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静かに息を吐き、覚悟を決めた #2
その方は、わたしの一言をきいてから、目をつぶりました。その目からはぽたぽたと雫のように涙が零れ落ちていました。
ここまでは初めてというくらいの沈黙のあと、ぽつりぽつり、心を伝えてくださいました。
次にお会いできる可能性はありません。ご本人が希望して足を運んでくださらない以上、わたしから次のお約束を取り付けることができないところにいらっしゃいます。
なのに…わたしはカウンセリングを始めたのです。
焦ったかもしれません。目の前でおぼれていらっしゃるように見え、そのすぐ後ろに浮き輪があるようにみえたわたしは早々に「○○が問題のようですね」とお声がけしてしまいました。
早急でした……
零れ落ちた涙、かき回された心、
その方はそれを引きずって帰っていくのでしょう。
わかってはいながら、当たり障りないカウンセリングでお返しするわけにはいかない気持ちもありました。
いえ、わたしの中で「なんとかしてあげたい」というカウンセリングに持ち込んではならない傲慢さが頭をかすめたのです。
偽善者?
最後の沈黙のあと、彼は何度も何度も何度も気持ちを言いなおそうとされました。きっとわたしを傷つけないような言い回しを選んでいたのでしょうね。
わたしはその間、
ぐっと目を閉じていました。その方にわからないように息を吸い、ゆっくりと吐きながら覚悟を決めました。
きっと批判を受けるであろうな、と。
どんな批判を受けても構わないつもりでした。
覚悟を決めていました。
批判はありませんでした。
しかし、責めていただいた方が気が楽だったかもしれません。
わたしがいじってしまったその方の心、
いまごろ、どのような経過をたどっているでしょう?
また、お会いしたい方のひとりです。