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【新刊エッセイ】森川智喜|短編集刊行に際して


短編集刊行に際して

森川智喜

 ありがたいことに、このたび『動くはずのない死体 森川智喜短編集』(光文社)が刊行される運びとなりました。「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」「動くはずのない死体」「悪運が来たりて笛を吹く」「ロックトルーム・ブギーマン」という五つの短編を収録した本であり、ほかの森川作品と内容的なつながりはありません。

 収録作同士も内容的に無関係です。たとえば「幸せという小鳥たち~」は洋菓子メーカー社長のドレスがずたずたにされるおはなしですが、「フーダニット・リセプション~」はまったくべつの物語であり、破損してしまった探偵小説の解答編を高校生二人が修復しようとするおはなしです。

 書き下ろし「ロックトルーム~」を除く四作は光文社「ジャーロ」誌を初出とします。「フーダニット・リセプション~」は本格ミステリ作家クラブ選アンソロジー『本格王2022』(講談社)にも収録されました。

 自分は作者ですが、これらの物語を作ったという感覚はあまりなく、どちらかというと、これらの物語がひとりでに育つのを見届けたという感覚が強いです。自分のもとで大きくなった物語が外の世界に巣立つのを見る感覚でしょうか。

 今日作者として、あるいは一読者として本書を見るとき、五つの世界について均等にウェイトを感じます。

 先述の通り内容的に無関係な五作なので、どれから読んでくださってもとくに問題ないと思います。自分が一読者として本書を手に取ったらどの作品から読みはじめていただろうか、と考えてみることもあります。が、わかりません。

 みなさんの読書ライフの糧になれば、うれしいです。

《小説宝石 2023年7月号 掲載》


『動くはずのない死体 森川智喜短編集』あらすじ

「なんでここにいるの? もしかして動いた? 死んでるのに?」どこまでもロジカル、限りなくポップ。そしてほんのりクレイジー。本格ミステリ大賞受賞作家の奇想が踊る、軽妙洒脱ミステリ!

著者プロフィール

森川智喜 もりかわ・ともき
1984年生まれ。2010年『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』でデビュー。’14年『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』で第14回本格ミステリ大賞を受賞。


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