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【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#12『領民0人スタートの辺境領主様~青のディアスと蒼角の乙女~』※ネタバレあり
どうも皆さんこんにちは、マンガ系YouTuberのゲス顔です。
今回ご紹介する作品はこちらです。
『領民0人スタートの辺境領主様~青のディアスと蒼角の乙女~』
今回はこちらの作品、漫画版9巻まで読んだレビューとなっております。
この作品に対する僕の感想を一言でまとめるのならば、「見た目と中身のギャップがすげえ」といったところでしょうか。
詳しくは、レビュー本編の方でお話したいと思います。
こちらの作品は、いわゆるファンタジーものです。
主人公は、ディアスという名の男で、彼は素晴らしい戦士であり、戦争において「救国の英雄」と呼ばれるほどの大活躍をしました。
そこで王様から領地を賜るのですが、行ってビックリ。
そこは何もない野っ原。
草原のど真ん中に1人降ろされて途方に暮れていたディアスでしたが、そこに現れたのは、額に角を持つ少女でした。
彼女の一族、鬼人族はディアスの祖国である王国に追い立てられたという経緯を持ち、気配を隠す魔法によって、ひっそりと草原で暮らしていたというのです。
憎き王国の人間であるディアスに対して、鬼人族の少女アルナーは警戒と敵意をむき出しにします。
しかし、彼女の持っている「嘘を見抜く魔法」により、ディアスが正直者でありアルナーたちに敵意を向けていないことを知ります。さらに救国の英雄と呼ばれるに足るだけの素晴らしいパワーを持っているという姿まで目の当たりにする。
これにより、ディアスはアルナーから男気のある人物であるとみなされるようになります。
そこから、アルナーひいては鬼人族たちの協力のもと、自分の領地を何とか盛り立てていこうと決意するのでした。
といった形で物語がスタートします。
ぱっと見るとこちらの作品、いわゆる無自覚無双モノ的な匂いがするんです。
序盤、ディアスは国を救った英雄と呼ばれてはいるものの、本人としては「戦うことしか能のない人間で、一生懸命戦っていたらいつの間にか結果がちょっとついてきただけだよ」くらいに思っていて、自分がすごい人間だとは思っていないわけです。
最初、アルナーに男気を見せるシーンでも何十頭もやってくる巨大な牛のような生き物たちを1人で片っ端からやっつけるなんてことをします。
しかし、ディアスは最初それがそんなに喜ばれ褒められることだとは思っていなくて、でもアルナーちゃんの反応がめちゃくちゃ良くて、どうしたんだろうみたいな反応をします。
主人公はめちゃくちゃすごいパワーを持っているけれど本人にはその自覚がなく、彼が出す結果に周りが驚いて主人公が何でだみたいな顔をする、まさに無自覚無双構文とでもいうべき展開が待っているわけです。
けれども、違うんです。
確かにそういう要素があるのは間違いないのですが、この作品の面白さはそういうところにはないんですよ。
では、この作品の何が面白いのか。今回はそれを3つの要素に分けてお話していきたいと思います。
まず1つ目は笑いです。
この作品は、お話の節々にもう本当に振り切れたコメディというか、ギャグを差し込んでいくんです。
それが、個人的にすごく好き。
例えば、ディアスがアルナーに認められて「お前と結婚する」って言われます。
そして、2人で一緒に暮らすようになった。という展開に入ってすぐに、こういうシーンがあるんですよ。
ディアスのもとに駆け寄ってくるアルナーちゃんの口から、「妊娠したぞ!」という言葉が出ます。
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それに対して、「本当なのか」と聞き返し、本当だと答えてもらい、やった!とディアスが雄叫びを上げる。
![](https://assets.st-note.com/img/1732507577-XyaMh7QwULd4plOWtCg2HsSI.png?width=1200)
そう、妊娠したんだ……家畜が。
![](https://assets.st-note.com/img/1732507622-VrSsuH0PLDq3hJtGOxFdfnei.png?width=1200)
こういう流れをやりますが、本当全力ですよね。
ギャグやコメディー、もうちょっと言うならばリアクション芸がこの作品目白押しで、個人的には非常に面白いと思っています。
究極的に言うと顔芸などもあるのですが、でもいいじゃないですか、顔芸。
とても漫画的だなという感じがします。
漫画におけるシナリオ面で大事な部分が絵で見せて解説するならば、ギャグ・コメディーにおいては絵で笑わせる点はすごく重要です。
これをきっちりできる漫画家さんが担当されている。
もうこれ1つだけで、この作品は面白いですよって言ってもいいんじゃないかなと思うぐらいに、できる人が執筆しているんですよ。
これまでにも何度か言ってきましたけれども、ギャグができる漫画家さんは、最強です。
2つ目の面白ポイント、それはシナリオです。
主人公は救国の英雄と呼ばれ、恩賞として領地をもらったのに、そこには草原しかなく、領民が1人もいない。
何でこんなことになったのかという部分のお話から始まって、そもそもディアスが所属していた王国は一体どういう状況に置かれているのか。
