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この時期、アメリカに住んでいると困ることがある

わたしは、アメリカに住んでいます。

実は、毎年きまってこの時期になると困ることがあります。日本では、あまりない悩みだと思うのですが。

それは、リスが道路に飛び出してくることです。

我が家の周りでよく見かける動物といえば、リスです。ほかにも、鹿やキツネや野うさぎやアライグマなど、いろいろいますが、断トツ多いのはリスです。

木の上や、落ち葉の積もったところなんかで、がさがさがさっと音がするときは、だいたいリスが木の実を集めています。

日本から遊びにきた友人たちは、みな珍しがって写真を撮ります。かくいうわたしも、渡米した当初は、見るたびに「かわいいー」などと声をあげていました。

でも、ここに住めば、そんな感動もいつしか平温になります。ここでのリスは、日本でいうスズメとかハトみたいな存在ですから。

さて、夏の暑さも過ぎ去り、わたしの住む街は、もうすっかり秋になっています。朝夕の気温がどんどん下がり、木の葉の色も変わり始めています。

秋になると、リスたちが忙しく動き回ります。人間にとっても秋は収穫の時期ですが、それはリスたちにとっても同じです。

この時期、リスが道路に飛び出してくる頻度が激増します。ふわっとしたしっぽを柔らかくたなびかせて、道路をとび跳ねながら横切ろうとします。道の向こう側にいいどんぐりが落ちているのでしょうか。それともそっちに巣があるのかもしれません。

散歩しているときならいいのですが、車を運転しているときに飛び出されるとヒヤッとします。リスは、車が近づいてくるのを察知すると、一瞬動作がぴたっと止まるんです。「逃げて!」とこっちが心の中で叫ぶと同時に、リスは状況を察知し、道路から外れようと猛ダッシュします。

昨日は、一日に2度もリスを轢きそうになりました。いずれも、車のスピードを緩めてやり過ごしました。そのうちの一回は、リスが大きな木の実をくわえていました。それを運ぶのに手間取ったらしく、道の真ん中でもたもたしていたのです。

わたしは、もしかして轢いてしまったんじゃないかと思って、通り過ぎた後に、恐る恐るバックミラーを覗いて背後を確認しました。幸い、リスはうまく逃げおおせたようでした。道の中央に、あの大きな木の実だけが、ころんと転がっていました。

よかった……。わたしは、ほっとして、胸を撫でおろしました。

でも、リスが出てくるたびに停車したりブレーキを踏むのは、とても危険です。このときは、車通りの少ない道だったからまだ良かったものの、それでも後ろに車がいたら追突事故につながりかねません。夫からも、動物が飛び出してきても、絶対に急ブレーキはかけるなと注意されています。

いや、わかっています。わたしにも、リスには代えられない、守るべき命があります。でも、できたら殺生は避けたい。

そう言いながら、なんの解決法も思い浮かばなくて、やるせない。

この時期になると、こんな葛藤が胸に浮かんできます。


読んでくださり、ありがとうございます。

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