
キャラクター④亀井美嘉、愛情と友情(『トラペジウム』アドベントカレンダー2024・全25回の9)
映画『トラペジウム』に4番目、そして最後に出てくるメインキャラクター、それが亀井美嘉である。主人公・東ゆうの東西南北計画の最後のピースとなるが、学校まで乗り込んでスカウトした華鳥蘭子・具体的に「彼女ありき」で狙っていた大河くるみとは異なり、メンバー中唯一「なりゆき」のような形で友達となる。
公式のキャラクターPVはこんな感じ。
亀井美嘉。10月30日生まれ。城州北高等学校1年生。15歳。
主人公・東ゆうとは小学校時代の同窓生で、当時の東ゆうの事をよく覚えている。だが一方で、東ゆうには当時の記憶があまりない。
現在は城州地区で一番の進学校である北高に通いつつ、学外で子供に勉強を教えるボランティア活動にも勤しんでいる。(アニメ劇中でその描写は無いのだが……)
メタな情報としては、北の四神、すなわち「玄武」を意識した「亀井」という名字を持つ。(玄武→亀と蛇が合体した空想上の動物→亀→亀井。)
「ボランティア活動」は、大河くるみのロボコンに次いで作品を駆動するカギとなる。主人公の東ゆうは「アイドルになる前にボランティア活動をしているのが世間にバレたら好感度が上がる」くらいのつもりで取り組むのだが、亀井美嘉にとってのボランティア活動はまた別の切実な動機がある存在で……
それはさておき、彼女が参加しているボランティアは「ババハウス」と「にこきっず」という2つの名前が出てくる。
これは「馬場さんというおばさんがやっているNPO法人で、主に子供たちに勉強を教える一種のフリースクールのような活動をやっている"ババハウス"」と、「ババハウスが主催(または共催)してやっている、肢体不自由児などを交えた野外活動"にこきっず"」くらいの使い分けなのかなと思われるが、まあ特に気にせず「ババハウス=にこきっず」くらいの理解でも全く問題ない。
彼女が通う「城州北高」は、主要人物の通う高校(相当)の中では劇中で唯一校舎が出てこない。原作でも「地域No.1で県内でも屈指の進学校」くらいの情報があるにはあるが、公立なのか私立なのか判然とせず、亀井美嘉がどういう流れでそこに通っているのかもあまりよく分からない。
彼女は(他の3人と活動している時も含め)専ら「ババハウス」での活動がフィーチャーされていて、このことは「なんとなく"お蝶夫人"が空回っているが、結局ずっとテニス部にはいたと思しき華鳥蘭子」「東ゆうに引っ張られる形で行動を共にしているが、軸足は学業やロボットに置きたい大河くるみ」とは少し趣が異なる。
その分、と言っていいのか、他の三人、特に東ゆうに向ける感情も少し(?)重めで、そのことが東ゆうを困惑させたりすることにもなるのだが……
また、中盤最初(序盤最後?)の登場シーン早々で、東ゆうは彼女のとある秘密をサラッと見抜くのだが、見抜いたうえで「別に全然いい」くらいで流すバランス感覚は正直かなり驚きがあった。
クライマックスにかけて、亀井美嘉の「それまで」も徐々に明かされていくわけだが、東ゆうが(理由はどうあれ)亀井美嘉の事情に興味を持たない・深掘りしたりしないというところが、亀井美嘉にとっては救いとなっている、そんな構造の関係性がユニークである。
『トラペジウム』関連BDDVD・原作・サントラ: