アメリカで日本料理を振る舞ったら、一番のヒットは脇役の一品だった
先日から、義母が遊びにきている。これから夫側の親戚が我が家に集合して、一緒にクリスマスを過ごすのである。
ほかのみんなより一足先に到着した義母。その日の晩は、わたしが夕飯を作って、家で食べることになっていた。
さて、なにを作ろうか。
義母は、基本的になんでも食べられるし、食べたことのない料理でも興味をもって食べてくれる人だ。
でも、日本人ではない人に日本料理を振る舞うときは、それなりに気を遣う。なるべく食べやすくて、万人受けするような難しくない味がいいだろう。
わたしは、数日前からメニューを考えていた。
こうやって並べて書くと、餃子がちょっと異質である。それに、味噌どんだけ使うねんっていうツッコミも聞こえてきそうだ。西京焼き、味噌ディップ、お味噌汁。味噌が三重にかぶっている。
でも、ここはアメリカである。これでも、十分に本格的な日本料理なのだ。ぜんぜん問題なし。味噌は、義母が好きなのを知っているので、むしろこの三重奏は歓迎されるとわたしは踏んだ。
念のため夫に相談したら、「いいんじゃない」ということだった。これは、夫の好きなメニューでもある。
そして当日。出来あがった料理をテーブルに並べると、まあまあ豪勢な夕飯になった。
義母はどんな反応をするだろう。わたしはそれを楽しみに席についた。
まず、餃子。ぱくり。
「とっても美味しいわ」
義母がにこりとしてわたしに言う。夫がすかさず、これはわたしの手作りであることを説明した。ナイス、夫よ。
我が家は定期的に餃子工場と化す。時間のあるときに、餃子をまとめて山ほど作って冷凍しているのだ。冷凍庫から出して焼いたけれど、これは冷凍食品ではないのである。
次に、タラの西京焼き。食べてくれたけれど……、特にコメントはなかった。
あれ、いまいちだったかな。わたしは大好きだし、今回のも悪くないと思うんだけどな。
そして、茶碗蒸し。
「これ、なに?すごくおいしいんだけど」
義母は、何度も日本料理のレストランに行っているけれど、茶碗蒸しを食べたのは初めてだったらしい。
「カスタード?でも甘くないわね」と、味わいながら考えている。
「出汁と卵を蒸して作っているんです」と説明すると、義母は珍しがりながらぱくぱく食べてくれた。
そういえば、うちの夫も、茶碗蒸しは日本へ行って初めて知ったと言っていた。茶碗蒸しって寿司や天ぷらのように主役をはるほどの存在感はないけれど、隠れた逸材だと思う。あの優しい味わいととろけるような柔らかい触感はちょっと珍しい。
今回のおもてなしで一番のヒットは、間違いなくこの茶碗蒸しだった。
(おしまい)
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