主人公は与えられた領地をそこに隠れ住む鬼人族たちと共に盛り立てていくことになりますが、領地系っていうのはいつだって内側のことだけじゃありません。
当然、近隣の別の領主との関わり方も話として大事になっていきます。
はたまた、先ほど言った国内のゴタゴタに領地を持った領主として、あるいは救国の英雄という肩書きを持った戦士として巻き込まれることになるのです。
あるいは、主人公の領地は野っ原だけなんだけれども、本当に草しか生えず穀物を植えても野菜を植えても育てないっていう土地です。
なんでそんなことになっているのかという部分も描かれていきます。
草以外が生えるよう土地を復活させることができる人物が領地にやってきたり、はたまた、ディアスは魔法の力を使えない人間だから戦士をやっている部分があります。
しかし、実は魔法が使えないことと魔力が使えないことには決定的な差があって、そこに特別な意味が存在しているらしい話が出てきたり、などなど。
どんどん世界観を広げていく形でシナリオが進むのですが、それは決して大量の解説が存在しているという意味ではないんです。
1つひとつ面白いお話があって、そのお話を読んでいくことによってこの世界の新しい情報・秘密が分かる形になっています。
そのため、読んでいて先が気になるような構成になっているんですよ。
そのシナリオの主軸になっているのは、主人公と自分の領地にやってくる人たちとの交流です。
ですから、やや話の進み方がのんびりゆっくり進む感じではあるんです。
その分、丁寧に描かれていますし、ときには国全体の話のように大きな部分に触れることもあります。
いやもう、本当お話が読んでいて非常に面白いんですよ。
シリアスというか真面目な話をしつつも、ギャグ・コメディの笑いの部分も挟みながら進めていくので、テンポの良さもきちんと感じられますから、個人的には本当にすいすいすい読んでしまえるなと感じております。
そして3つ目の要素、これが最大の要素だと思います。
この作品は、主人公が本当にいいんです。
何がいいって、主人公の無自覚さみたいなのが本当にいいんですよ。
……ゲス顔は無自覚系主人公嫌いなんじゃないかって?
いやあ、嫌いですよ?無自覚系主人公は嫌いです。
でも、この作品の主人公であるディアスの無自覚は、自分の力に対してすっとぼけているんじゃなく、素朴さによって無自覚が構成されているんです。
ディアスは自分の力を「大したもんじゃない」と思っています。
もちろん実際はすごいんですよ。救国の英雄と呼ばれるくらいです。
かつて、彼とともに戦った仲間っていうのも領地に来るんだけれども、ディアスに対する評価はまさに「天」です。
絶対敵わないなと思うくらい、素晴らしい力を持っている人だって、そう思われています。
では、なぜディアスが自分の力を大したことじゃないと思っているのか。
その理由は、力が大きいとか小さいの話じゃなく、単純に自分にできることをしてきただけだと思っているから。
そして同時に、自分にできないことがいっぱいある。
自分の知らないことがいっぱいあるとも思っているからです。
つまり、彼の持つ自分の力は大したことないみたいな態度っていうのは、自分の力を過小評価しているからじゃないんです。
周りの人たちがすごい人たちだと思っているからです。
ここを感じられるからこの主人公は、かっこいいと思えるんですよ。
すごい力を持っているのに、それがどれほどのものか理解していないちょっと常識が足りないんじゃないかというぐらいのんびりとしているところもあって、年齢のわりには抜けてるなって感じはします。
そして、最初に言った通り、まるでリアクション芸のようなことをする一面もあって、表面的なところだけ見るならギャグ漫画のキャラクターではという感覚がある主人公ではあります。
しかし、決めるところは決めるんですよ。
大事なところは外さない。
そして、実際に動けば頼りになる男なんですよ。
これが、かっこよくないわけがない。
その「決める」という部分、これを作品中では男気と呼んでいて、そして実際に読んでるディアスがいかに男気に溢れた人間かがわかります。
さらに、そうであるがゆえに周りの人たちが慕って集まってくる。
これだけ男気があるかっこいい魅力のある主人公ならそれは周りほっとかないよねっていうのがわかると。
同時にそうであるからこそ、トラブルも引き寄せてしまうことがあります。
もちろんそれをね、ディアスが男気をもって解決することも度々あり、やっぱりかっこいいなと思わされます。
魅力を持った主人公が真ん中にいるからこそ、この作品は目を離すことができないなと感じてしまいます。
それでは総評です。
「中身よければ全てヨシ!」といったところでしょうか。
最初に言った通り、ぱっと見ると無自覚無双系に見せつつも、実際のところは全然そういうところじゃない。
笑いとしても面白いしシナリオ面も面白い、そしてキャラクターもきちんと立っているからこそ、キャラクターの中心である主人公は一見するとボケキャラのようにも見える。
けれども、読んでいけば読んでいくほどディアスさん、とてもかっこいい。
なんて男らしいんだ!と思えてきます。
実際に1巻読んだあたりではぼちぼちかなぁと思ったのですが、気づいたら9巻まで読み終わってました。
やはりマンガも男も、ギャップが大事なのかもしれない。
……いやこれは言い過ぎか。
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