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地域のNPO中間支援を考える

鳥取県でNPOを経営するゲンヨウです。朝晩も涼しく秋の雰囲気が一気にやってきましたね。最近は春と秋が短いなと思うことが多いです。今日は、NPOの中間支援について書きます。もともとのキッカケは下記投稿をD×Pの今井さんがしていたので、それに反応して答えたツイートをベースに書きます。

1.NPOの運営

NPOは非営利組織、NPO法人という法人格もありますし、広い意味ですと任意団体なども含まれます。最近はで一般社団法人なども、NPO的な活動をする団体の種類は増えています。小規模多機能自治の現場に触れると小学校区くらいの地域組織にもNPO的な動きが求められています。

非営利とはいいつつも、組織として動いたり事業を実施したりするので、当然運営ノウハウは必要になります。給与が発生する人もいる場合もありますので、有給スタッフ、ボランティアスタッフなど多様な人を動かす組織マネジメントのチカラも要求されます。

サービス提供の売上の確保の仕方も複数あって、その組み合わせになります。ちょうど大学の授業で認識してもらうために使った資料を載せます(ざっくり書いてますのでニュアンスがわかればと)

図:NPOの収入方法

ボランティア的と見られているNPOの運営もこのようにひも解いていくと、難しい面がいくつも出てきます。

2.NPOの中間支援組織

そういったNPOの運営サポートをするのが中間支援組織です。思いを活動に昇華させるアドバイスを行ない企画の立て方を教えたり、適切なパートナーを紹介したり、資金源となる助成金などを紹介したりと、サポート内容は多岐にわたります。

事業が洗練されてくると、専門家などに有償で相談できるようになりますが、初期の頃はNPO中間支援組織に頼りながら事業を安定化させていきます。

地方のNPOは規模も小さく財務基盤も弱いので、コンサルタントや専門家に相談できることは少なく、無料支援をしてくれるNPO中間支援組織は公的機関や自治体の外郭団体がNPOセンターを運営していることが多いです。

3.鳥取の状況は

鳥取の状況を書くと、県のNPO中間支援(財団)が全県をカバー、職員の待遇面も県職員相当にしているので、スタッフも安定、休眠預金の流れなどもココが中国エリアのNPOセンターと連携して受けています。

市町村は町村にはそのような組織は無く、市が中間支援を設置しているけど、社協の一部だったりと団体支援をするには時間もノウハウもない感じです。予算措置が薄いんじゃないかなと思います。

それ以外に、15年~20年とキャリアの長めのNPOが新しいNPOの相談を受けたりしている場合もあります。弊社もその部類に入ります。

実は鳥取県は10年くらい前まではNPOセンターが県域には無くて、弊社のような民間支援機関ができることをやっていました。民主党政権時の”新しい公共支援事業”の頃(2010年頃)は民間支援組織が受け皿となって委託事業を進めていました。その後、県のセンターが出来て今に至ります。

4.主観的直近10年の鳥取のNPO中間支援

予算措置がされているとはいえ、県のセンターで全県を見るのはなかなか難しい。鳥取は小さい県なのでまだやれてる方だと思いますが、県のやりたい事にも引っ張られるので、団体の立ち上げとかの部分に注力している感じがします。

NPO法人だけみると鳥取県も団体数は減っていて、解散や実質的に休眠している組織が出ています。いまの70代が引退するとかなり減るんじゃないかなと感じています。

僕は20代で創業したので、当時の50代とかNPOのうごきは活発でした。鳥取はまちづくり団体が多く、経営者とか地方行政の人が混ざって団体をやりながら、町に必要な事、盛り上げるための企画とかやってたと感じます。

そこに比べると新しい組織が生まれてくる数は少ないかも。 僕はその辺の世代に支えてもらって今があるので、地域の民間中間支援の成果物なのかも。その世代が後継者を育ててないパターンがほとんどかなと。別に役割が終わっていれば後継者が無くてもよいのですが。NPOも事業承継は難しい。

弊社を振り返ってみると、2004年の300万の委託事業をキッカケに仕事として初めて、ちょっとずつ動きを広げてきました。 今ではNPOへの仕事の出し方(委託のお作法)も市町村にも広まってきているので、その辺で生まれ、リーマンショック後の緊急雇用事業で育った組織は残っているところもチラホラ。 ただ中間支援までやれてるところは少ない。

