ライフジャケットが普及しない本当の理由とは…
多様化する水難事故
これから春を迎え夏本番になると、多くの方が海や山へ出かけますよね。暑い時こそ川にダイブするととっても気持ちよくてやめられないですね。しかし、ときどき起きてしまうのが「水難事故」なんです。
水難事故と言っても多様なケースがあって、2019年夏に「としまえん」で発生した事故ケースはライフジャケットを着用していたのに起きてしまった、これまでに無い事故でした。
ライフジャケットと救命胴衣の違い
そもそも、ライフジャケットとは海外では工事用のトラ模様ベストがそれに該当し、水域用のは、Personal floating device(PFD)と称されています。日本ではライフジャケットが浮くものとして認識が高いので、ここでは「ライフジャケット」と呼びます。ちなみに私の中では、「救命胴衣」と「ライフジャケット」は区別しています。
救命胴衣と言われるものは、「国土交通省」の承認がついてます。そのため、ライフジャケットと言われると、この型を思い出す方も多いと思います。しかし、これは浮いているための装備で、どちらかと言えば「海」に対応したものです。川での使用には適していません。海は、うねりと波がありますが、川には流れと障害物があり、流れながら岩や木などにぶつかります。時には急流やホワイトウォーターもあって、結構激しいため救命胴衣の構造では耐え切れないのです。下の写真にある川用のライフジャケットには強靭なベルトやバックルなどが複数装着されているものが主流で、衝撃にも耐えられる構造になっています。ただ、ちょっとゴツイですよね(笑)
ちなみに、「ライフジャケットがない場合どうするの?」という質問に最近では、浮いて待ての「着衣泳」がありますね。この「着衣泳」ですが、実は静水面に適応しています。つまり、海や湖などです。ゆる~い流れなら着衣泳も可能かもしれないですが、一般的な流水下では、着衣泳の体制をキープすることはできないため、自らが助かる方法を知らなくてはなりません。最も可能性が高い救助は、自らがライフジャケットを着用することなのです。川では大人も子どもも着用しましょう。
水難事故の現状
海で泳ぐ人ってあまり着用していませんよね。私もかつてはそうでした。しかし今は、川でシートベルトのようにライフジャケットを着用するのが日常となり、今では海に行っても不安になるので着用しています。
警視庁の統計によると、水難事故のうち3分の1が川や湖で発生しています。しかも、子どもの水難事故に限れば、3分の2が川や湖で起きています。このような背景の中、公益財団法人河川財団やNPO法人川に学ぶ体験活動協議会の熱心な活動によって、簡単な救助方法の普及や、川の体験指導などを行っていますが、その効果は全国の児童や生徒にまでは行き届かず、今も水難事故の件数が横ばいのままです。
では、なぜ、水難事故が減らないのでしょうか。
①教育上の問題
学校では、「いい子は川で遊ばない」が主流ですよね。家庭でも親が川で遊んだ経験がないこともありますね。流れる川で、ビーチサンダル姿に浮き輪をもって来る親子を時々見かけますが、川では役に立たないだけでなく、危険を誘発する場合も多いのです。海でも川でも使える道具は、シュノーケルや箱メガネくらいだと私は思います。そういった情報やリスクを知らない、または教えられないために、「行っちゃダメ」になるのでしょう。それでも川で遊ぶ子は絶対にいて、知らないまま事故に遭遇することになってしまうのです。
②装備の問題
いざ川に行こうと思っても、安全な装備を購入できるショップが近くに無いことがあります。私も田舎住まいの為、ネット購入しかできないんです。そのため、「ま、いっか。」となって、ついつい装備なして川に出かけてしまいます。川ではライフジャケットはもちろんのこと、靴も必要です。川にはごみが多いため、素足だとケガをします。これも海と大きく違います。気温や天候にもよって装備が変わってくるので、詳しくは、河川財団のHPを参考にされるといいでしょう。
子どもだけ、ライフジャケットを着用して大人が着用しない姿もよく見ますが、大人だって沈むんですよ。っていうか、おそらく大人のほうが危険だと思います。実際、中学生や高校生の無謀な活動での水難事故は毎年後を絶ちません。適切な装備を着用することは、水難事故を水際で防ぐ第一歩なのです。ぜひ、子どもたちに大人が着用する格好いい姿を見せてあげましょう。
ちなみに、近年釣具屋さんやホームセンターで販売しているライフジャケットの中には粗悪品が出回っていることがあります。製品に記載されている浮力が全然足りていないものがあります。一般的に体重の約1/10が頭部の重さと言われています。実はこの頭部を浮かすためにライフジャケットあるのです。例えば子どもの体重が30kgとします。頭部が約3kgとした場合、「浮力3kg」以上のラフジャケットを選べばいいのですが、粗悪品だと必要な浮力を得られないのです。全く意味のないジャケットを着ているので、流されたら間違いなく沈みます。命を救う装備品なので、ケチらずにいいものを買いましょう。ちなみに、「RACマーク」が付いたライフジャケットは安全性能が保障されています。
③デザイン性の問題
夏には、ライフジャケットって暑苦しくて着づらいだけじゃなくて、スタイリッシュじゃないですよね。海洋で使われるライフベストは近年とてもコンパクトになってきて、使いやすくなってますよね。川ではカヤックなどのスポーツ性を重視したデザインになっていることが多く、「見た目」はあまり重要ではありません。でも、ある程度格好良くないと、購買意欲はわかないものです。
以前、自転車用のエアバッグがありました。普段は着用していることが分かんないけど、衝突の瞬間にエアバッグが機能するもの。これって今実用販売しているようです。
このように、川での行為をよく見なおしてみると、エアバッグのように新しいデザインが生まれるかもしれません。2020年東京オリンピックを機に、水辺に出かける機会が多くなるでしょう。今からデザイン性と機能性をイノベーションし、つい、買いたくなるライフジャケットが世の中に普及すれば、水難事故が1件でも減るかもしれませんね。
参考HP|河川財団 こどもの水辺サポートセンター
https://www.kasen.or.jp/mizube/news_supportcenter/itemid067-000075.html
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