"苦痛をデザイン"するゲームUXデザインから学ぶ、課金型コンテンツのこれから
※2021年7月に作成したものを再編してお届けしております。
本noteでは、ユーザーがいかにして課金に辿り着き、リピーターになっていくのか。また、それらを実現させるためにどういった予測がされているのか、ユーザー側の視点とコンテンツ提供者側の視点それぞれの例を紹介しつつ、基本プレイ無料 + 課金型コンテンツのこれからについて解説します。
目次は以下の通りです。
コロナ禍におけるモバイルアプリ市場の急成長について
※コロナの被害自体は未だ続いているため、初めて国内で緊急事態宣言が発令された2020年4月から、まん延防止等重点措置が最後に実施された2022年3月までを本noteではコロナ禍と提示する。
2019年から2020年で所謂おうち/巣ごもり需要が伸びた結果、アプリ市場は全体的に成長を遂げ、過去最高記録を打ち出した。今回は様々なモバイルアプリの中から、モバイルゲーム(ソシャゲ)に関して注目していこうと思う。
買い切り方の家庭用ゲーム(CS)機とは違い、ソシャゲは「基本プレイ無料+課金要素」で長期的に運用していくというスタイルが浸透しつつあった。このシステムが出た当初はPay to Win要素が強く、結局お金を払わないと楽しめない~といった不満も多かったが、徐々にその傾向は緩和され、丁度このタイミングでバランスが取れたのかなと思う。
この「基本プレイ無料+課金要素」がソシャゲバブルを招き、かつ2024年現在でも運用方針のスタンダードな位置にあるのは様々な理由が考えられる。この後、そのいくつかを例を挙げながら紹介していこうと思うが、多少"ユーザーを騙している"ような記述も出てきてしまう。
ただ、誤解のないように言うと"ユーザーがコンテンツを楽しめる"ことが最も優先されるべき目標であり、その副産物としてどういった付加価値をつければよりサービスを伸ばせるかという点が大切だ。基本どの会社もその考えを基準にアイディアを練っているはずなので、あまりネガティブには捉えないでほしい。
早速だが「このゲームは基本無料でプレイできますが、一部課金要素があります。」ゲームをプレイするどころか下手をすればダウンロード画面にすら記述があるこの定型文、この一文からすでに我々は掌の上に立たされているのである。
より面白いコンテンツを作るために、4つの「遊び」を追求する
ロジェ・カイヨワはフランスの文芸批評家・社会学者で、"遊び"や"夢"について多くの研究と著作を残した人。興味がある方はWikipediaからどうぞ。
4つの「遊び」とは
競争:フレンド機能や対人要素
偶然:ガチャ機能やキャラのランダムな行動
模倣:コスプレ、小説、イラストなどの二次創作
眩暈:ゲーム音楽、ド派手な演出
より優れた面白いコンテンツを作るために、「遊び」を追求する。
何を中心にコンテンツを考えればいいか分かったところで、次にどうやって売り上げに繋げていくのか?
ゲームをプレイする上で感じる"苦痛"とは?
「遊び」では"偶然"や"眩暈"に分類
進化・覚醒でキャラクターをもっと強く!高難易度でよりやりごたえのあるステージが欲しい!普段のゲームとは違うタイプのミニゲームで味変!(原神やNIKKEはよく取り入れてますね)
新しい要素、ステージを登場させることでよりユーザーの時間を奪う。もっと早く攻略したい、もっと素材を厳選したい、折角実装されたミニゲーム(+配布石がある)ので触っておきたい……など。
同様に
「遊び」では"競争"や"偶然"に分類
完凸したい!持ってない友達にマウントを取りたい!期間限定やコラボキャラはとりあえず一体確保したい!など
スタンダード/OP環境の入れ替え、〇〇と△△を所有していれば見れる限定イベントなど
「遊び」では"競争"に分類
フレンドとの同時攻略、対戦で誰かよりも優れているという確認、ゲームから生まれるコミュニケーションなど
協力?フレンドなんて蹴落とし合いだ!(冗談です)
助け合いはもちろんだけど、それ以外は基本"比較対象"としてフレンドは機能しているはず。称号やランキングも同様に
実際にゲームをプレイする時の気持ちが左で、その行動に移るまでにどういった心境の変化があったかを予測したものが右の図に。
これからの課金型サービスは、"ユーザーがどのように動くか"/"なぜそのような行動をしたのか"だけでなく、"どんなコンテンツや導線を用意すればユーザーは行動したくなるのか"をより重視して考えていくことが大切になる。
今回のまとめ
基本無料 + 課金型がゆくゆくはスタンダードに
・自分を満足させてもらえるかどうかではなく、満足した上でお金を払う価値があるか選ぶ時代に
・圧倒的ユーザー優位の構造に見えるが、運営側が苦痛をデザインすることで課金のタイミングやハードルを操作することが出来る
苦痛をデザインするのはバランスが大切
・手が届きそうで届かない感覚が大切
・コンテンツを増やせば増やすほど、ユーザーが苦痛を体験する機会を増やせるがそれぞれのクオリティが低いとそれをきっかけに離脱されてしまう
・安い(低価格)、期間限定、個数限定等の施策は、より「自分で」選んだ感が強くなるので定番化されている
詫び石は罠(ピンチはチャンス)
・有料コンテンツをある意味無料で体験できてしまう(ガチャなど成功体験が染みつきやすい)
・課金するとこんなに楽(楽しい)のか!と脳が覚えてしまう(一度上げた水準を下げるのは困難)
なんだかんだ色々紹介したけど、周りが課金してて、課金すれば"もっと面白くなる"が散りばめられている中で課金を我慢するのが1番苦痛だったりするんだよね……あっぱれ。
2023年版もあるのですが、再編大変なのでそのうち公開します
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