないお題を興津さんと新垣さんと梯さんが演じていてすごく面白かったです。アーカイブがないのが悔やまれる)
アニメやCDは原作者がいたり、音響監督さんがいて、色々な要素に合わせて間尺などを調整されながら作っているものだと思います。フリートークなどで、興津さんも心地よく演じたっぽい時も、なかなか指示があって難しかったような時もあるみたいで、ラジオで演じるコスプレトークは、ある意味本人がその場で出してくる演技素材そのものだ!と思うんですね。でも、今回ふたり芝居前夜祭で聴いた「シンキングブルー」の切り取りシーンの演技を見ると、やはり本物の商品としての演技の凄みもめちゃくちゃ感じました。
例えるならば、コスプレトークみたいなのは、そのまま畑から野菜を取ってきて塩だけかけてそのままいただくような、フレッシュかつ素朴なものですが、その場では美味しいけど本人の中での本気度というか、練ったりしたものではないわけです。(それでも面白いしどちらかというと演技と知能の閃きって感じ)
それに対して、アニメとドラマCDではそれは、とにかくそこに監督などの意向や技術的なものが介入してできている、料理として完璧に調理されているものになります。美味しいに決まってます。何人ものプロが全てを尽くしていますから…!!!

で、朗読劇はそういう意味ではその料理だけど、素材はいま目の前で取ってきたものを、目の前で本人が調理して、なおかつ音楽や照明だけのとても簡素な味付けで出してくるような醍醐味です。
だからこそ、本当は生で観たいですよね😭「シンキングブルー」は当時の公演の録音なので、その時の空気感や勢いは声に乗っていて、ある意味臨場感もあります。聴いていたCDと、前夜祭で生で聴いたものは、同じじゃないけど同じ、同じだけど同じじゃない、でした(プロですから)

ドラマCD化した「黒白」には、舞台の録音じゃないからだめか…というと、そうではないのです。というか、ここにしかない特別なことがあると私は思っています。
これは、「シンキングブルー」のパンフレットに書かれている演出家の江嵜大兄さんとの対談で知ったのですが、「黒白」の時は演出家をつけていなかったんだそうです。
照明と音楽、効果音のきっかけは新垣さんとゆーますさんが決めて、演技についてはキャストとゆーますさんでディスカッションしたとのことでした。(パンフネタバレすみません)江嵜さんもそれは大変だとコメントされていますが、このコンパクトなキャストでの演技、話の構成や人物の多さを考えると、相当なチャレンジだと思います。

つまり、私が推したいのはここです。
「黒白」は、他の誰でもなく、新垣さんと古川さんがご自身で考え、二人とゆーますさんで話し合って決めた演技を聞けるということなのです!!!!

先ほどの例えでいうと、ドラマCDとしての録音ではありますが、一つ一つのセリフの言い方や演技が自分から出てくるものってことなんだ…と思ったら、私はめちゃくちゃ価値があるなと思いました。
だって、よくオーディションでこう演じてと言われるみたいな話があるじゃないですか?声優さんは、ある意味でプロとして、こうしてと言われたイメージに合わせて喋ることが仕事であると思うので、いま聴いているアニメやドラマCDが、本人が思う演技とは限らないと思うのです。だからこそ、私は興津さんのコスプレトークなどを聞くと、こんな癖がある、とか、こう考えてこの声か、とか色々考えちゃうんです。でも、やはりそれはあくまでも、即席に、その場でできたものじゃないですか。
それに対して、「黒白」は、二人の役者(とゆーますさんで)が真剣に考えて作り上げた演技を聞けるので、すごく珍しいなと思いました。新垣さんと古川さんが持っている食材を、ゆーますさんと相談しつつ二人だけで調理した手料理をいただけるんですよ!?すごくないですか????
これを聞くと、二人のお芝居の向き合い方や方向性や素の演技が分かるのかなと思って、これからも聴き込みたいです!!!

演出家がだめというわけではありません。「シンキングブルー」では、どうやら江嵜さんはお芝居を決めすぎないタイプの演出家さんのようで、新垣さんでも迷ったままで先に進むこともあると話されていました。だから、色々な客観的な視点からの指摘やアイディアを受けて新垣さんと興津さんが出した演技の集大成となっているので、「シンキングブルー」も素晴らしい作品になっています。ああ、また聴きたくなってきた。

なんなら、第3公演の「グレイテストレスト」は平川大輔さんを呼んでやるんです。明日だけ行けるんで、多分見たらまたレポ書いちゃいます。他の布陣は「シンキングブルー」と同じですから、素晴らしいに決まっているんです。(平川大輔さんについても習熟度レベル1なので本当にお許しください)

でも、もし新垣さんと古川さんがお好きな方には、「黒白」はモーレツにオススメです。この作品にしかない二人のそのままの演技、二人の頭と身体で作り上げた演技を味わうのは、とってもすてきな体験になると思います。

まだ、CDも台本もセットで購入できるので是非是非!!

「黒白」
主宰、出演 新垣樽助
出演 古川慎
脚本 ゆーます

ところで、私は声などを他のもので例えるのが好きなので、来年の3月3日(耳の日)と5月8日(声の日)に、 #あなたの好きな声はたとえるなら何
みたいなタグで好きな声優さんの声をXとかでただ表現したいのですが、他の人のものも聴いてみたいので参加者募集してます。(あと、なんかもっと文字数すくなくて品が良くていいタグのアイディアありましたら教えてください)
参加者だれもいなくても、やりますけどね!!!
また近くなったらXで騒いでるかなと思います〜

一人で感想を騒いでいるだけの記事をここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!
(モットーは、ネットの海の片隅で推しへの熱い気持ちをぶちまける、なので)

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