アメリカ人の夫と日本人のわたし。それぞれの国らしさを代表しているような気がした話
日曜日の午後は、家のメンテナンス作業をすることが多い。
つい先日は、ガレージのドアに断熱シートを貼った。
ガレージのちょうど真上が寝室なのだけど、冬になるとガレージの冷えこみが床から伝わり、他の部屋に比べてちょっと寒い。冬が来る前に、このガレージ冷え冷え問題を解決しようと、意を決したわけである。
アマゾンで購入した銀色ピカピカの断熱シートを、一枚ずつガレージドアに貼り付けていく。なんとも地味な作業だ。
シートを貼るには、小さな正方形の、フォームがついた両面テープを使う。長方形のシートの四隅に、この両面テープで固定するのである。
わたしたちの流れ作業はこうだ。
黙々とこの作業を始めたわたしたち。
しばらくすると、夫が、わたしから受け取った両面テープの、残る片面の障子紙を剥がすのに手間取っていることに気づいた。爪でうまく障子紙とフォームとの間に隙間を作らないと、うまく剥がれないのだ。
それに気づいてから、わたしは残した障子紙の一角を、三角形に小さく折り返してから渡すようにした。その角をつまめば、障子紙はするすると簡単に剥がれる。
夫は、このサービスの向上にすぐ気づき、「おっ」と声をあげた。
「さすが、Japanese qualityだね」
夫がにやりと笑う。わたしもにやりとして応じた。
「この飽くなき品質改良で、日本経済は成長したのよ」
顧客への細やかな思いやり。使いやすさの徹底した追求。
例えば、食品の開封口でもそうだ。日本製品の多くは、開封口に小さな切込みが入っていて、そこをちょっとちぎると、中身が飛び出さずに、きれいに真横に切れて、封を開けられるようになっている。
こんなちょっとした機能にも、日本製品にはちゃんとこだわりが感じられる。海外に出ると、それが当たり前ではないことがわかる。なかなかちぎれなくて、やっとちぎれたと思ったら中身がぴゅっと飛び出してしまったり、そもそも切込みがなくて、はさみがないと開けられないなんてこともある。
夫がいう「日本品質」とは、こういうことである。
それから、また黙々と作業していったわたしたち。
ときどき、わたしの障子紙の角折りの工程が、夫の作業スピードに間に合わず、手こずることがあった。
「高品質を維持するのも簡単じゃないよね」
わたしのことを言っているのか、日本経済のことを言っているのか。夫の顔をじっと見る。たぶん、両方のことを言っている。
とにかく目標を早くクリアすることに全力を注ぐ夫。
ちょっとしたこだわりを追求して、スピードが落ちるわたし。
なんだか、アメリカ経済と日本経済とに、妙に重なり合って見えた。
(おわり)
読んでくださってありがとうございます。
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