
【読書】アガサ・クリスティー①
今年の2月下旬〜3月上旬にかけて、アガサ・クリスティーの作品(kindle)が半額セールになっており、既読のものも未読のものもこの機会にたくさん読みたいと、色々購入した。
購入に当たっては、『アガサ・クリスティー完全攻略』(霜月 蒼 著)も参考に作品を選んだ。
少しずつ読み進めているので、5冊ずつ紹介していきたい。
0.クリスティー作品との出会い
私のクリスティー作品との出会いは、母の本棚だ。
和室の母の本棚には、クリスティー作品がたくさん並んでいた。
クリスティー文庫として新しくなる前のハヤカワミステリ文庫である。文字が小さくて、紙も若干黄ばんでいたけれど、本を開くと始まる冒険に胸を躍らせ、夢中で読んだ記憶がある。
しかし、『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行の殺人』のような、結末が衝撃的かつ目にする機会も多い作品については覚えているものの、他の作品はなんとなく面白かったことは記憶にあっても、内容の多くを忘れてしまった。未読の作品もたくさんある。
今回、少しずつ読んで、一冊一冊楽しんでいけたらと思う。
1.スタイルズ荘の怪事件
『スタイルズ荘の怪事件』アガサ・クリスティー#読了
— 花車📚 (@gerbera_reading) March 2, 2021
スタイルズ荘にて、女主人が毒で死亡する。当時屋敷には、再婚したばかりの年下の夫、義理の息子達、ポアロの友人ヘイスティングスらがいた。
前書きにもあるが、犯人らしい人を疑うか、そうでない人に注目するか、考えながら読むと面白かった。
クリスティーのデビュー作である。名探偵ポアロが事件解決を図る、いわゆるポアロもので、語り手は友人のヘイスティングス。
ポアロが最初に登場する場面で、ミス・シンシアはポアロのことを「かわいいおじさん」と言っている。
背が小さいこと、頭の形が卵のようであること、口髭が特徴的なことが書かれている。かつては刑事だったベルギー人のポアロは、可愛らしい見た目と抜群の優秀さを持つ人物だ。
『スタイルズ荘の怪事件』は、読了ツイートに書いたとおり、主に犯人を考えることを楽しむお話である。
登場人物たちを信じてよいのだろうか。この人は本心を語っているのだろうか。
私は推理小説を読むとき、あまり犯人やトリックを当てようとはせず、雰囲気であったり、むしろ騙されることによる驚きであったりを楽しむことが多いが、このお話では誰が犯人かを自然とあれこれ考えていた。
2.アクロイド殺し
『アクロイド殺し』アガサ・クリスティー#読了
— 花車📚 (@gerbera_reading) March 10, 2021
村の富豪アクロイドが書斎で殺されていた。電話を受けて駆けつけた医師らが発見する。ポアロは、関係者が皆、何かを隠していると指摘する。
犯人については、母の本棚のクリスティー作品を読み漁っていた頃のおぼろげな記憶があったが、充分楽しめた。
『スタイルズ荘の怪事件』と同じくポアロものだが、語り手はシェパード医師。
犯人でない人も、様々な事情から何かを隠したり嘘をついたりすることがあるので、物事は複雑になっていく。一つ一つをほどいていくポアロはさすがだ。
本作は、ネタバレを受けてしまう前に読むことをお勧めする。
3.ポケットにライ麦を
『ポケットにライ麦を』アガサ・クリスティー#読了
— 花車📚 (@gerbera_reading) March 21, 2021
法すれすれの行為で富を築いた社長のフォーテスキュー氏が毒殺され、ポケットにはライ麦があった。その後も悲劇は続く。
よくある遺産目当ての事件というだけでなく、童謡や人々の正体、ミス・マープルの正義感など興味をそそる要素だらけだった。
こちらは老婦人ミス・マープルもの。ミス・マープルは元刑事でも私立探偵でもない、セント・メアリ・ミード村に暮らす愛らしい老婦人なのだが、驚くほど鋭い観察眼を持つ。
かつて作法を指導するなど、殺されたグラディスという小間使いの保護者的存在であったミス・マープルは、事件のあった屋敷に乗り込み、自ら真相を究明していく。
ミス・マープルの熱い思いに注目の作品。
4.杉の柩
『杉の柩』アガサ・クリスティー#読了
— 花車📚 (@gerbera_reading) April 11, 2021
資産家のローラが亡くなった後、姪のエリノアは、元婚約者のロディーが惚れた相手、メアリイを殺害した容疑をかけられる。
第一部は、推理小説であることを忘れるくらい、恋愛小説として魅力的だった。トリックや犯人より、登場人物たちの心情に引き込まれた。
ポアロもの。他のクリスティー作品でも、ロマンスが登場するものは多いが、このお話の第一部は恋愛小説のようだ。
たとえばこの部分だけ読んで、推理小説だとわかるだろうか。
「(前略)恋って、いったい幸福なものでしょうか?」
ウェルマン夫人は真剣な顔つきになる。「エリノア、そうではない、たぶん、そうではないよ。ほかの人間を激しく慕うってことは、常に喜びよりも悲しみを意味するんだから。(後略)」
先日、この『杉の柩』のドラマ版を観た。結末を知ってから観ると、状況的に犯人が明らかな気がして、結末を知らない人も早い段階で気付くのではとはらはらした。しかし、初めて読むときは登場人物の誰もが怪しく見えるのだから、クリスティーはすごいなと改めて思う。
5.葬儀を終えて
『葬儀を終えて』アガサ・クリスティー#読了
— 花車📚 (@gerbera_reading) April 18, 2021
アバネシー家当主の葬儀の日、末の妹コーラが彼は殺されたのだと衝撃的な発言をする。その後の悲劇を含め、ポアロが真相究明に動く。
一人一人のキャラクターが濃く、誰もが怪しい気がして面白い。ちょっとした違和感というのは軽視できないなと思った。
ポアロもの。母のイチオシ作品のようで、勧められて読んでみたが、たしかにとても面白かった。
キャラクターが濃い親族の誰もに動機があるし、犯人に繋がる「気付き」がきらりと光るのも良い。
今より少しだけ注意深く物事を観察してみれば、これまで知らなかったことが形を持って見えてきたり、周りの人のことがもっとよくわかったりするのかなと感じた。気付かない方が幸せなこともありそうだけれど。
★見出し画像紹介
クリスティーということで、見出し画像はイギリスの写真にした。1680年に建てられた、バースで最も古い建物を利用したティーハウス「サリー・ランズ」外観。イギリス留学中に訪れ、撮影したもの。