ジョージア料理に恋して⑨スヴァネティの塩
ジョージア美食研究家あきです。
ジョージア料理に魅せられてジョージアの食文化を紹介しています。
タイトルを読んで
「今回は映画のはなし?」と思ったあなたは、かなりの映画通。
残念ながら今回はジョージアのスパイスのお話です。
※「スヴァネティの塩」はジョージアの古いサイレント映画のタイトル
私がスヴァネティの塩(SVANETIAN SALT)の存在を知ったのは、ジョージアの首都トビリシでジョージア人のシェフMaiaからシュクメルリの作り方を習ったときだ。
シュクメルリは近頃日本でも人気急上昇のジョージアを代表する絶品鶏肉料理。私はこの料理と出会うためにジョージアに行ったと言っても過言じゃない。
私がMaiaから習ったレシピによると、まず鶏肉にこのスヴァネティの塩で下味をつける。
もちろんスヴァネティの塩とは何か私は知らなかった。Maiaに質問すると「塩とスパイス」というお答え。
うーん、なんのスパイスかが問題なんじゃないか(笑)
シュクメルリと言えば、ニンニクとチーズをがっつりきかせた鶏肉のクリーム煮と思われている節があるが、チーズとクリームは使わない。少なくとも私の知る限りでは。
ニンニクも確かに揺るぎない存在感を主張しているが、シュクメルリの美味しさを決定づけるのは実はスパイスなんじゃないかと私は思っている。
帰国前にスーパーに駆け込みスヴァネティの塩を探してみたが見つからず、代わりにフメリスネリを買って帰ってきた。
帰国後シュクメルリを作るとき下味にはフメリスネリと塩を使ってきた。これはこれで十分に美味しい。
じゃあ、フメリスネリ+塩とスヴァネティの塩って何が違うの?
どう使い分けるの?
ではまず「フメリスネリ」の定義とは何か。Wikipedia様に聞いてみた。
曰く
フメリスネリとはジョージア語で「乾燥スパイス」を意味する。
伝統的なジョージアンスパイスミックス。通常、コリアンダーの種子、セロリの種子、バジル、ディル、パセリ、フェヌグリーク、夏の風味、月桂樹の葉、ミント、マリーゴールドが含まれています。この混合物は、カルチョなどの伝統的なグルジア料理とソースの材料です。
日本語がおかしいのはご愛嬌。「夏の風味」はsummer savory、カルチョはハルチョー(牛肉とお米のスープ)のこと。
文字通りスパイスミックスなので、フメリスネリが手に入らなくても、コリアンダー、バジル、フェネグリークなど手に入りやすいスパイスを数種類組み合わせればなんとなく雰囲気は出る。
スヴァネティの塩は、ジョージアの北西の山岳地帯「スヴァネティ地方」のを起源とする食塩の代わりに用いられる塩とスパイスをミックスした調味料。一説には、標高の高いスヴァネティ地方では海水塩が貴重品だったため、山岳地帯で穫れるスパイスを混ぜて大事に使ったとか。
材料はコリアンダー、ディル、フェヌグリーク、赤唐辛子、マリーゴールド、クミンなどの乾燥スパイスに加え、塩とニンニク。
塩とニンニクを加える以外、そう大きな違いは無いようにも思える。使い分けをご存知の方がいたら是非教えていただきたい。
スヴァネティの塩は自分でブレンドするしかないが、フメリスネリは日本でもロシア食材のお店で手に入ることがある。
このスパイスミックスを加えるだけで何気ないメニューが急にコーカサス風になるので異国気分をお料理で楽しみたい人はお勧めだ。
例えば、オリーブオイルとバルサミコと塩にフメリスネリを少し加えるだけでジョージア風のドレッシングになる。刻んだクルミ、ニンニクと一緒にトマトときゅうりを和えてほしい。そう、パクチーも忘れずに。
今回はチャホフビリという料理にフメリスネリを使ってみた。ジョージアで購入してきたレシピ本をいくつか参照してもフレッシュなハーブを仕上げに加えると書いてあるが、スパイスについては特に何も指示がない。でもきっと美味しいはず!
チャホフビリの材料は
一口大に切った鶏むね肉(塩とフメリスネリで下味をつける)、みじん切りの玉ねぎとニンニク
トマトの水煮、ピーマン、バジル、パクチー。他にディルやイタリアンパセリを加えてもいい。
ハーブはきっと多ければ多いほど美味しい。ピーマンの苦みが案外抜群のアクセントになっている。味付けは塩とビネガーだけ。
ジョージア料理の魅力は、味付けはシンプルなので素材の持っている味をうまく引き出し、さらにハーブとスパイスが奥行のある味わいにしてくれている点だと私は思っている。
次は自家製スヴァネティの塩を作ってみよう。