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表面張力の美しさ

革はとても面白い素材で、「適切なストレスを与えると美しい膨らみを描く」という性質がある。ぼくが革で表現したいもののひとつだ。

ぐっと伸ばされてピンと張っている状態の、内側から外側への圧力を感じさせる緊張感。
それは例えば、競走馬の筋肉の迫力や幼児のほっぺたの可愛らしさであり、表面張力の美しさだ。

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理想の膨らみは偶然には得られない。
要は「革に少しだけ無理をさせる」ということで、革の性格や品物として求められる要素を勘案しながら、表裏のバランス、芯材の質と厚み、革の厚みの調整、貼り合わせる角度、その他たくさんの要素から成る。
加減が甘いとぼんやりした顔になり、やり過ぎればわざとらしいものになる。
新品のときだけ綺麗でもダメで、何十年経ってもその表情が失われないような仕立てでなければいけない。百年以上昔の鞄でも緊張感を維持しているものは存在する。

過不足ない緊張を革に強いることで、自然で美しい表情が生まれる。
塩梅は難しいが実現する為の試作は惜しまない。というかぼくはそれが楽しい。
長く美しくお使いいただける品物をつくりたい。



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