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「Bouncing with MOTION & CONTROL」について語る
随分時間が経過してしまいましたが、2023年の日本精工株式会社(NSK)のグローバルキャンペーン「__ with MOTION & CONTROL」について書いてみようと思います。
というのも、もう少しで2024年度版が完成するということで、その告知というニュアンスも含めて記事化しておこうと思ったわけです。
依頼がきた
Takramの櫻井さんから電話が来ました。実は櫻井さんが藝大の学生だったころからの知り合いで学生のころに仕事を依頼したりしてました。
「ついに、お願いできることになりました」
との電話で、例の「NSKの映像シリーズ」の依頼ということがわかり、「まじか!」とちょっと心躍ったのを覚えています。
というのも、TakramのNSKの仕事といえば、毎年楽しみに見ているシリーズです。なかでも、2021年のConnectingは名作だと思います。
チームを作る
櫻井さんに最初からお願いしていたのは「siroという会社の動き方だと、siroの内部のメンバーだけではなく外部の担い手をアサインすることになると思う」ということです。実際、この手の難易度が高そうな仕事なんかは外部のメンバーの手を借りてやりたいところです。
ちょうどそのころ、強力な外部メンバーと仕事をしていました。
上記の仕事のなかで、SPLINE DESIGN HUBの神山 友輔さんと仕事をしていました。
実は神山くん(日頃の呼び方で)とは古い付き合いで、神山くんが学生のころアルバイトで手伝ってもらったり、プログラマーとして仕事をお願いしたりしていました。メカ設計が強く、デザインもソフトもできるということで、守備範囲が広いデザイン・エンジニアです。
というか、櫻井さんも神山くんも同じような時期に仕事依頼してたんじゃないかな。当時は外部の若手開発メンバーと言う感じで。
あと、もう一人の切り札としてソフトウェア開発周りはひつじくん(silica)にお願いしようと思っていました。初期の段階では声をかけた程度で、具体化してから本格的に依頼しました。ひつじくんは、ハードウェアもわかるメカもわかる、そしてソフトウェアが得意ということで、今回のような仕事のソフトウェア担当としては適任中の適任です。
あとは、siroのメンバーで、ちょうどこのタイミングでsiroの仕事をやりはじめた狩野くんが活躍しました。狩野くんは時計の機構を使った作品を作る作家で、メカがわかるしいろいろ丁寧に対応してくれる若手としてぴったりでした。
そしてもうひとり、siroの片桐に細々サポートしてもらいました。siro以下のクレジットを貼っておきましょう。
ディレクション・開発:松山 真也(siro)
プロトタイピング・設計・開発:神山 友輔(SPLINE DESIGN HUB)
プログラミング・チューニング・オペレーション:ひつじ(silica)
組立・チューニング:狩野 涼雅(siro)、片桐 崇門(siro)
Takramは、櫻井さんと成田さん大澤さんの3名が中心的に動いてました。松山と神山を加え、5名で企画、プロトタイピングの作業を進めていきました。
企画・プロデュース:日本精工株式会社(NSK)
ディレクション・プロデュース:櫻井 稔(Takram)
プロトタイピング・設計・開発:成田 達哉(Takram)
シミュレーション・プロトタイピング:大澤 悟(Takram)
ビジュアルデザイン:半澤 智朗(Takram)
サウンドデザイン:小山 慶祐(Takram)
プロジェクトのありかた
Takramのサイトから引用します。
動詞シリーズでは、マス層に対する総花的なメッセージングではなく、コア層を中心にファンになってもらうようなコミュニケーションを目指しています。
毎年NSKの技術者とともに、自社製品を用いたエンジニアリングを追求することにより、社外に対してはもちろん、NSK社内のメンバーにとっても、誇らしく思ってもらえる企画となっています。
サラッと書いてありますが、重要なポイントがありますね。
マス層向けではなく、コア層を狙ってる
NSKの技術者とともに
NSKの技術者の中から希望された方や任命された方をあつめた精鋭チームといっしょに企画やプロトタイピングを進めていきます。
いよいよスタート
依頼された時点で、「5月ぐらいから始まる」と予告は受けていましたが、ついに始まりました。
表参道のかっこいいTakramのオフィスに集合しアイディエーションから始まっていきます。
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なんといっても、Takramの3人はすでにこの時点で、4年目でした。すでに過去の3回でアイデアを出してきたことを考えると、とても苦労しただろうなと想像つきます。
