なぜアメリカのお医者さんはあんなにフレンドリーなのか
アメリカに来て気づいたことの一つに、日米のお医者さんの雰囲気がかなり違う、ということがあります。
なんでこんな話を始めたかというと、らわ・ゆうきさんのこの記事を読んだからです。
らわ・ゆうきさんはイギリス在住のお医者さん。
内向的な性格とのことですが、医師の仕事に就いてから、対面で人とコミュニケーションをとる機会が非常に多くなったとか。必要に迫られ、またご本人も努力されて、コミュニケーション能力を向上させるに至ったことが言及されていました。
医師という仕事には、コミュニケーション能力が重要。
この部分、わたしがアメリカのお医者さんに感じていた印象と重なって、あ、それわかるなあと思いました。
◇
わたしが今まで日本でお世話になったお医者さんは、余計なことを喋らない人がほとんどでした。
初対面であっても、「今日はどうしましたか」といって、すぐに診察が始まります。いくつかの質問に対する患者の答えをふむふむと聞き、診察する間も沈黙していることが多い。そして、診断結果を伝えて、薬を処方して、「お大事に」で終わるのがよくある流れです。
もちろん、日本のお医者さんにもいろんなタイプの方がいます。人間関係は相互作用なので、わたしとは全然違う印象を持っている人もいるでしょう。
でも、わたしの経験に照らしてみると、病院での体験はいつもこんな感じでした。
つまり、お医者さんも患者も、必要なこと以外は口をきかない。プライベートな話なんて持ち出さない。
でも、これがアメリカだと、随分様子が違っています。
特にお医者さんと患者が初対面の場合、診察はすぐには始まりません。
まず、”Nice to meet you." から始まります。自己紹介です。たぶんお医者さんは、「わたしの名前は〇〇です」と言いながら笑顔で握手の手を差し出しているでしょう。患者も、「わたしは〇〇です、はじめまして」と返します。
そこから、"How are you today?" と会話が始まり、「いやあ、ちょっと先週から熱が出たり下がったりを繰り返していまして…」などと症状の説明が始まります。
そこから診察が始まりますが、合間にちょくちょく雑談を挟みます。
「この夏はどこかへ行ったの?」
「仕事はなにをしているの?」
「アメリカにはいつ来たの?」
そして、わたしが日本から来たことを話すと、大抵日本の話で花が咲きます。
わたしのかかりつけの内科の先生は、わたしが日本人だと知ったとき、「ああ、そういえば」といって、ズボンのすそをめくり、唐突にわたしに靴下を見せました。なんだと思って見ると、どこで買ったのか、寿司柄の靴下をはいていました。めっちゃ和みました。
また、婦人科の先生は、「日本にいったとき食べたアレが忘れられないの」といって、自分の携帯から古い写真を熱心に探し始めました。すぐには見当たらなかったので、一旦諦めて、診察を終えて、先生は出ていきました。でも、少し後にまた戻ってきて、「見つけたわ」といって写真を見せてくれました。そこには、つけ麺が写っていました。Tsuke-menの発音がたどたどしくて、かわいらしかったです。
アメリカで会ったお医者さんは、ほぼ例外なくフレンドリーです。医者と患者という線を引いた関係よりも、友達みたいな感じになるんです。
まあ、お医者さんじゃなくても、街角ですれ違っただけで雑談が始まるような国ですから、なにも不思議はありません。
でも、もう少しよく見てみると、いくつか理由が思い浮かびます。
まず、前提として、アメリカでは、クリニックに所属する複数のお医者さんの中から、かかりつけ医を決めて診てもらうのが一般的です。スケジュールの関係で、誰でもいいので今日診察してください、なんてことはありえますが、普通は同じ先生に継続してかかります。患者側には、自分の体質や遺伝などを理解した上で診断してもらえるメリットがあります。
お医者さんとしても、これから長い付き合いになるかもしれない患者さんと、良好な関係を築きたいという思いがあるかもしれません。あるいは、気軽になんでも話してもらえた方が、状況がよくわかって診察がしやすくなるなんてことも考えられます。
でも、わたしが思うに、ある種の評価システムによるところが大きいのではないでしょうか。
患者がかかりつけ医を選ぶということは、お医者さんにしてみれば、いつも評価にさらされているわけです。そして、かかりつけ医として選んでもらうことが、そのクリニックにおけるお医者さんの貢献度に直結します。医者の仕事もビジネスです。
というと、結局お金かあ……って思うかもしれません。
でも、わたしが言いたいのは、少なくともここアメリカでは、コミュニケーション能力も含めて、お医者さんの専門性が形作られているような気がします。
読んでくださり、ありがとうございました。
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