うちの場合は、”大学生と地域・企業のマッチング”が武器なので、人的支援の提供がメインのサービスになり中間支援的な役割を本業で担えていたこと。20代の創業は当時は珍しく、鳥取から米子まで幅広くいろんな方にかわいがってもらったことが人脈を広げました。人を紹介できることが結果として人を繋ぐ機能も強化できてました。

そんな経験を積ませてもらっている今だからこそ、地域の中間支援機能は複層的に備わっている方が良いと感じますし、育てたり生まれたりする流れは作っていきたいです。

5.鳥取県のNPO中間支援の施策の良いところ

ここからは、良い点と良くない点を挙げていこうと思います。まずは良い点。

1)県の中間支援組織の待遇がちゃんとしている。
地味かもしれませんが、大きな一歩だと思っていて、全国的にもNPOセンターが委託されている場合スタッフの待遇や指定管理料が激低いというのはセンターが立ち上げる前から業界の問題点でした。若手NPO経営者の中でも、20代で創業・就職した若いスタッフも「28歳限界説」とか言われたりして自分たちが何とか乗り越えてきたかなという感じでした。

その当時、センターを創るための県の委員会で委員として参加して、この点を伝えていきました。事務局がさすがでちゃんと予算を取る枠組みを作ってくれました。結果として10年間、メインの職員の方は誰も辞めてませんし、事務局長は理事長になってますので、積み重ねが残っています。これが育てた段階で辞めちゃうとか2-3年で交代だと人のつながりなどは切れてしまうので、大事です。

2)NPOへの確定契約への変更
委託事業は委任契約と確定契約と2種類があります。弊社が受けている農山村ボランティアも当初は委任契約で、どれだけボランティアを派遣して当初より派遣が増えても減っても、年度末には領収書のチェックがあり、残金があるような返金という仕組みでした(初年度に備品とまんじゅう買って返金した以外は返金は無いと思います)。派遣回数が増えても予算は増えないし、効率よく運営しても返金しないといけないので、なんだかなぁと思って担当課と長いことやり取りを続けていました。

現在は、どの仕事を遂行しているかという部分を確認する確定契約という方法に変わっていて、領収書のチェックはありません。ちゃんと成果で測ってくれているのはありがたいことです。これ、鳥取県内全NPOの契約時に確定契約を基本的に採用することってなっていて、これは画期的だなと思います。成果ベースで話ができるのがありがたいです。

3)鳥取県庁の各種情報公開
鳥取県は情報公開してくれることが多くて、県のホームページにいろんな情報が載っています。これは本当にありがたくて、大体のことの概要はわかる事が多いです。他の自治体では迷子になる事が多いので、これはすごい。
特にNPOとしては予算編成過程を公開してくれているのもありがたい。どんな感じで事業予算を取っているのか、積算はどんな感じかなども見られます
(下記は令和5年度の予算編成:当初予算)。

4)自治体の担当者が柔軟(になってきた)
20年間の変遷を考えると柔軟な方が増えたなと思います。小さな県なので県庁内も柔軟な方が多いし、市町村もそういう方が増えてきたような気がします。人口減少最前線ではあるので、本質的な話ができるようになってきているのかも。

ここまで書いてみて思うのは、僕らNPO側も行政との協働が上手になってきてるのかもしれないなと思います。お互い学んでいるなぁ。この辺は新しい団体や地域おこし協力隊向けにはノウハウとして僕は伝えるようにしています。自分の踏んだ地雷と同じようなことが起こらないように(笑)

6.鳥取県のNPO中間支援施策の良くないところ

次はよくない、微妙だなと思うところです。
1)県のセンター以外は中間支援力が弱い・ない
最初に書きましたが、鳥取市・米子市には少し機能があるように感じますが、倉吉・境港は弱いですしそれ以外の町村には無いので、必然的にNPO法人や一般社団も生まれにくいです。人口の少ないところほど地域課題は小さく生まれてきます。役場の職員も少ないので、外部団体で捌ける組織を作っても良いのかなと思ったり(中核市と連携するのもありかもしれません:広域消防やDMOみたいに)。

