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[ONE172]さいたまスーパーアリーナで大一番に臨む日本人ファイター①

ONE172の開催発表が日本のさいたまスーパーアリーナで行われた。

このビッグイベントのメインは武尊VS.ロッタン。

これで来年の3月に夢のカードが実現することになった。

このカードはもちろん大注目試合なので触れていきたいとは思うけれど、それよりも先に触れておきたい対戦カードがある。

それがアドリアーノ・モラエスVS.若松佑弥ONEフライ級王座決定戦だ。

ONEフライ級王座決定戦


©︎ONE Championship

若松はモラエスが王座に付いていた時に一度彼に挑戦しており、その時はギロチンチョークによる一本負けを喫し、タイトルを獲得することは出来なかった。


前回のタイトルマッチ


しかし、まだ若かった若松はそこから成長し、MMAファイターとしての厚みを増していった。

それによって、ストライキング以外の項目も伸ばされ、全体的な安定感を見せるようになっている。

そんな若松が改めてランキング1位のアドリアーノ・モラエスと王座をかけて対戦する。

前戦からの伸び代という部分ではモラエスよりも若松の方が大きいと感じる上に、若松と同様にモラエスも歳を重ね、いくつかの試合をこなす中でダメージも蓄積させていると思うので、状況的にもここで悲願が達成される可能性は十分にあるのではないかと思う。

サイズでもほとんど劣らず、打撃のパワーでは恐らく若松の方が上回っていると考えられるので、「技術」で遅れを取らなければリードを握っていくことも可能となるはずだ。

ただ5Rマッチには魔物が棲んでいるので、拮抗した接戦となった場合、これまでの試合や練習環境から得られる経験値などが僅かな違いを生み出し、際の部分で勝負を分けるような展開が生まれることになるのではないかと思う。

両者は人生のバックボーンも大きく異なるので、その辺りも影響してくることになるかもしれない。

またモラエスはここまで若松が戦ってきたファイターと違って、テイクダウンに頼らなくても上手く戦って行くことが出来るファイターであり、どこでも戦うことが出来る完成度の高いMMAファイターであるため、全体的に強い。

そんなモラエスから優位を取っていくためにも、得意のストライキング勝負では絶対に主導権を渡さないことが大切になってくる。

モラエスはスタミナにやや不安があると感じるので、機動力が低下し反応の鈍った後半戦で良い打撃を当てて行くことが出来れば理想的な勝ち方が出来るかもしれない。

打たれ強さという点ではお互いにそこまで差がないと思うので、どちらも当たれば倒れることになるだろうと思う。

しかし打撃の処理能力やクリエティブな発想という面ではモラエスが上回っていると思うので、持っている引き出しの違いを考えると、若松はなるべく早い段階でダメージを蓄積させていく必要があるのではないかと思う。

打撃の圧とダメージ(カーフやボディ)で「やれること・出来ること」の選択肢をどんどん削り、弱体化させて行くことが出来れば若松が勝てる可能性は大きく上昇することになる。

越えられない高い壁も低くすれば簡単に越えることが出来るので、それを可能にするだけの緻密な作戦と戦術の構築が勝利に繋がる大きな鍵となってくるのではないかと思う。

「守る」覚悟と「不退転」の覚悟


©︎ONE Championship

日本開催という地の利を活かせることに加えて、モラエスは「守る」ことでより強さを発揮するタイプだと感じるので、そういった意味でも王座を持っていない今はチャンスと言えるかもしれない。

だが、今のモラエスは「娘」というベルト以外の「守る」ものを授かっているので、ベルトの有無関係なしに「守る」力強さが増している可能性がある。

その上、モラエスは再戦に強いところもある。

その上で気になるのは、若松の「死んでもいい」という意志の持ち方。

個人的にこの破滅的とも取れるこのモチベーションは勝者のものではないと感じている。

これは「その先へ進んでいく」のではなく「終わりへと向かう」スタンスになっていると思うので、想いを強くすることは出来るだけれど、どうしても丁寧さと安定感に欠けたものになってしまう。

強い覚悟は確かに大切なのだが、「強すぎる」と逆に脆くなってしまう部分があると感じるので、多少なりのポジティブな余裕も必要なのではないかと思う。

若松は試合の準備期間へと入る際に、そういった要素をむしろ全て取り除く方向にシフトしていくような考えを見せているので、その辺りに危うさを感じる部分がある。

過酷な環境へと赴く宇宙飛行士に求められるのも「絶対に生きて帰る」という強い意志になるので、やはりポジティブな意識というのは厳しい状況に必要な要素となるのではないかと思う。

そういった意味ではより勝者に近い状況に身を置いているのはモラエスの方になるのかもしれない。

なので負ければ終わり、といった後を断つ覚悟の持ち方で「不退転」の意志を示している若松の追い込み方は非常に気になるところではある。

ただそれが、若松にとってベストパフォーマンスを生み出すための最適なやり方になっているという可能性を信じて応援していきたいと思う。

そしてONEフライ級の新たな時代を切り拓いていく新チャンピオンが、日本人ファイターであるということを期待しながら3月23日を待ちたいと思う。


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