今年飲んだ良かった酒Advent Calendar 2021 Day4. NIKKA SESSION
4日目に紹介するのは引き続きウイスキー、日本のニッカウヰスキーのピュアモルト製品「SESSION」。
昨日に「年数表記無しは逃げ!水増し!」とか書いておいて何だが、まあ国産メーカーのウイスキーは年数表記無しのものしか普通に手に入らない環境で、何なら年数表記がなくても最大手メーカーサントリーの一般販売主力製品「山崎」「白州」すらNV品仕様なのに争奪戦&プレ値という状況が続いていているので、年数表記がないのはある意味仕方がない。特にニッカは年数表記のある品物の出荷自体がないんじゃないか?という状況がずっと続いていて、毎年料飲店向けに販売される「余市」と「宮城峡」のスペシャルリリース(マンサニーリャウッドフィニッシュやラムウッドフィニッシュ、アップルブランデーウッドフィニッシュなど)や、30年超の熟成品を混ぜたという謳い文句でリリースされたリミテッドエディション2019(「余市」「宮城峡」ともに希望小売価格30万円+税)ですら熟成年数の表記はなかったので、ニッカには熟成年数表記はないものとして向き合っていくしかない。(30万のウイスキーですら年数出さないのは流石にどーかと思うが。)
そんな中でニッカウヰスキーは、昨年ピュアモルトウイスキー「竹鶴」をリニューアルし、これは"国産だ"ということを改めて謳っている。その数ヶ月後に発売されたのが今回紹介する「SESSION」となる。
ニッカの持つ国内の蒸溜所といえば北海道の"余市"と宮城県の"宮城峡"であるが、「SESSION」は「スコッチウイスキーのモルトを混ぜている」と、ニッカ製品ではおそらく初めて公言した製品になる。
(スコティッシュモルト配合の明記)
実はリニューアル前の「ピュアモルトウイスキー竹鶴」では、長年「ピュアモルトウイスキーと名乗っていて確かにピュアモルトではあろうが、"純国産ピュアモルト"ではないのでは?」という噂が囁かれ続けていた。というのは、ニッカはスコットランドで「ベン・ネヴィス蒸溜所」を所持しており、また、「グレンドロナック蒸溜所」や「グレンゴイン蒸溜所」などとも深い関係を持っているためだ。「(旧)竹鶴」の香味の特徴からしても、これら蒸溜所、特にベン・ネヴィスのそれをある程度以上混ぜているのではないかという推測はウイスキー飲みの間で共有されていた。少し話はズレるが以前ニッカ余市蒸溜所に訪れ有料試飲コーナーに立ち寄った折、その場にいたニッカ社員の方に「コロナ前は有料試飲コーナーの杯数制限はなく、海外のベン・ネヴィスやグレンゴインや(ブランデーの)カミュ イル・ド・レといった"提携メーカー"のものもメニューに並んでいたのに、今は外されてしまっていて残念だ」という趣旨のことを言えば「いや、ベン・ネヴィスは"ニッカの蒸溜所"ですよ?」という答えが返ってきたという個人的体験もある。そんなこんなで「ニッカのピュアモルト」となれば「ベン・ネヴィスが配合されている」ということは、メーカー内外問わずある種の公然の秘密だったと言える。ところが昨年のリニューアルでは「竹鶴は国産だけ(=余市と宮城峡)のブレンドです」「新製品・SESSIONは国産とスコッチモルトとのブレンドです」というアナウンスがあり、「SESSION」においては公式にベン・ネヴィス(とその他スコットランドの蒸溜所)のブレンドを認めている。
答え合わせではないが、「SESSION」はベン・ネヴィス由来だろう柑橘系や花系のフルーティーさフローラルさが全面に出て、それを宮城峡の甘さが受け止める印象。余市は一瞬いないかと思うがさにあらず、だんだんとベースやパーカッションのリズムセクションで仕事をしていたんだなと分かる立体的な味わい。昨日の「ARDBEG WEE BEASTIE 5年」は若さを最大限利用したパワフルさ荒々しさがあったが、この「SESSION」は原酒がいずれもそれなりに若いであろうところ、テーマの"音楽"の下にうまく調和させ、ブレンドと加水の妙で若さを感じさせない柔和さ・調和を感じさせる構成。日本メーカーのそれなりの格のウイスキーの中では妙なプレミアムもついておらず普通に入手でき、味も香りも値段から考えると実に上出来なので買って損はない。
公式サイトではハイボールが勧められているが、これからの時期、特に厳寒が予想されている今年ではちとキツい。ここでお勧めしたいのが「出汁割でのホットウイスキー」である。
(器のせいで白ワインにしか見えないかもだがこれはウイスキーの出汁割)
"奏楽"をテーマにブレンドされたモルトの柔らかさ甘さ香りが加水加熱でグッと持ち上がり、塩気や海と親和性のある余市モルトと出汁の味も調和し、簡単にスイスイ飲めてしまう。出汁自体が肴のようなものなので尚更。
「いやいや?ウイスキー自体、出汁割がウマいのでは?」と思い、そのへんに転がっていた「サントリー季」で対照実験をしてみたが、「季」の出汁割からは刺々しさとピリつく感じ、また出汁との調和の取れなさが感じられ、「SESSION」の出汁割の方が数等美味しかった。もし買われたら騙されたと思ってぜひお試しあれ。
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