【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#06『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』※ネタバレあり
どうも皆さんこんにちは、マンガ系YouTuberのゲス顔です。
今回ご紹介する作品はこちら。
『ハズレ枠の状態異常スキルで最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』
異常なほどのなろう系臭を発するタイトルですけども、個人的には面白いと思っています。
ただし、1つだけどうしても気になって仕方がない点がありますので、それも含めてお話していきたいと思います。
この作品は、いわゆるクラス転移モノです。
主人公である三森灯河は所属するクラスが丸々異世界へと呼び出され、女神ヴィシスと名乗る女性に、「あなた方は勇者なのです」と言われます。
ただし、主人公の三森だけはその能力が低いが故に、廃棄だと宣告されます。
適性の低い勇者は、周りのみんなの足を引っ張る可能性があるので廃棄だと。
その状況に、主人公は勝手に呼び出しておいて、勝手に廃棄だなんていうのはクソだと…他の連中だって、この女神にいらないと判断されれば廃棄されるんだ、おかしいだろう!と訴えます。
しかし、元々クラスの中であまり立場の良くなかった主人公の言うことなど誰も耳を傾けず、自分たちの足を引っ張られるなどごめんだと言って女神に逆らう人はほとんどいません。
唯一反論した少女も、女神の手刀で一閃。
彼女を指して、ランクの低い奴がいるだけで、ランクの高い人間の心が迷ってしまう。だから廃棄するしかないんだと告げるのです。
笑顔で自分を廃棄しようとする連中、そして女神に対してもはや何を言っても無駄だと悟った主人公は、廃棄直前に「くたばれ、くそ女神」と涙を堪えます。
そして、廃棄先で1人ぼっちになったところで初めて涙を流した主人公は、女神への復讐を決意するのでした。
というのがこの漫画の概要です。
おそらく多くの人がこう思うかと考えます。
「なんかありふれてるね」って。
僕もそう思いました。ただ、個人的に言うならその「ありふれた作品たち」と比べると序盤の展開だけ見る分には、こちらの方が面白いなと思ったんです。
その理由は、主人公がちゃんと復讐する意志を持って話を進めるからです。
クラスメイトたちから明確に裏切られ、自分を呼んだ女神から廃棄という形で別行動する流れになっている。
むしろ、第1話の段階ではこの捨てられるまでの過程を非常に丁寧に描いているので、主人公が「この野郎」って思う気持ちが、きちんとこちらに伝わってくるんです。
ここは原作を読んでないので何とも言えませんが、多分漫画家さんが構成を入れ替えていると思います。最初に主人公が「廃棄だ」と宣言されるところから話が始まるのは、やはり漫画的に見栄えがするし、目を引くんです。
ステータス云々とかそういうのを後回しにして、まず廃棄だというところ。
そして、廃棄に繋がるエピソードだけを徹底的に書くので、これは間違いなく構成力が非常にいいです。
また、主人公が廃棄先でいきなり強力なモンスターに追いかけまわされて、慌てて自分のスキルを使う。
他に対処法がないからこそ、使ってみるっていうところに至る展開の流れ。追い詰められる中で、一体どうすればいい?どうすれば生き残れるんだという、主人公の思考の流れみたいなものがきちんと描かれた上での最初のアクションなので、ちゃんと説得力ある行動に見えるんです。
なんかスキルっていうのがあるからちょっと使ってみるかという流れではなくて、余裕がない状態で使うからこそ、一体どんな効果があるのか。
どこまでやれるのか試さなきゃ、という主人公の思考も自然で当然なことに見えますし、作家さんの力量の高さが伺える流れになっています。
また、少し話が進んだところでどうしてステータスが見れるのか。
その理由は、女神がわかりやすいように主人公たちの世界に合わせて最適化したという表現があります。
取ってつけたような話と思えばそうかもしれませんが、少なくともこの辺りの説明があるだけで、そういうこともあるかぐらいの納得は得られると思いますね。
ここに関しては説明しない作品が多すぎるので、異世界転移を実行した神様側の配慮だという理由付けがあるだけでも、割と腑に落ちるんです。
これは原作のおかげなのかな?ありがたいですね。
