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わたしの記憶の中にそびえたつケーキ

病み上がりなんだけど、さっきから無性にケーキが食べたい。

骨まで溶かしそうなアメリカのねっとり甘いケーキなら、冷凍庫に眠っている。でも、わたしが食べたいのはそれじゃなくて、日本のケーキ屋さんのケーキだ。

いま、どこでもドアがあるなら、とりあえずどこかのデパ地下へ行き、ケーキ屋さんへ走る。色とりどりのカットケーキを、ショーウィンドウから、「これと…これと…、」と大人買いしたい。

たまに来る、この日本のケーキが恋しくなる衝動。

日本に住む皆さんの中には、もしかしたらお気づきじゃない人がいるかもしれないので、この機会に一言言わせてほしい。

日本のケーキは本当にレベルが高い。

甘さ加減も、クリームの重すぎない食感も、さまざまな味のバリエーションも、どこを切り取っても日本のケーキは質が高い。海外生活が長くなってきたけれど、「ケーキを食べるなら、断然日本のが美味しい」という結論は覆されたためしがない。

特に、いま頭に浮かんでいるのは、GIOTTO(ジョトォ)のモンブラン。東京に住んでいた頃、よくデパ地下で買った。

GIOTTOのモンブラン
(引用元 https://mi-journey.jp/foodie/28458/)

このケーキは、なんといってもそのそびえたつ高さ。モンブランクリームでコーティングされた「山」の中には、何種類ものクリームの層があって、折り重なる至福の時間が味わえる。

もちろん、ケーキだから甘いんだけど、甘すぎないところがいい。モンブランクリームは味が濃厚で、一口含んだだけで、口の中が一瞬にして栗色になる。そこに、生クリームが追いかけるように入ってきて、ぶしゅっととろける。そこへ、今度は栗が割りこんでくる。コリっとした食感と栗そのものの味で、口の中は複雑さと深みを増していく。

栗と生クリームとモンブランクリーム。もうこれだけでも十分なくらいだけど、さらにカスタードクリームが追い打ちをかける。

ケーキのくせに、食べる者のとどめを刺しにきている。

あのクオリティと満足感は、アメリカのケーキじゃ味わえない。ああ、いますぐ食べたい……と、よだれが垂れないように口をぎゅっと閉じたまま、「GIOTTO、モンブラン」と検索した。すると、GIOTTOが閉店したという記事があちこちに溢れていた。

衝撃。あんなに美味しいケーキ屋さんがなぜ閉店?わたしが日本を離れている間にいったい何が?

ただ、一次情報が見つからなくて、全店が閉店になったのか、部分的に閉店になったのかがよくわからないでいる。

いずれにしても、わたしの記憶の中でそびえたつケーキは、GIOTTOのモンブラン以外にない。いや、あるかもしれないけど、いまはこれが食べたい。

(おしまい)


読んでくださってありがとうございます。

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