コントロールよりもダメージ(打撃)が重視されるこれからのMMA
11月から導入されたMMAの新ルールによって「グラウンド状態に対する定義」と「肘による攻撃の角度」の項目に変化が生まれた。
以前は両手や片手を床につけばグラウンドポジションとみなされ、膝や蹴りによる攻撃に制限が掛けられていたが、新たに定義されたグラウンドポジションは「手や足以外の身体の部位が床に触れている状態」となっている。
つまり以前と比べて「より低い姿勢」を取る状態にならないとグラウンドポジションとみなされないため、膝や蹴りによる攻撃が可能となる状況が広がったことになる。
また、これまでは禁止されていた「垂直肘による攻撃」の項目が削除されたことで肘による攻撃角度の制限がなくなった。
ただ「後頭部」や「脊椎」への攻撃は禁止というルールはこれまで通りで変更はない。
この角度の制限が解除されたことで、大ダメージを与えることが出来るチャンスの幅が拡大していくことになる。
ジョン・ジョーンズがこの変更に伴い過去の反則負けの記録を取り消すことをデイナ・ホワイトに提案しているが、それを認めてしまうと過去の3点ポジションによる反則や失格といった事案も全て変更しなければならなくなるだろう。
そもそも現行のルール変更はこれからの試合に適用されるものであって、当時のルールで裁かれた試合の結果に影響を与えるものではない。
何れにせよそういった変更の影響を受け、これからのMMAはより過激な攻撃性を帯びていくことになるだろう。
高まる打撃の評価
フィニッシュへと繋がりやすい攻撃方法に幅が持たれたということは、いわゆる「塩漬け」のような戦法が評価されなくなったことを示しているとも言える。
近年はUFCの試合でもコントロールタイムを稼いだ選手より、ダメージを与えた選手の方が評価されるケースが多く、例え抑え込まれても有効な攻撃をチャンスを作った方にジャッジの支持が傾くようになっている。
流石に手も足も出ない程に抑え込まれて何も評価出来ない状況であれば、コントロールした選手に勝利が与えられることにはなるとは思う。
しかし、現在のMMAは根本的に「相手を倒すアクション」に強いフォーカスが当てられているので、スポーツ的な側面よりも「格闘」の本質的な要素を重要視する体制になって来ていることが分かる。
なので今後は「上手く戦うファイター」よりも積極的に「相手を倒しにいくファイター」の方が高く評価されるようになっていくだろう。
そうなればMMAのどの局面でも「打撃を加える」ということが重要となり、どの展開でもより攻撃的になる必要が出てくる。
レスリングや柔術は相手を制圧することに長けているが、これからはそこに効果的なパウンド攻撃を織り交ぜていくことがマストになってくるはずだ。
それを考えるとグラップリング技術は今後、打撃でダメージを与えていくための手段として活用される傾向を強めていくことになるのではないかと考えられる。
そういったフィニッシュチャンスの拡大に伴う打撃の評価は、組み展開で劣勢の状態でもスタンドの打撃勝負で競り勝つことが出来る可能性を高めている。
もちろんMMAなので全部が出来ることが最重要ではあるけれど、打撃のスキルやその使い方次第で逆転勝利を掴める余地が以前よりも出て来たのではないかと思う。
また、これによって戦術的な見方も大きく変化してくると思うので、ルールの適用が馴染んだ頃に試合展開はどう変わってくるのか、そこに注目が向けられる。
「戦い」の色を強めるMMA
11月からスタートしているこのユニファイドルールの変更はMMAに「動き」と「過激さ」を促し、「戦い」の要素をより強く反映させる形で作用している。
観ている方としては面白くなるので大歓迎だが、ケージの中で戦うファイターたちは警戒すべき要素が増えたことで、より危険な状況に対応していかなければならなくなっている。
これは競争をより激しくさせるため危険を伴うが、同時にファイターの練度を上昇させていくことにも繋がるため、UFCレベルの団体の中からもさらに対応力のあるファイターが育って来ることになるのではないかと思う。
今後UFCなどの団体でも膝などによる強烈な攻撃が打ち込まれるシーンは増えてくることになると思うので、試合の組み立て方や勝ちパターンの作り方などにも変化が生じてくるかもしれない。
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