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生命賛歌
水鳥の群れが空を行く。
数十個の黒い十字架たちが私の空を掴む。
水面に映るのは朝露に引き締まる空気と朝焼けに溶けた雲。
そこに一本の電車が滑り込む。
薄く乾いた音が群れを追って湖面を渡る。
さらにそれを追う別の群れ。
近づく。
瞳孔に結ばれた糸を十字架たちが引っ張っていく。
最後の一両が遠ざかると、ふいに翼が空気を切り、叩く音がする。
静寂が静寂のまま、鉛筆の先で穴を開けたように破れる。
それは彼らが生きる音。
それは彼らが戦う音。
人語を使わぬ者たちの人語にならぬ生き方の音。
静けさの中で鳴り響く生命賛歌。
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