季節はすっかりクリスマスだけど、わたしはその先を考えている―#おせち作戦
季節はもう、すっかりクリスマスへ向かっている。街もお店もレストランも、クリスマス一色だ。
でも、わたしはいま、その先のことを考えている。クリスマスの1週間先。お正月だ。
今年は、いや、今年こそは、おせち料理に挑戦したい。
実は、アメリカに来てから、一度だけおせち料理の手作りに挑んだことがある。当時は、まだ一人目の子どもが赤ちゃんで、食べたのはわたしと夫だけだった。
いまになって、またおせち料理を作ろうと思っているのには、いくつか理由がある。
一つめは、子どもたちに日本の文化を伝えたいから。
アメリカ生まれ、アメリカ育ちの子どもたちは、日本でお正月を体験したことがない。日本へ行くのはいつも長い休みのある夏だ。お正月については、テレビや本で見たことがあるだけ。
日本のお正月を断片的にでも体験させたい。おせち料理とはどんなもので、日本人はその料理にどんな願いを託してきたのか。和食は、寿司やラーメンだけじゃない。日本の伝統を見せたい。
二つめは、わたしがお正月らしいことをしたいから。
アメリカにきて、すっかりアメリカっぽい生活に馴染んでいるけれど、日本人としての習慣も失わずにいたい。丁寧な暮らしがしたい、という気持ちに似ている。先人たちが培ってきた伝統を、遠い異国でもたまにはなぞってみたい。
三つめは、単純におせち料理が食べたいから。おいしいものを作って食べたい。ストレートな食欲である。
よし、そうと決まったら、まずは重箱だ。我が家には重箱がない。なんでも形から入るのがわたしのモットーだ。アメリカでも探せば重箱くらい手に入るだろう。
そう思って検索してみると、果たして、オンライン販売を手がけるサイトがいくつも見つかった。でも、これも思ったとおりではあるけど、どれも高い。当然ながら、日本で買うより割高だ。ああ、これ素敵だなあ、と思うものに至っては、2000ドルくらいの値がついている。2000ドルもあったら、日本に1回帰れるじゃないか。
待て待て、こんな高級品である必要はない。もう少しお手軽なやつにしよう。検索を続けると、50~100ドルくらいの価格帯で、いくつも見つかった。
でも、これ、日本で買ったら半分以下なんだろうなあ。それに、オンラインだと、質感がいまいちよくわからなくて決めがたい。自宅に届いて開けてみたときにちゃちかったら凹むなあ、なんてあれこれ考えていたら、面倒くさくなってきた。
……と、ここまできて、急に冷静な考えが頭に浮かんだ。
重箱にぎゅうぎゅう詰めるほどたくさん作っても、誰も食べないという事態もあり得るな……。なにせ、うちの家族は、わたし以外、誰一人として日本で育ったことがない。寿司やラーメンはよく知っているけれど、おせち料理は「ド」がつく初心者なのである。
よし、重箱はやめよう。
なにか新しいことに挑戦するとき、最初の一歩は小さく踏み出そうっていろんなところで学んだじゃないか。うっかり忘れるところだった。
そこから考え直してみた。わたしの「小さな一歩」作戦は、いまのところ、こんな感じだ。
作戦を考えていたら、わくわくしてきた。クリスマスも楽しみだが、お正月も負けないくらい楽しみだ。献立をよく吟味して、本番に備えよう。
子どもたちに、「ママが日本人で良かった」と言わせたい。
(おしまい)
読んでくださってありがとうございます。
記事で使ったおせちの写真は、こちらから借りました。
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