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【夏の文庫フェア】【キュンタ】『火のないところに煙は』芦沢央
夏の夜といえば怪談!今読むべき一冊。
夏の文庫フェアも10冊目を迎えた。新潮文庫の100冊より、『火のないところに煙は』(芦沢央 著)。
ホラーはそんなに読まないのだけれど、ミステリとの融合ということで興味を持ち、夏の読書にもぴったりだと思い、手に取った。
モキュメンタリー〜現実かフィクションか?〜
作家の私は、神楽坂を舞台にした怪談の特集への執筆を依頼され、大学時代の友人に関する話を綴る。
神楽坂の母と呼ばれる、よく当たると評判の占い師に占ってもらったことから始まった悲劇。
これが「小説新潮」に掲載されたことをきっかけに、私は、様々な怪談について知り、書くこととなる。関係するライターや出版社の担当を通じて、色々な変わった話が舞い込んでくるようになったのだ。
この本は、モキュメンタリーの手法で描かれる。フィクションではなく、現実に起こった話のように演出されている。
たとえば、本の中で、「私」のツイートについて書かれている場面があるのだが、この本の作者である芦沢央さんが、実際に以下のとおりツイートしている。
ここ数日怪談を書いているんだけど、なぜか立て続けに2回車に轢かれかけていて(突然車が赤信号をぶっちぎってきて、えっ! と思ったら、えっ! という顔をした運転手とガラス越しに目が合った。2回とも)このまま続きを書いてもいいものかどうか迷う……
— 芦沢 央(あしざわ・よう) (@AshizawaYou) September 27, 2017
読んでいるうちに、「これってフィクションだよね?本当の出来事じゃないよね?」と誰かに確認したくてたまらなくなってくる。
ミステリとの融合
上記のとおり、構造上内容がフィクションではないように思われることに加え、ただ特異な現象が起こるだけではなく、論理的に説明されるミステリの要素もあるため、創作であるという感じがますます薄れ、面白いけれど怖い。
一つ一つの話が繋がっていくラストは、恐怖を通り越して、なんだか美しささえ感じてしまう。
しかけも楽しく…恐ろしい
文庫のカバー裏には、初回限定特典が付いている。こういうしかけは楽しいけれど、内容はやっぱり恐ろしい。
作者のツイートや、カバー裏の掌編もあわせ、怖いけれど満足感の高い読書となった。
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