2)立上げ支援はするものの育成支援はできてない
弊社は委託の規模を少しずつ増えつつも、タイミングとして緊急雇用対策事業など人を雇用する規模の予算を預かりながら、組織として動く経験値を積んできました。提案型の数百万の予算もありました。
現状は数百万規模の年間予算のある事業は少なく、小規模で立ち上げたものが事業化したり雇用の経験値を積むような施策は無かったりします。
また、弊社は自社のドメイン以外はやらないようにしていますが、2‐300万円の受託は何でも出す組織もいまして、実績があるからそっちがやれちゃうんですよね。若い組織が育たない。

世代交代なども考えていくと、20代30代のNPO経営者が出てきても良いのではないかと思います。マーケットが地方は狭いので、事業ポートフォリオや収入源を分散化させることなども含めて動きが必要です。

3)継続事業=予算削減みたいな進め方
たまたま20年近く委託事業を受けているので、当初から予算枠が増えてきてはいます。希なパターンは承知しています。ただ一方で、予算の見直しの度に「もっとできることはありませんか?同じことだと削減されます」という声を担当から聞きました。そこから担当者と事例や工夫しながら、予算の確保をしてきましたが。そうすると何が起きるかというと、僕ら以外は現実的に受託できない予算になっているんじゃないかと。

組織としてやり方をブラッシュアップし、ITツールなどを活用して経営効率を上げることはできます。ただ限界値はあるわけですし、僕らが20年かけてジワジワ行ってきた改善を新規組織ができるわけありません。指定管理も一緒で、更新時には予算削減といっても限界があると思います。

学校給食の受託者が破綻して給食が止まったニュースが最近流れましたが、他の業者が「あの単価だと難しい」というような状況まで予算削減した結果でもあると思うんですね。失われた30年で毎年下げてきたツケだと思うので、そこをここで考えていく必要が、この点に関しては日本全体で生まれていく必要があります。

4)人材育成
中間支援人材の育成を戦略的にやれているとは思えず(それは弊社も含めてですが)、これはもう少し俯瞰した目線で、中間支援機能のある組織での協働研修など(僕は社協や商工会議所なども、鳥取においては中間支援機能を持った組織だと思うので、その辺で共同研修はアリだと思っています。)。

ちなみに県のセンターのとあるスタッフの人は僕が理事の時代に、小規模多機能自治関係の経験値を伸ばしたいということで、豊岡市などの現場にも行ってもらいました。おかげさまで、今では県内の小規模多機能自治関係の相談は行くようになっているみたいですし、僕が鳥取市で関わっている委員会でも有識者ポジションで来てもらうようにしました。武器があるって大事。

そのため、スタッフを外の研修に出すなど、スタッフの人脈やノウハウを伸ばす方法が求められていると感じます。
またNPO経営者の意見交換の機会をもう少し設けた方が良いです。どこも忙しいのはよくわかっていますが、そういう機会がないとなかなか、経営者としての悩みなどを共有したり、お互いにアドバイスや共通項の課題解決などにはつながらないと思います。地方はそこが弱い。僕はありがたいことに、業界の仲間が全国にいるので、その辺で担保しているなと思います。尖った事業をやっている組織の強みかも知れません。

5)審査員いない問題
補助金や委託事業の審査員などが地域内で準備できない問題があります。委託に手をあげる人が、そのジャンルで一番詳しい人だったりするので、審査員の人手の確保は大変そうです。大学の先生もNPOの運営まで詳しい人はいないですし、街づくりのジャンルでもそこまで現場に詳しい人はいないです。有識者枠ではありますが、事業経験が無い人だと難しいよなって、審査される側ではありますが、感じることはあります。これは地域で育てていく部分だと感じています。僕は経営者の仲間もいるので、その辺とのハイブリッド審査員とかやってみても面白いかもしれないですね。

7.まとめ

20年もやっているので、徐々に良くなってきているなと感じつつも、地域の課題は広がり、担い手は減っていくのでNPO中間支援がもっと強くなっていかないと、地域の生きる力はどんどん下がってしまうだろうなと感じています。自社の取組だけでなく、エリアの施策としても考えていくのが僕の役割になってくるのかなと、書きながら思いました。

今日のおまけは、確定契約になった辺りや、県のセンターの予算の獲得がうまくいった話などを書いていこうと思います。

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