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ミステリー誌「ジャーロ」より全文公開。
【note連載中の評論・コラム一覧】
日本ミステリー文学大賞の軌跡
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人間は愚かであり、その人間が生み出した社会も間違っている|杉江松恋・日本の犯罪小説 Persona Non Grata【第12回】
▼前回はこちら 文=杉江松恋 西村京太郎は、本質的に犯人小説の作家であったと思うのである。 その名を高らしめたのは一九七八年の『寝台特急殺人事件』(現・光文社文庫)に始まるトラベル・ミステリーの作品群であり、主人公の十津川省三警部は名探偵の代名詞と言っていいほどの人気キャラクターに成長した。十津川は初めから鉄道専門の探偵だったわけではない。初登場作は『赤い帆船』(現・光文社文庫)で、日本人で初めてヨットによる単独無寄港世界一周を成しとげて英雄となった内田洋一が不審死
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人間は愚かであり、その人間が生み出した社会も間違っている|杉江松恋・日本の犯罪小説 Persona Non Grata【第11回】
▼前回はこちら 文=杉江松恋 山田風太郎にとって犯罪は相対的なものであった。 この作家は確固とした倫理の基準を持っていた。それは社会規範とは別物で、人間という存在の根底に関わるものだった。法は文明の一部だから、社会的な存在としての人間を構成する要素ではあるが、絶対的なものではない。法を犯すか否かよりも、もっと重要な問題がこの作家の中にはあった。作中に出てくる犯罪者は、事態を深化させてこの問題を浮かび上がらせるために描かれたのである。そのため、彼らは非常にねじくれた動