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アメリカの飲み会事情を垣間見る

我が家には、家族全員で大絶賛しているお気に入りのレストランがある。

このお店のコンセプトは、お酒を楽しみながら食事をするレストラン。お酒の主役はワインだ。ビールやカクテルなどもメニューに並ぶ。食事は、こうしたアルコールと相性のいい料理ということになっている。

日本風にいうと、おしゃれ居酒屋みたいな感じだろうか。いや、居酒屋といって想像する雰囲気とは全然違うけれど。明るくて解放感のあるレストランである。

わたしはどんなに種類が充実していても、お酒は飲まない。「飲めない」に限りなく近い「飲まない」である。だから、ワインに合う食事であろうがなかろうが、わたしには正直どっちでもいいのだけど、とにかく初回に行ったときに食べた料理が美味しくて気に入ったのだ。

初めて行ったときから気になっていたのだけど、このお店では、いつも仕事帰り風のグループを3、4組ほど見かける。人数は1組あたり5人から10人くらいだろうか。

このレストランのある商業エリアには、オフィスビルがいくつか入っている。きっと、仕事終わりにみんなで来て、一杯やっているところなんだろう。

コロナ禍以降、リモートワークが主流になっていたが、最近になってまたオフィスへの回帰の流れがある。たぶん、こういう飲み会が実施される背景には、オンラインではなく、対面での人間関係の構築という意図もあるのだろう。

でも……。飲み会グループにゆるく目を向けながら、想像を続けた。

このお店、居酒屋みたいとは言ったものの、会社の飲み会で利用するにはちょっと値が張る。

ドリンクメニューに目を落としてみる。例えば、ワインをグラスで頼むと、銘柄によってピンキリではあるものの、15ドルから35ドルくらい。40ドルを超えるものもある。高い。カクテルも15ドル前後。ビールなら10ドル以下でも飲めるけれど。

さらに言うと、食事は、一人分として頼む一皿はだいたい20~30ドルはする。それに加えて、みんなでつまむ前菜的なものを頼んだりするだろうけれど、それも一皿15~25ドルくらい。

みんな楽しそうに飲み食いしてるけど、かなり会費の高い飲み会になりそうですな……。

余計なお世話とはわかっていながら、そんなことを勝手に心配し始めた。

こういうとき、お会計はどうするんだろう。偉い人が多めに払って、あとは段差をつけつつ割り勘するんだろうか。アメリカ人がそんなこまめな計算をしながらお金のやりとりをする図が想像できない。でも、偉い人が全おごりするにはちょっと高額すぎるような。

それに、こんな単価の高いところで、一人がめちゃくちゃ飲み始めたら周りは止めるんだろうか。「空気を読む」なんて言葉がないこの国で、横並びを見ながら自らの行動を決めるなんていう高度な配慮を、みんながみんなできるとは思えない。

わたしはアメリカでオフィス勤めをした経験がないので、夫に聞いてみた。

「職場の飲み会の会費は、どうやって払うの?」

この質問を聞いて、夫はふうっとため息をついた。

「君は質問する相手を間違えているよ。僕にはほとんど飲み会の機会がないことを、君も知ってるだろ」

そうだった。この人は飲み会が年に1、2回しかないんだった。でも、わたしよりは知ってるでしょう。これまでの飲み会を思い出してみて。

「だいたい会社の経費で落とすんだよ。会社から支給されたクレジットカードがあって、それで会計して終わり」

そうなんだ。シンプル。じゃあ、参加者はただで飲み食いできるわけね。

「当たり前じゃないか。わざわざ仕事の後にお金を払って上司や同僚と食事なんかしないよ」

きっぱりしていてわかりやすい。そんなお金と時間があるなら、早く家に帰って家族とご飯を食べるのが当たり前、というわけだ。もしくは、友人やパートナーに会ったり、自分のために時間を使う。

夫を含め、わたしの知るアメリカ人は、職場の飲み会について、概ねこんなスタンスである。

仕事が終わった後まで、仕事関係に時間を取られるなんて考えられない。でも、年に1、2回で、会費ゼロなら行ってもいいよ。

つくづく、自分の心に正直な人たちである。

(おわり)


読んでくださってありがとうございます。

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