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愛してるゲームを終わらせたいの感想を書く。第十八話。

一日一話、愛してるゲームを終わらせたいの感想を書く。今日(2回目)は第十八話「幼なじみは終わらせない」です。

前話でお互いに正直な気持ちを打ち明け始めた二人。
「こんな俺が、…さ、お前に勝とうと頑張れたし…」
「なんていうか…少しは、変われた気がする…」
「見た目だけじゃ…なくてな…」

「わ、私も…このゲームのおかげで、すっごく変われたと思う。」
「どうやってゆきやをドキドキさせてやろうかって…毎日…ずっ…と考えてるし…っ。」

「そんなの俺の方が…っ。」
ここもうお互いに「あなたのことが大好きです」って言い合ってるようなもんやん!

「ほんとなら…告うべき…なのかもしれない…」
と思うゆきや。
「でも、今じゃない…」
そして思い起こされる中学での日々。
「お姫様のみくにお似合いなのは、俺じゃない。」
「みくの一位の旗を受け取れるのは、俺じゃない。」
「みくのあんな顔をさせられるのは…俺じゃない。」
「ずっとみくの隣にいられるわけじゃない」
「そんな風に思ってしまうくらい、今の自分に自信がない…」
「こんな気持ちのまま、みくの隣にはいられない…っ。」

ここねぇ…本当に苦しい。
そもそもみくの方が先に恋心を抱いて自分磨きのスタートダッシュを決めていて、自分が気づいた時には遥か先にいる存在に思えて。
愛してるゲームなんていう「くだらないゲーム」で繋がっている関係で。
相手は自分のことを好きかもしれない。けど、だからといって付き合い始めて、そのままずっと一緒にいられるかと言えば、そうじゃないんじゃないか。
一体自分に何ができるだろう。
相手に見合う存在なのだろうか…。
付き合い始めたらどうしてもお互いを比べてしまう。そしたらきっと今よりもっと引け目を感じてしまう。
そんな苦悩が見えるよう。

「でも…こんな俺でも…」
「愛してるゲームのおかげで、変われた。」
「愛してるゲームがなかったら、変わろうなんて思わなかった。」
「こんな俺が…みくを振り向かせるために、頑張れた。」
「自分の気持ちとも、向き合う事ができた…」
ここのゆきやの積み重ねも沁みる。ほんとに。
どれだけみくのことを思って、自分自身と向き合って、恥ずかしい、受け入れ難い色んな感情を乗り越えて、ただ大好きな幼なじみに見合う自分になるために。

そしてそれはみくも…。
「愛してるゲームで…私は変われた。」
「泣いてばかりいた私が、ゆきやと出会って、明るくなれた。」
「ゆきやを好きになって…」
「愛してるゲームを始めて…」
「自分の事を、可愛いって言えるようになった。」
みくは引っ込み思案な性格で最初からなんでも出来たわけじゃなくて。でもゆきやを好きになって、「可愛い」って言ってもらいたくて、どんどん色々なことに挑戦して、自分に胸を張れるようになって。

「最初はただの暇つぶしのゲームだったけど、」
「ゆきやに構ってほしくて始めたゲームだったけど、」
「みくは何が好きなのか…」
「ゆきやはどんな味が好みなのか…」
「みくはどんな服が好きなのか…」
「ゆきやは何に興味を持つのか…」

「ずっと…」
「ずっと…」
「みくの事を…」「ゆきやの事を…」
「考えるようになった…」

「愛してるゲームがあったから、大好きな人のために変わろうと頑張れた。」

ここまでの丁寧な描写と演出。
5ページ目下のコマでは別々のコマで視線を逸らす二人。
それがゆきやの胸中から始まって、みくの番が来て、そして二人の想いが少しづつ重なっていって、16ページで一つのコマでまっすぐ見つめ合う二人に収束する。なんと美しい演出か。

1巻でのデートでみくにドレスを着せたゆきやが、どんな思いで選んだのかが描写されるのもいい。
度々「いつも通り可愛い」とか「美少女と放課後にスタバ」とかって自分を表現してきたみくが、そう言えるようになるまでの思いに触れられるのもいい。
ここの一連の描写でこれまでの物語、やり取りの深みが一気に増したと思う。

「だからこそ…まだ…」
再びみくを布団に横たわらせるゆきや。一気にドキドキが高まるみく。でも、さっきとは違う。
ギュッと手を繋ぐも目を逸らしてしまうゆきや。
そんな「らしさ」に少し嬉しそうな表情を見せ、
「どうせまたゆきやの方が先に離すんじゃないの?」と反撃に出るみく。
「私だって、こんなの余裕だぞ?ヘタレ。」
ここのみく、ここまでの表情と相俟ってすごく可愛く、そして大人びて見えてとても魅力的に感じる。

みくの挑発に乗ったゆきやは、グッと身体を近づけるとギュッと抱きしめ、「じゃあ、…朝までこのままな?」と告げます。このコマの目を見開いたみく、ドキドキが伝わってくるようで非常に良い。
「心臓…バクバク言ってるけど…?」
「知らん。…お前のなんじゃねぇの…?」
「鼻息あらい…頭にかかってる。緊張してんでしょ。」
「俺の肺は大容量だからよく吸って吐かなきゃいけないんだよ。」
「おい嗅ぐなっ!」
「なんだ恥ずかしいのか?なかなかマイルドな匂いだったぞ。」
「きっしょ!!なんでそんなかっこよく言えた風な顔できるの。」
と圧倒的尊さと最後はいつもの二人らしいやり取りを見せ、

「いつか絶対、」
「みくに…」「ゆきやに…」
「相応しい自分になるまで…」

「愛してるゲームは、終わらせない…」

そして…
身支度を整え家を出るゆきや。そこには夏服姿のみくが。
ここのやり取りは1話のオマージュですね。
成長した二人のやりとりが眩しい中、忘れられない夏が始まる…

いやー、すごい!本当にすごいと思う。
始業式から始まって、断片的に過去の描写が挟まれて、「ちゃんと時間の流れるストーリーのある作品」とわかる一方で、序盤はイベント毎に「ゲームだな?」「こいつ仕掛けてきやがった」のように、二人が趣向を凝らして愛してるゲームをしながらドキドキする姿を見せてくれる描写が主であり、「1話完結もの」的な楽しみ方を感じさせていた序盤。
そこに対して13話からの本シリーズで過去が明確に描かれ始め、二人の距離が近づき、離れ、思いを伝え合い、一気に物語が動き出す。
「お前ら本当の愛してるゲームはこれからだからな?覚悟は出来てんだろうな。」という作者からの強いメッセージを感じるようだ。
そして実際この先、とんでもない勢いでストーリーが展開していくのだ。

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