小説:狐028「個性」(1378文字)
「で、何だ、なんかあったのか?」
スミさんの顔色は悪いままだ。肌の色・質感がまるで粘土だ。私が球状の氷を入れずにビールを飲むのがそんなに奇異なのだろうか? そもそもこっちのほうが一般的な飲み方のはずだ。
「なにかあったと言えばあったし、なかったと言えばなかったって感じです」
「おいおい、ナリさん。変な言い方するなあ。あんた、もっとまともだったろ」
「『狐』ってこういう所ですよね」
「あ、ああ、確かにそうだ。まともなやつはあんまりいねぇな。みんなだいたいまあ何つーか、平た