[UFC]唯一可能性を感じさせる男
来年の1月に予定されているライト級タイトルマッチでランキング1位のアルマン・ツァルキヤンが王者であるイスラム・マカチェフに挑戦する。
この2人が試合を行うのはこれで2度目となっており、前回はマカチェフが判定で勝利を収めている。
当時のツァルキヤンはとても若く、UFC初参戦の試合でもあった。
結果的に0-3の判定で敗れてはいるが、テイクダウンなどこれまでマカチェフが許さなかった展開を作り出していたことから、将来的にマカチェフを倒すことが出来る可能性を感じさせていた。
実際にツァルキヤンは経験を重ねて成長しており、ベニール・ダリウシュやチャールズ・オリベイラといったライト級のトップファイターにも勝利を収め、ランキング1位の座に着いている。
そんなツァルキヤンが約6年の時を超えて再びマカチェフと激突する。
総合力で上回ることは出来るか?
ツァルキヤンはフィジカルが強く、強打も持っていてグラップリングでもハードに戦うことが出来る。
ただ前回の時点ではその技術で劣っており、マカチェフにコントロールを許す結果となってしまっていた。
しかし今回は前回ほどの差が生まれることは考えにくいため、よりツァルキヤンが詰めていくことが出来るのではないかと感じている。
その上でツァルキヤンがマカチェフの一手一手を丁寧に処理し、雑になる事なく勝つための試合作りを徹底していくことが出来るのかどうか、そこが肝心なポイントになってくるのではないかと思う。
マカチェフは「一発で仕留める攻撃」や「痛烈なダメージを与える攻撃」を効果的に仕掛けていくことに長けており、相手の脅威を取り除くための工夫も上手い。
なので身体的なスペックや技術だけでなく頭脳も含めた総合力で上回ることが出来なければ、仮にツァルキヤンが良い流れを掴んだとしても何処かで出し抜かれて、最終的に勝つところまで持っていくことが難しくなってしまうかも知れない。
そういった細かい部分も含めてしっかりと作っていくことが出来るかどうかで、ツァルキヤンのリベンジが成功するか否かの結果が変わってくることになりそうだ。
動的な力強さだけではなく冷静な組み立ても合わせて織り交ぜていくことが出来なければ、“絶対王者”を超えていくことは出来ないだろう。
難易度MAX、勝ち切ることの難しさ
マカチェフが一方的にやられる展開はまずないと思うので、仮にツァルキヤンがペースを握ったとしても大きく差が開くことはないだろうと思う。
そう考えると仮にそのまま判定まで持つれた場合ツァルキヤンは、かなり僅差の状態でマカチェフの仕掛けに耐えながらミスを犯すことなく攻撃を返してリードを維持していかなければならないことになる。
しかし、マカチェフの勝利に対する執念は最後の最後まで「倒す」意志を燃やし続け、その意識を高く保ち続けることになるだろうと思うので、それを試合が終わるまで上手くいなし続けるのは非常に難しいのではないかと思われる。
ツァルキヤンはスタミナが削れてくる後半のラウンドでも、その気迫とプレッシャーを受けながら5Rマッチを耐え抜く必要があり、さらにその上でリード守り切ることが出来なければ勝利を掴むことは出来ない。
そういったことを考えると、マカチェフに勝ち切るということが如何に難易度の高い作業なのかということを窺い知ることが出来る。
激しくぶつかれば後半に失速するのはマカチェフも同様だが、その状態でツァルキヤンはマカチェフよりも積極的に出ていく必要があり、逆転の目を掴ませない動きを最後まで取り続けなければならない。
もしくはダメージやコントロールで圧倒的に優位に立っておく必要がある。
どちらも難しいことに変わりはないが、成長したツァルキヤンはライト級の中で唯一それが出来る可能性があるファイターだと思っている。
これまで多くのファイターがマカチェフと戦い、展開の中で生まれる競り合いに負け、主導権を奪われる流れに落ち着いてきた。
しかし、過去にマカチェフからテイクダウンを奪い、らしくない状況を作り出してみせたツァルキヤンは、これまでのファイターが超えることが出来なかったポイントを超えていける可能性を秘めている。
ライト級の希望の星がマカチェフに主導権を渡すことなく最後までやり切ることが出来る展開に期待したいと思う。