そして、主人公が最初に探索する場所が実力のない勇者を廃棄する場所という設定のおかげで、いろんなものが見つかっても、不自然にならない。
アイテムとか日記、手記のようなものが見つかっても、かつて女神に呼び出された上で廃棄された勇者たちの残したものなんだろうなという。
ここはうまく設定を作ったなと思います。
そして、この作品の主人公に関しては異世界転移される前の話が描写されていて、かなり不遇な人生を歩んでいたことが伺える描写もあるんです。
これも、無理やり回想シーンを入れるよりもめちゃくちゃな状況で戦って疲れが溜まり、ふと意識が飛んだ瞬間に浮かんできた夢のようなものとして描写されています。
そのため、まったく嫌な感じがしないというか。
しかも最低限の尺できちんと何が起こったのかわかるように描かれているので、主人公はこういう生い立ちがあったのかと、むしろ主人公に感情移入するきっかけになっているように感じます。いや、本当に漫画が上手いです。
画力に関しても申し分ないですね。
モンスターの描写とかもとても綺麗ですし、絵柄には好みがあるかもしれませんが、そこまで人を選ぶようなものではないと思います。
さて、ここまではベタ褒め状態なのですが、この作品には1つだけとてつもなく気になる点があります。
それが、主人公の能力です。
タイトルにある通り、主人公の能力は状態異常系スキルです。
具体的には、麻痺と毒と睡眠なんです。
この能力自体がおかしいのではなくて、この能力がなぜ勇者としての適性の最低ランクに当たるのかというところに疑問が出てくるんです。
だって、めちゃくちゃ強いですよ?
ゲームだと、麻痺も毒も睡眠も強いです。
他のメンバーのスキルと比較して弱いという対比があればいいのですが、1巻の段階では他のキャラクターのスキルが全く出てこない。
そのため、状態異常スキルがなぜ弱いかというのが、晴れない疑問として残ります。
実際、初めの戦いでも明らかに自分よりも強いモンスターに対して普通にパラライズ(麻痺)が効くんです。
さらにポイズン(毒)を重ねがけして、1時間ぐらい待って絶命させる。
これに対して主人公が、「敵を倒すのに1時間かかるとそれほど強いスキルじゃないよな」というような反応をします。
これ自体は別に普通の感想だと思います。
ただ、なんでソロプレイを基準にスキルの強さを図ろうとするのかという疑問はあるんです。
だって、学校の1クラス単位で召喚されているんですよ。
どう考えてもマルチプレイ推奨ですよね?
マルチプレイにおいて敵の動きを止められる麻痺や、敵を眠らせることができる睡眠はとても強いです。
例えば、強力な魔法を打てるが詠唱時間はとてつもなく長いみたいなスキルを持ってる人からすれば、喉から手が出るほど欲しい仲間じゃないですか。
相性抜群ですし、そんなスキルがEランクだと言われて廃棄になったというところの理由がちょっと腑に落ちないです。
これは間違いなく原作からある要素だと思いますし、漫画家さんの方で納得できるように落とし込もうとしている努力は見えますが、やはり無理があるのかなと。
もしかしたら、このスキルの評価というのはもう完全にソロプレイ前提の評価であって、その値評価基準を鵜呑みにした女神が勝手に廃棄処分にしたとか。
そういう可能性もありはするんです。
きっと、女神自身はぼっちプレイばっかしてて、仲間と協力するとかそういう発想がなかったなど考えられますが。
ただ、主人公が廃棄された理由が足を引っ張る云々言っていたので、間違いなく協力プレイが前提だとは思うのですが…….惜しい!
このポイントさえ落としていなければほぼ完璧と言っていい流れだと思います。
主人公の能力を本当に弱くしてしまうと話が進行しないというのもあるので、なろう系での俺TUEEは当然として割り切って読むなら面白いと思います。
僕はそう考えて、楽しんで読む方向に切り替えました。
主人公の能力がEランクになった理由に関する矛盾さえ気にしないなら、復讐モノとして非常に面白いです。
それに、その他の設定に関しては特段おかしなところを感じることもなく、むしろ納得のいく話運びでした。
いい感じで危機感を演出してくれるので、先が気になるなという作品になっております。
主人公の動向だけではなく、女神の思惑やクラスメイトたちの行動、召喚された異世界の情勢等ここから先も面白いところを見せて1巻が終わっております。
そのため、個人的には2巻が出たら買ってみたいと思っております。
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