山羊飼い
山羊飼いの生活とは、どのようなものだろうか。
日本で生まれ育ち、特段山奥などで過ごしたこともない私からすれば、山羊飼いといえば「アルプスの少女ハイジ」に出てくるペーター一人しか思い浮かばない。
毎朝一人で群れを引き連れ、朝もやに霞む山を登り、高所にある草地を目指す。到着したならば、山羊たちがお腹いっぱいになるまでのんびりと過ごし、そしてまた家路につく。
彼が日々目にするものは木々や草花、そしてそれらの影に隠れる種々の生物たち。また、白い雲と広大な青空を背景にした雄々しいアルプス山脈の峰々である。
生まれたときからそんな世界を、そんな世界だけを見続けるというのは、一体どのような影響をその人の心に与えるのだろうか。
ありきたりな推論ではあるが、やはり、いつも穏やかな心を持てるようになるのだろうか?細かいことは気にしなくなるのだろうか?自然の大切さを感じることができるようになるのだろうか?嫌味なことなど、言わなくなるのだろうか?
少なくとも、ペーターはそんな印象の人物だった。しかし、アルムおんじの例もある。同じような環境に身をおいていても、頑固さや気難しさを身につけることもあるようだ。
ペーターはその後どのような大人になるのだろうか。私の知るペーターのままで育っていくのだろうか。それとも、何かの拍子でアルムおんじのように暮らすようになるのだろうか。
もしかすると、かの有名なオープニング曲の歌詞のように、口笛はなぜ遠くまで聞こえるのか、雲はなぜ私を待っているのか、といった文学的、ともすると哲学的な問いとも言える想像に心を浸す素敵な人になるのだろうか。
その答えは、アルムのもみの木だけが知っているのだろう。
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