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[RIZIN]雷神番外地の印象に残った4カードを振り返る

①朝久泰央VS.YURA


©︎RIZIN FF

K-1VS.BDの構図となったこの一戦は白熱した3Rを見せた。

ざっくりした印象で言うと技術(朝久)対パワー(YURA)のぶつかり合いといった感じで、「上下に攻撃を打ち分ける上手さ」や「手数を出して試合を作っていく立ち回り」といった部分で優れていた朝久に対して、YURAの方は「一撃の破壊力」で朝久を上回っていたように感じた。

ただそこからも分かるようにYURAの方がストロングポイントの幅が狭く、良し悪しが極端になってしまうところがあり、今回の試合ではその良い部分と良くない部分が両方とも出るような内容になったのではないかと思う。

威力のある一発をヒットさせて朝久にダメージを与えるという点ではYURAは優れていたが、それを狙い過ぎるがあまり手数が少なくなり、打ち分けもあまりされていなかったので、後手に回っていた上にポイントでもリードされてしまうような展開を自ら作っていってしまったように感じる。

対する朝久はローやミドルにボディ打ちなど攻撃の起点を広く分けていたので、効かせるチャンスを作りやすく、一発を狙うYURAの防御意識の薄さを突くことも出来ていた。

パワーのあるYURAとの殴り合いの場面では危うさを感じるところもあったが、後半になるに連れてその感じも徐々に修正されてゆき、3R目では特に場数に伴う経験値の違いが差を作ったように感じた。

試合の結果を分けたあの三日月蹴りは、正にそういった経験値や対応力の差を示すような一撃になっていたのではないかと思う。

②野田蒼VS.篠塚辰樹


©︎RIZIN FF

歴然とした実力差を見せる形で野田を下した篠塚は、改めてストライキングの上手さを披露した。

野田はそんな篠塚のプレッシャーに圧されてしまい自分の展開を作ることが出来ず、篠塚の左のジャブに終始苦しめられることになった。

耐久力にも不安がある野田は篠塚の左をもらってダウンすると、思った以上のダメージを受けている様子を見せることになってしまう。

流石に左一本ということにはならなかったが、有効な攻撃という点ではほとんど左だけになっていたと感じるので、かなりの実力差があったことが窺える。

野田も余裕を見せる篠塚に何発か攻撃をヒットさせてはいたけれど、しっかりと効かせるまでには至っていなかったので、パワーにも差があったということを考えると、この2人は勝負をするにはあまりにもスペックが違い過ぎたと言わざるを得ないだろう。

試合後のマイクでMMAへの挑戦を宣言した篠塚は、その対戦相手にヒロヤを挙げている。

様々な分野に活躍の場を広げていく篠塚がMMA戦でヒロヤ相手にどんな展開を見せるのか、新たな期待が向けられる。

③細川一颯VS.宇佐美正パトリック


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こちらも実力差が如実に現れた一戦。

個人的にはプロと素人の差が一番大きく現れた試合だったのではないかと思う。

細川は宇佐美の打撃に具体的な対抗手段を示すことができておらず、プレッシャーに圧されてロープ際に追い込まれパンチをまとめられるという一方的な展開を要所で作られてしまっていた。

気持ち的な面でも押されていたように感じるので、その流れでボディに痛烈な一発を打ち込まれてしまうとなると、もうほとんど勝負にならなくなってしまう。

序盤からそれだけの差が浮き彫りとなっていたので、やはりプロと対戦するには相応のスキルが必要になるという当たり前の事実が改めて示されるような結果となったのではないかと思う。

しかしただの喧嘩自慢ではなく、しっかりとしたバックボーンを持った元格闘家のような存在が大半を占め、所属する選手の質が上がっていくようなことになれば、戦いの質も同時に求められるようになる可能性がある。

そうなってしまうとブレイキングダウンは結局他の格闘技団体と近しいカラーに収まっていくことになってしまうのではないかと思うので、団体カラーを残すためにも一定数の素人は必要になってくるのではないかと思う。

ただそうなると、やはり「プロに及ばない」という看板の安さを払拭することは出来なくなってしまうので、団体を大きくしていくことを考えるに連れてこのジレンマを抱えていくことになるのかもしれない、この試合はそんな印象も残る内容になっていたと感じる。

④安保瑠輝也VS.シナ・カリミアン


©︎RIZIN FF

観客が勝負論を持って楽しめるようなカードではなくなったこの一戦は、「雷神番外地」と銘打たれた大晦日イベントの一構成を担うシリーズの大将戦となっている。

安保の挑戦姿勢は素晴らしいものがあるし、ボクシングの技術も相当な練習を積んで来たことが分かるようなものになっていたと感じる。

しかし、試合のカード自体がこういったお祭り要素の入った組み合わせになってしまうと、その実力をしっかりと評価し切れない側面が出て来てしまう。

カリミアンも今回のようなルールでは自分の持つ強みを発揮し切れかなったのではないかと思うし、安保もキックルールで通常の試合を行うとなったらカリミアンを退けることは困難になるだろうと思われる。

こういった具合にたらればが出やすくなってしまうので、本当のところが分かりにくくなってしまうところがある。

ただその上で安保は体格差を技術とスピードでカバーし、試合に勝ってみせた。

カリミアンは効いていないアピールや口での挑発が目立ったが、カリミアンがこの試合でやるべきことは安保のあの戦い方をより優れた体格で捻り潰すことだったと思うので、安保を捉えることが出来なかった時点でやはりカリミアンの負けなのだろうと思う。

逆に言ったら安保はこの体格差で戦っているので、効かせることを目的にする必要はなく、どんな形であっても「勝つ」ことが出来ればそれでいいところがある。

そういった意味で言うとやるべきことをやったのは安保の方であり、カリミアンはそんな安保を止めることが出来ず、安保のスピードと技術に振り回され「反則」という幼さ満載の自分のカラーに逃げることしか出来なかった。

正直ボクシングでは技術的な面でほとんど勝負になっていなかったと感じるくらい安保の動きの方が良かった。

ライアン・ガルシアとの対戦を見据えてしっかりと準備していたことが窺える仕上がりになっていた思う。

「雷神番外地」はこの試合で締め括られ、結果的に対抗戦は4勝3敗でBD側が多く勝利を奪う結果となった。

この大将戦には対抗戦の勝負を分ける意味もあったので、内容がやや茶番化してしまったのは残念に感じる部分はあるが、迫力はあったので面白さ感じることが出来る一戦にもなっていたと思う。

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