ある意味RIZINらしいカード、福田龍彌VS.芦澤竜誠
この面白半分で実力者を消費するようなカードは、ある意味RIZINらしい組み合わせになっていると言えるのではないかと思う。
大晦日のビッグイベントに出られるとなれば福田もオファーに応えるだろうし、ましてや負ける気などさらさらないだろうと思うので、芦澤をひねるだけで華やかな舞台に立ちファイトマネーも頂戴できるとなれば、福田も多少のメリットは感じていたのではないかと思われる。
しかし、ファイターとしての旨味は全くと言っていいほど無いので、福田からすればプラスになる要素がほとんど見当たらない一戦になっていると言っていいのではないかと思う。
キックボクシング出身の芦澤竜誠はMMAで3戦行い、2勝1敗となっているのに比べて、福田龍彌はDEEPで同時2階級制覇を達成している現王者であり、修斗でもフライ級のタイトルを獲得した経験を持っている実力者だ。
これだけでMMAファイターとしての価値や説得力が段違いであることがよくわかる。
話題性と盛り上がりを生むためなのかどうかは分からないが、正直このカードは釣り合いが全く取れていない。
芦澤の武器となるキックボクシングベースの打撃もMMAではまだほとんど評価されておらず、彼の一番の長所ですらまだハッキリとした性能示せていない状況。
キックからMMAへの転向が目立っているとは言え、それに見合う説得力を構築することが出来ていない以上、チャンピオンクラスの強者と実力を比べることが出来るような立場にはないと感じる。
もっと他に適当な相手はいくらでも居そうな気がするが、よりにもよってDEEPの2階級王者を当てがうというのは無茶苦茶が過ぎるのではないだろうか。
何故団体のチャンピオンが損をしなければならないのか、この一戦はマッチメイクの意図が明後日の方向を向いてしまっているとしか思えない組み合わせになっていると感じる。
これでは仮に芦澤が勝っても「まぐれ」という見方が付き纏い、逆に福田が勝てば「当然」という言葉で片付けられてしまう。
結果的にどちらも明確な評価を得ることが出来ないという空虚さを抱えているのもこのカードの問題点だと思われる。
ただ、その中でも大きなメリットを得ることが出来る状態にあるのは間違いなく芦澤の方になると思うので、冒頭でも触れたように福田にとってはデメリットだらけでこの試合をやる意味すら分からないほどなのではないだろうか。
それでも福田は大晦日の舞台に立つ選択をしており、まだまだMMAファイターと呼ぶには至らない芦澤との試合を承諾している。
実力が違い過ぎるので、もしかしたら福田はやりにくさを感じるかもしれないが、MMAの試合を展開すれば芦澤は全くついていくことが出来なくなってしまうだろうと思う。
なのでこの一戦は最終的にRIZINという大舞台で福田がその実力を改めて示すための戦いとなっていくのではないかと思うので、福田も多少なりのメリットは捻出することが出来るかもしれない。
芦澤はそのためのダシとして上手く活用されることになる可能性がある。
芦澤竜誠の今後に向けられる期待
芦澤はこんな飛び級のようなカードでMMAの試合を消化して行くのではなく、一つ一つ地道な戦いを積み重ねていくべきだろうと思う。
また、個人的に芦澤竜誠はMMAをやっていくに当たって打撃以外で「柔術のスキル」を磨いていくことが出来れば、将来的に面白いMMAファイターになるのではないかと感じている。
あの手足の長さと動きの柔らかさは柔術を活かすには持ってこいの性質だと思うので、そこに技術力がプラスされれば、サブミッションでフィニッシュを量産できる打撃出身のグラップラーとなることも可能かもしれない。
下のポジションからでも足を効かせることが出来そうだと感じるので、対応力が身に付けば意外と厄介なファイターとなってくる可能性もある。
そういった意味では今後に期待を持つことが出来るのだが、今はまだキックボクシングの選手なので、MMAの要素を感じられるのはまだまだ先になるのではないかと思う。
柔術やレスリングなどの組み技のスキルは特に習得に時間が掛かる分野になるので、芦澤が根気強く取り組んでいくことが出来れば、何年後かには変化を見ることも出来るかもしれない。
なので今回はとりあえずそこに期待することなく、福田がどんな試合展開を作り、そこに芦澤がどれだけ対応することが出来るのか、といったところに注目を向けていきたい。