松山、神山は新鮮な気持ちで取り組みましたが、とはいえ、過去の事例もあるわけで、どうやってそれらを超えていくのか、というのが課題になります。そもそも超えられるのか、とか。
NSKの方々からも意見が飛び交いましたが、中でも「飛ばす」というアイデアが人気になりました。
Connectingはやはり評判がよかったとのことで、そのConnectingを例に取ると「ベアリングに使われる球を使う」という設定になります。ある種、ルーブ・ゴールドバーグ・マシンのような動きを目で追いかけていくと展開があるという手法で、目が離せなくなる良い手法です。
今回のアイデア「飛ばす」というのは「ベアリングの球を飛ばす」ということなわけです。Takramに聞くと過去にもそういう案があったとのことですが、怖いのでやめておこうとなっていたとのことです。
さらにアイデアを出していくと「球が跳ねる」というアイデアもでました。球が跳ねるといえば、川瀬浩介さんのベアリング・グロッケンというシリーズがあります。NSKと川瀬さんのコラボレーションで作られたということで、実物がNSKのどこかの社屋に展示されているとのことで、NSKの方々も知っていました。
つまり、「ベアリングの球を飛ばして跳ねさせる」ということですね。
実験
アイデア時点の実験はこちら。レゴで試作しました。
この先、神山くんのプロトタイピングが炸裂しました。モーター使って投てきを試作。
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この最初の本格的な試作時点で、3連続で同じ場所に飛んでます。この実験が決め手となって「飛ばせる!」と思ったわけです。
実験実験
様々な実験をそれぞれが実施し、また同時にシミュレーションしたりCGでレンダリングしたりします。この進め方はすごくて、他の仕事ではあまり見たことがない速さで手が動いています。
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さすがTakramですが、3人とも手が動く。進行役やってる櫻井さんもレンダリングしまくってるし、成田さんプロトタイピング早いし、大澤さんも試作からシミュレーションまで幅広い。
神山くんも、ほかにもいろいろ試作しまくって、siroでは精度テストなど積み上げ系をメインに引き取っていきました。
アイデアが決定し設計設計
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真ん中にゴールが設置されました。
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設計とレンダリングが交互に飛んでくるのでいつの間に進んでたのかわからない感じでどんどん形が見えてきます。
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とにかく設計はしているものの本当にうまく動作するかがわかりません。だから、作っちゃいます。
テストショット用試作
ここまでくると、本番のつもりで作るんですが、クイックに確認したいので一部3Dプリントのテストパーツにしたりとかスピード優先で進めます。
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色々動かしたら剛性がたりないことがわかり、いったん手を加えたテストショットマシン。
ついに本番へ
本番のパーツが届き始め組立テストします。天板は本番は赤ですが、傷がつくので未塗装のダミーを使ってます。
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これは番外編ですが、たまたまテストしてて違う動作がでちゃって撮れた映像。
シミュレーションでカメラ検証
Takramのこのプロジェクトのすごいのは、スタジオに入る前にCGでカメラの画角や位置を検証します。
これ見た人は、本物のほうじゃないかと思ったかもしれませんが、本物は以下です。
ここまで検証してるので、あとは撮影時にカメラマンとのやり取りで微調整をしてアングルやボケ具合など決まっていきます。
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改めて成果物
60秒版が一番リッチなのでそれをご覧ください。
最後に
本当に面白い仕事をもらえたなと思っています。難易度は最高で超難しかったですが、初期のスタディである程度行けそうなことがわかっていたので、バックアッププランもなく突入していきました。
すべての力を注ぎなんとか完成。みんなクタクタでしたが、良い映像が撮れて本当に良かったです。