怖い恋【1】

怖い恋をしてしまった。
イヤ、愛かも知れない。
けれど、この恋はしてはいけないのだ。
つらい恋だ。

「あー育児からほんの少し解放される」
なんてバカみたいな事を言っていた。
そう私には夫も子供もいる。

すい臓を悪くして入院したのである。
入院当日、検査のためあっちだこっちだ回されていた。
検査前にたばこを1本吸おうと思って、喫煙所に行った。
「いったい何日、入院するんだろう？」
外は秋らしく紅葉が綺麗だ。

「こんにちは」
「こんにちは」
初めてしゃべったテイクの声は気分がいい。
「オレ、テイクと呼ばれているんだよ」
「私はマコと呼ばれてます」
「よろしく」
「よろしく」
怖い恋の始まり

「おなかがいたいなぁ。病室に戻ろう」
そのとき激しい痛みが襲い、倒れてしまった。
テイクはすぐに私を支えてくれて、ナースステーションまで連れて行ってくれた。
あまりの痛みでお礼もそこそこに別れた。

点滴を始めた。
その時、テイクが来た。
「どこが悪いの？」
「今、検査中なんだけど、すい臓をやられてしまったみたい」
「オレもだよ」
いろいろと病気の事など教えてくれたが、今私はトイレに行きたい。
「早く自分の病室に戻ってくれないかなあ」
私はただ
「うん、うん」
とうなずくだけだった。

夜、消灯過ぎると、どことなく喫煙所が人でいっぱいになる。
たばこを吸いながら、いろいろしゃべっていた。
「２歳の子がいると思えないね」
「うん、童顔だからかなあ」
ほんと楽しかった。
いつもテイクがいる。

続く…。