【日記】熱で弱ったわたしの心に沁みたもの
早朝、3時過ぎにぱちっと目が覚めた。
体が熱い。
昨日から喉が痛かったことや、横になっていてもわかるくらい頭が重い感じをつなぎ合わせて、きっと熱があるなと思った。
そこから寝つけなくなって、ベッドで横になったままじっとしていた。ときどきキンドルで本を読んだ。
年末、やっと『罪と罰』を読み終わった。感想をまとめたいと思いつつも、大作すぎて、どこをどう解釈して吸収したらいいのかよくわからない。まあ、いま熱のある頭で考えることではない。
それから、またうつらうつらしていると、朝になった。体温をはかってみたら、39度近くあった。熱があるときって、つばの味がいつもと違う。その違和感を感じながら、もう一度ベッドに横になり、目をつぶった。まぶたが重い。食欲がない。
正月三が日から発熱なんて。
朝ごはんも食べずにもうひと眠りしたら、外は雪景色になっていた。裏庭の木々も輪郭が白く縁どられて絵になる風景を作っている。
控えめなノックの音がして、息子がそろりと入ってきた。
「ママ、雪が積もったんだよ」
わたしとの間に不自然な距離を保ったまま、息子が言った。夫から、今日はママに近づいたらダメと言われて、それを忠実に守っている。
息子は待ち望んでいた雪の日の突然の到来に興奮していた。
「ママ、外で一緒に遊べる?」
「ごめんね、今日は無理だな」
わたしの言葉に、息子は見るからにしょぼんとした。雪合戦と雪だるまづくりがしたかったらしい。
数日後に、もう少しまとまった雪が降るという予報が出ている。きっと、そのときは遊べるかなあ。
「ママ、ハグしたい」
息子は、3歩くらい離れたところから、ちょっと悲しそうな顔をしながらわたしを見つめていた。
彼は、ハグをするのもされるのも大好きである。相手との間にある気持ちをハグに乗せて交換する。わたしたちは、普段は日に何回もハグをする。
わたしは思わず息子を抱きしめそうになった。でも、息子は、自分の気持ちをぎゅっと抑えて、3歩分の距離を保ったまま続けた。
「でも、パパが今日はダメだって言ってたから……」
わたしを心配する気持ち、ハグして優しくしようと思ってくれる気持ち、でもパパから言われていることをちゃんと守らないと、と自分を律する気持ち。
「ありがとうね」
熱で弱っている心と体に、息子の気持ちがじんわりと沁みて、わたしは静かに満たされていった。
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