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育児をしながら仕事をする苦悩と、試行錯誤の先に決めたこと

アメリカ東海岸の私の住んでいる地域では、3月初めからコロナウイルスの感染対策が打ち出され、いわゆる「コロナ生活」に入った。3歳の息子が通っていたプリスクール(幼稚園)は、3月半ばに急遽休園となり、当初は4月半ばに再開される予定だったのだが、次に来た連絡で、夏休み明けの9月まで開園しないことを知らされた。

3月は、ちょうど私がそれまで勤めていた会社を辞めて、ライティングの仕事を始めた時期と重なる。私は、新しいことを始める意欲に溢れていたし、前の仕事を辞めたことが後悔にならないよう、新しいキャリアの構築を急いでいた。

そんな矢先のコロナ生活である。地域の感染者数はみるみる間に膨れ上がった。外遊びは比較的感染リスクが低いとは言われていたものの、息子が軽い喘息のため、用心して外出は近所を散歩する程度にとどめた。

毎日、3歳児と1歳児と対峙する日々。育児は、文字どおり24時間体制となった。

5月になると、ライティングの継続案件を受注することができ、育児の合間に細切れの時間を見つけては記事を書くようになった。子供たちがお絵描きや本読みに夢中になった隙に、そっとその場を離れて、キッチンのテーブルでパソコンに向かい、カタカタと続きを書き始める。でも10分もしないうちに、どちらかが「ママー」とやってきて、一緒に絵を描けだの、本を読んでくれだの、おやつが食べたいだの要求する。

子供たちはママと遊びたい。ママはママの時間がほしい。

少しでも記事の作成を進めたいのに、いつも子供たちに遮られる。これがどんどん積み重なり、じわじわと精神が追い詰められていった。そして、ストレスのはけ口が子供たちに向くようになった。

あるとき、カタカタと文章を書き進める私の横で、「ママー、ママー」と呼び続ける息子に対し、「5分でいいから静かにして!」と大声で怒鳴りつけてしまった。息子は一瞬ひるみ、数秒後にうわーんと泣き始めた。

これはいかん、と思った。子供たちが起きている間は仕事はしないと決め、子供たちが寝ている間、つまり昼寝時間、就寝後又は早朝のみを仕事時間とすることにした。うまくいく日もあった。2人とも昼寝をしてくれたら、1時間くらいは確保できる。でも、3歳の息子は、基本的に昼寝をしたがらず、従来のような運動量もない日々で、寝てくれないことが多くなった。それでは就寝後に、と思うものの、寝かしつけに時間がかかり、私がそのまま寝落ちしてしまうことも多く、うまくいかない日が続いた。早朝は早朝で、1歳の娘の眠りが浅くなる時間帯で、せっかく早起きして書き始めても、娘の泣き声で中断せざるを得なくなる、ということが頻繁に起きた。

前へ進みたいのに、進めない。コロナ生活でもうまくやっている人はいるのに、私はできていない。文章を書くことが好きで始めたライティングの仕事なのに、もはや苦痛でしかなくなってしまった。

しばらく憂鬱な日々を過ごした。そんな沈んだ気持ちで書いた記事は、当然ながら修正依頼の赤文字がたくさん入っていた。母親としても、ライターとしても落第点。家族と私自身がより幸せになるために、会社を辞めて踏み出した新しい生活のはずが、これでは本末転倒に思えた。

見かねた夫が、心配してどうしたのかと尋ねてきた。私は、自分の状況をぽつりぽつりと説明し、どうしたいのかを考えながら話した。

人に悩みを話すと、共有してもらえる安心感や心地よさ以上に、自分の考えが整理されるのがいい。私は、まだしばらく続きそうなコロナ生活において、自分自身の生活のあり方を見つめ直すことにした。

そして、決めたことは3つ。

1つ目は、ライティングの仕事は、子供の保育園が再開するまで中断すること。コロナ生活が続く間は、ストレスになることは極力減らす。これを決めた時点で受けていた仕事は最後までこなし、今後の意向については率直にクライアントに伝えた。

2つ目は、書くことは続けること。このnoteは、毎日書いてみたいと思っていたけれど、無理せず、自分のペースで書きたいことを書く。自分に課すハードルを下げる。(今までも勝手にプレッシャーを感じていただけで、全然書けていなかったのだけど。)

3つ目は、自分のための時間を少しでもいいから毎日確保すること。これはいままでもやっていた、というか、やろうとしていたことだけれど、夫にも協力してもらって、時間をとるんだと決めた。毎日の食事や運動で身体の健康を保つのと同様、心にも栄養をやらないと、健全な状態が保てない。

私がもっと器用で、育児も仕事もバランスをとってうまくやれていたら。頑張りが足りず、甘っちょろいのではないか、とも思う。でも、これが今の私、この私を所与のものとして、これからどうするかを前向きに考えよう。

土曜日の午前中、子供たちは夫にみてもらって、近所の公園に設置されたテーブルに一人座り、この記事を書いた。これから家に帰ったら、子供たちにうんと甘えさせてあげようと思う。

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