片帆

徒書 わたしのお空は遠くに

片帆

徒書 わたしのお空は遠くに

最近の記事

『特撮家族』髙見澤俊彦:著 感想

夏の名残り空がひろがる日曜日。 久しぶりに神田明神を参拝する。 目的は妖怪展 ―あらわされた江戸の妖怪― 御社殿の左脇にある資料館。 神田明神へは何度も訪れているが、こちらの建物へお邪魔するのは初めてだった。 朱色の趣ある建物は、2階が妖怪展、3階は常設展となっていた。 ほんのりと薄暗い厳かな空間をゆっくりと進む。 平将門公、妖怪文化、民俗学、それらが大好きな自分にとって貴重な所蔵資料を間近に拝見できる機会に恵まれるなんてとても幸せだ。 神田明神を知るきっかけとなった荒俣宏先

    • 恋慕

      ひとつでも重なる記憶がほしくて。 ひとつでも多く真似事がしたくて。 馬鹿だなぁと思われるかもしれないけど。 思い出や風景の中からかき集めた共通項は宝物なのだ。 #夏の1コマ

      • 夏の追想

        砂浜の熱さを足裏に感じるのはどれほどぶりだろう。 指の間に入り込む砂粒さえ心地良い。 潮風が頬や耳をくすぐる。 でも日光にはあまり長く当たれない。 夏に生まれたのに陽に弱い。 幼少期の写真を見ると、皮膚科で出された乾くと白くなる薬をしょっちゅうそこかしこに塗られている。 今でも塗り薬は手放せない。 今日は八月の海を見たくて車を走らせた。 車内BGMはTHE ALFEEのアルバム『FOR YOUR LOVE』 景色が海に近づくにつれ、『真夏のストレンジャー』が言葉にできない

        • Dusk Till Down

          さざめく昼をなだめながら夜がやってくる。 街の灯が傷ついた人たちを包み込む。 一日の中で、天使が手を差し伸べる時間。 こんなかたちで生まれてきたわたしにも平等に。 でもそれは、とてつもなく儚い。 家路を急ぐ車を眺めながら、あなたを思う。 今頃、東京の光を受けながら首都高を走っているのだろうか。 それとも路地裏の猫にあいさつをしてカメラを向けているのだろうか。 ほころんだ世界を繕うあなたの指先。 奏でる音は迷子をすくうんだ。 混ざり合う空は瞬く間に様相を変え、視界に入る一番

        『特撮家族』髙見澤俊彦:著 感想

          『近畿地方のある場所について』感想

          『おやまにきませんか。かきもあります』 SNSでこの広告を目にした時、心と体がとらわれた気がした。 山あいと思われる鬱蒼とした木々にひらがなのキャッチコピー。 強烈に惹かれた。 山や柿が好きだからではない。 むしろ苦手なほうだ。 でも、既視感があった。 懐かしさすら覚える景色。 それが、背筋さん著『近畿地方のある場所について』だった。 本屋さんに行くたび、面陳されたり平積みされた目を引く装丁。 気になって仕方なかった。 周りの読み終えた方たちに感想を訊ねると、一様に「

          『近畿地方のある場所について』感想

          生育

          あの人の年齢から自分の年齢を引く。 23歳。 十分、父子としてあり得るわけだ。 自分はこの人の子どもなのかもしれないと、不思議と昔から感じていた。 そうあってほしいという願望だったのかもしれない。 そして、時々思い出したように叔父という立場で会いに来るその人を、わたしは大嫌いで大好きだった。 祖母が鬼籍に入って、わたしは世界から取り残されたようなこの村で日々を過ごす。 もう、母は誰なのかとか、父と名乗りながら幼いわたしを置いてさっさと別に家庭をつくってしまった人などはどうで

          Bitter Sweet

          どうしてこれほどまでに惹かれるのだろう。 言葉をなぞり、繰り返し聴き、その姿に見惚れる。 愚かなわたしにも居場所をつくってくれる。 前世からの縁? もしそうならば、わたしは人生1回目の人たちにも敵わない出来損ないだ。 同じことを思ったり、考えに賛同したり、心の行いを正してもらったり。 迷った時は足もとを照らしてくれる。 知らなかった風景を見せてくれる。 置いてきぼりにしてきたものを運んできてくれたりもする。 共通点を見つけては嬉しくて。 出会うために生まれてきたわけじゃ

          Bitter Sweet

          映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

          人気漫画家・浅野いにお先生の原作漫画(全12巻)を映画化し、前章・後章合わせて4時間で構成された作品。 わたしが最初に原作漫画を読むきっかけとなったのは、推しである諏訪部順一さんがX(当時Twitter)で呟かれていたからだ。 無論、浅野にいお先生のことは存じ上げていたし、気になりつつも何となく食指が動かなかった。(ご無礼をお許しください) しかし、『デデデデ』のアニメ化のお知らせと、愛読されていたこと、オーディションを受けたい、おんたんのお兄さんを狙いてぇ〜という諏訪部さん

