約束したはずなのに…ペットの世話やり体制を立て直したい話
我が家では、ウサギを飼っている。
きっかけは、近所の子が飼い始めたことだった。
手のひらに乗るくらいの、小さくてはかないそのウサギの赤ちゃんは、どんな屈強な大男をも無力化させてしまうんじゃないかというくらいの、破壊的なかわいらしさを持っていた。ぜんぜん屈強ではない7歳と6歳のうちの子どもたちは、一瞬でその虜になった。
それから、そのお友達のうちへ足しげく通い、ウサギを触らせてもらう日がしばらく続いた。
小さきものを熱心に慈しむ我が子の様子を見守りながら、ウサギへのこの関心は、決して一過性のものではないように思えた。命を預かり、責任をもって世話をするという体験は、人格形成の上で重要な学びになるのではないか。そんな思いもよぎった。
それから数週間して、我が家にウサギ2羽を迎えたのである。
ウサギがくるまでに、なにを準備すればよいか下調べし、一緒にペットショップへ行って必要なものを購入した。また、エサはなにをどれくらい与えればいいのか、飼う上で気を付けるべきことはどんなことか。情報を集めてノートに書きとった。
ウサギを迎えてからは、息子と娘が一日ごとに交代して世話をすることにし、担当を曜日で分けて、一覧表をつくった。きちんと役割を全うしたら、シールを貼っていき、成果が見てわかるようにした。
最初は順調だった。
だが、ウサギがきてから1か月たったころ、子どもたちは、ウサギの世話を敬遠するようになった。
トイレのそうじが臭くていやだという。
うんちかおしっこがちょっと手に触っただけで、「うわああ!」と大げさな声を上げる。
おいおい、ちょっと待て。君らのオムツだって相当臭かったぞ。ママは1か月どころか、一人当たり3年ずつ、毎日欠かさずにオムツ替えをしたんだぞ。しかも日に何度も。
的外れな説教とはわかっていても、言わずにはいられない。そんなこと言われたって彼らの胸に響くはずもなく、その後もウサギへの関心は薄れ続けた。
それから半年ほどがたった。いま、ウサギの世話は、完全にわたしの任務になっている。
まあ、想定できないことはなかったよね。そうなるかもしれないなという予感があったからこそ、飼う前にしっかりと子どもたちにコミットさせたつもりだったのだけど。
やっぱりあの約束は、口頭で済まさずに、書面にしてサインさせるべきだった。
でも、関心が薄れてしまうことは、わからないでもない。
ウサギって、思ったほど懐かないのである。呼べば来るときもあるけど、来ないことのほうが多い。抱っこしようとすれば逃げるし、隙あらばケージから逃げようとする。いったん脱走に成功したら、たぶん一生戻ってこない。
それに、ときどきウサギが子どもたちの指を噛んだり、手足を引っかいたりする。半年飼って、噛まれたのは1,2回ずつ、引っかかれたのも数える程度ではある。でも、そんなことがあるたびに、ウサギへの愛が少しずつ損なわれているような気がする。
ちなみに、わたしや夫には、噛んだり引っかいたりしない。ウサギがもししゃべれるのなら、彼女らの言い分も聞いてみたいところだ。
でも、そうはいっても、いったん引き受けた命の面倒を、途中で投げ出すのはよくない。責任をもって全うすべきことを、いまいちど子どもたちに教え諭さねば。
そう思いながら、今日もウサギの世話をしている。
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