[UFC309]注目試合の振り返り[3試合]
①老いが滲んだヘビー級タイトルマッチ
(C)ジョン・ジョーンズVS.(8)スティぺ・ミオシッチ
※ジョーンズの3R KO勝利。初防衛成功。
ミオシッチは引退を表明。
長いブランクと年齢による衰えからパフォーマンスが大きく低下したミオシッチをジョーンズが打撃で攻めてKO勝利を獲得した。
攻撃に対する反応やハンドスピードも落ち、もはやタイトルマッチを行える状態を維持できていなかったミオシッチは、ジョーンズからアスピナルを遠ざけるためのスケープゴートのような役割を担っていたのではないかと感じる。
それぐらいミオシッチは衰え、気迫もなく闘志も萎んでいるように見えた。
まるで引退するための義務を果たすような、そんな様子に見えたミオシッチはジョーンズにやられるためのタイトルマッチに臨んでいたように感じられた。
延期によってモチベーションや体力が低下していたというのもあるかもしれない。
そんな状態で行われたタイトルマッチでジョーンズはKO勝利を収めたが、相手は引退間近でブランクのある8位のファイター、そうなると勝利しても何か特別に評価することが出来るという訳でもないので、結果的にやや空虚なタイトルマッチになってしまった印象。
腰に巻かれたヘビー級のベルトが放つ輝きは少しで霞んでいるようだった。
②「老い」を跳ね返す鉄人、ジム・ミラー
※デイモン・ジャクソンに1R一本勝ち(ギロチンチョーク)
ジム・ミラーは2021年のエリック・ゴンザレス戦から連勝を重ね、2024年のボビー・グリーン戦で敗れるまでにUFC5連勝を記録していた。
また驚くことに2021年の段階でミラーはすでに38歳を迎えている。
しかもライトやウェルターといった階級でその活躍を見せているのだから恐ろしい。
打撃のパワーやタフな勝負に応じるだけの気力も未だ健在で、歳を重ねてもなお激しい戦いを繰り広げている。
ただ流石にスタミナ面の衰えは免れず、後半のラウンドで明らかに失速するところはあるが、それでも完全にストップしてしまう訳ではなく、怖さを与える攻撃を要所で仕掛けていく勢いは残している。
そんな鉄人・ミラーはレスリングやブラジリアン柔術をバックボーンに持つので、グラップリングに対する能力も非常に高い。
今回のジャクソン戦のギロチンチョークもジャクソンがタイミング良くタックルに入ったところに合わせたカウンターであり、対処能力の高さと反応の良さがフィニッシュを生み出したと言える。
消耗戦に持ち込まれたらどうなるかは分からないが、1Rだけの動きを見ていると41歳にはとても思えず、まだまだ活躍することが出来る力が残っていると感じる。
次戦以降も、「老い」なんか関係無いと言わんばかりの活躍で再び連勝を築き上げていくのだろうか。
鉄人の今後に注目だ。
③改めてトップクラスの実力を証明したオリベイラ
※チャールズ・オリベイラの5R判定勝ち
チャールズ・オリベイラとマイケル・チャンドラーによる再戦はオリベイラが圧倒する内容で締め括られた。
前戦はオリベイラが逆転TKO勝利を収める劇的な試合展開となったが、今回は全体的にオリベイラが優位に試合を進めてしっかりとチャンドラーを攻略する内容となった。
相変わらずパンチをもらいやすいオリベイラではあるが、ムエタイベースの的確なストライキングに加えて強力な柔術スキルは健在で、何度もチャンドラーを追い詰めている。
チャンドラーはフィニッシュを免れたものの、危ない場面や攻め立てられる展開が目立ち、厳しさを感じる内容だった。
一発の威力を纏ったボクシングは強力ではあったが、オリベイラの柔術スキルの前に全く歯が立っていなかった上に、打撃も見切られてしまっていたので、スタンド・グラウンドどちらの状況でもオリベイラにリードを握られてしまったチャンドラーは防戦一方となる状況が多く見られた。
これを見るとチャンドラーがここからライト級の上位ランカーに食い込んでいくのは少し難しいのではないかと感じる。
ただオリベイラも集中力を欠いたり、重要な場面で雑になってしまったりと、チャンピオンクラスと当たった時に致命的となるようなミスの犯し方をしているので、ここが修正されないければマカチェフに勝つことは夢のまた夢となってしまうだろう。
ツァルキヤンとマカチェフが対戦した後に王座へと挑戦する権利をオリベイラが得ることが出来たとしても、今回の5Rのような崩れ方をしてしまうとなると、ツァルキヤンにもマカチェフにも勝つことは難しいのではないかと感じる。
今回は完勝となったオリベイラだが、王座を望むということを考えると課題が残る一戦となったのではないだろうか。