          映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

          音楽朗読劇READING HIGH『ROAD to AVALON』

          2024年5月12日、東京ガーデンシアターにてROAD to AVALONを観劇した。 リーディングハイの作品はいくつか拝見してきたが、生まれて初めて音楽朗読劇というものに触れたのは2020年2月のエルガレオンだった。 ハンカチが絞れるほどの涙を流したことは未だに忘れられない。 今作はアーサー王伝説をもとに創作されたという。 アーサー王 諏訪部順一さん。 魔法使いアンブローズン・マーリン 大塚明夫さん。 円卓の騎士たち ランスロット 中村悠一さん。 ガウェイン 安元

          音楽朗読劇READING HIGH『ROAD to AVALON』

          心的時間旅行と夕暮れ

          空港や駅が好きだ。 旅行に帰省、懐かしい人や大好きな人たちに会える機会。 構内の音も心地良い。 そして、目的地に運んでくれる乗り物たち。 だから飛行機や電車も好き。 今日は4日ぶりの晴天だった。 午後3時、やや陽が傾き始めた空を眺めているとキラリと光るものが。 西日を浴びた飛行機だ。 もっと近くで見たい。 わたしは空港近くの広場に向かった。 飛行機というのはなぜこうも胸を高鳴らせるのだろうか。 何もない空に突如、ランディングライトを灯した飛行機が現れるあの瞬間の心強さ。 手

          心的時間旅行と夕暮れ

          サニーのラブレター

          トッケビの好きなシーンの中で、もうひとつ。 イ・ドンウクさん演じる死神とユ・インナさん演じるサニーの物語もトッケビを語る上で欠かせません。 第15話のサニーがウンタクのラジオ番組に送った一通のメール。 初めて聴いた時、胸が締め付けられて泣きました。 書き起こしてみると、言葉の美しさと恋しさに指先が震えます。 宿縁や運命が実際あるかどうかはわかりません。 でも、どうしようもなく相手に惹かれて懐かしく感じたり、叶わぬ恋を来世に託したいと思うことは、輪廻転生のもとにわたしたちは生か

          サニーのラブレター

          トッケビ/도깨비

          わたしの推しの諏訪部順一さんが、吹き替えでご出演されている「トッケビ」 あまりに有名な作品なので、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが簡単に内容を少し。 コン・ユさん演じる高麗時代の英雄キム・シンは、王の嫉妬から逆賊として命を落とします。 その後、神の力によって“不滅の命”を生きる“トッケビ”となってしまったシン。 トッケビとは朝鮮半島に伝わる精霊や妖怪のことです。 彼を永遠の命から解き放つことができるのは"トッケビの花嫁"と呼ばれる存在ただ一人。 その人こそがキム

          トッケビ/도깨비

          プレミア音楽朗読劇VOICARION スプーンの盾

          2023年12月10日、有楽町のシアタークリエにて『VOICARION スプーンの盾』を観劇した。 この日のランチはカレーム福山潤さん、ナポレオン立木文彦さん、マリー日笠陽子さん、タレーラン諏訪部順一さん。 諏訪部さんタレーランにお会いするのは初めてで、匂い立つほどの色気と、気品と才智を纏ったお姿はまるで18世紀末のフランスから降り立ったよう。 タレーランとナポレオンとの掛け合いは、ふたりが歩んできた年月を自分も共に見てきたかのようなリアルさがあった。 だからこそ、そんなふた

          プレミア音楽朗読劇VOICARION スプーンの盾

          「キングダム」ラース・フォン・トリアーに恋して

          推しの諏訪部順一さんが少し前にポストされていた11月にWOWOWで完全放送されるという『キングダム』シリーズ。 ラース・フォン・トリアー監督が手掛けたデンマークのTVドラマ。 無知なわたしも北欧の鬼才と呼ばれるこの監督の名前と作品はちょっとだけ知っていて、「ダンサー・インザ・ダーク」で打ちのめされて、「メランコリア」で好きかもと思いつつそれ以上踏み込んでいない世界だった。 推しのポストで俄然興味が沸いたわたしはWOWOWの完全放送の扉をたたいた。 キングダム2Kレストア版第

          「キングダム」ラース・フォン・トリアーに恋して

          推しと出会わせてくれたもの

          この企画、いくつも投稿していいのかな。 でも今のわたしは書かずにいられない。 「テニスの王子様」 この作品はわたしの人生になくてはならないものだ。あまりに好きで安易に触れたり発言できなかったりもする。 2002年の3月13日の夜。 テレビから流れた跡部様の声に心を奪われた。 わたしは夕食の支度をしていた。 2DKのアパート、狭いキッチンで麻婆豆腐を作っていた。 水曜の夜7時はテニスの王子様と決まっていた。 背後にあるテレビから聴こえた声にハッとなって振り向いた。 それまでアニ

          推しと出会わせてくれたもの

          ロンハールーム

          ラジオ関西で毎週土曜の夜24時から放送中の番組『ロンハールーム』 「ロング」こと石川英郎さんと「ハード」こと諏訪部順一さんのコンビがパーソナリティを務めるラジオ番組。 2007年4月にスタートし、当初は『工口x工口(こうぐちこうぐち)』という番組名。 わたしはまだリスナー5年目だけど、生活になくてはならない存在となっている。 ノンスポンサーで16年続くラジオ番組って凄くない!? ロングさんとハードさんのフリートークに楽しませていただく1時間は毎回あっという間。 お腹がよじれる

          ロンハールーム