見出し画像

ヘビー級に求められるスピードとキレ

階級性のスポーツの中で最重量となるヘビー級はサイズや重さの違いはもちろん、パワーも並外れた階級になっている。

なので、一発当たれば倒れるだけでなく、ガードの上からでも十分なダメージを与えていくことが出来るのもこの階級の特徴と言えるのではないかと思う。

しかし、ヘビー級のファイターはその恵まれた体格とパワーを持つが故に、MMAという競技の中でもスキルの偏りが目立つ傾向にある。

「一発の威力」という劇薬にファイター自身が魅せられてしまい、MMAファイターとしてのバランスを欠いてしまっているのだ。

それでもある程度は勝つことはできる。

ただ他の階級と同様に、一定のレベルを超えてくるとその「偏りのあるスキル」では通用しなくなるケースが目立つ。

特にヘビー級は長所と短所が極端に表れる傾向にあり、パワーなどの威力は脅威的な武器となるが、その分スタミナの消費は半端ではない。

自身の重量がグラウンド状態からエスケープする際の足枷となることも多々ある。

なのでヘビー級といえど王座を目指すのであれば総合力を高める必要があると考えられる。

そして「その広い引き出しを身に付けた上位クラス」の中でさらなる差別化を図っていくことが出来る要素となるのが「スピードとキレ」なのではないかと思う。

「速い」というアドバンテージ


©︎PFL

その「スピードとキレ」を活かして他のヘビー級ファイターたちに差を付けていると個人的に感じるファイターが2名いる。

それがUFCのトム・アスピナルと、Bellatorのワジム・ネムコフだ。

この2人はパワーとスピードを併せ持ち、ヘビーという大きな階級の中でも極端にならずタフな戦いを行うことができる。

ヘビー級でありながら比較的シャープで絞られている両者は動きにキレがあるので、打撃に対する反応も良く、被弾のリスクを抑えながらハンドスピードで一歩上をいくことも出来るので、打撃が交錯する中で先に攻撃をヒットさせることが出来るという強みを持っている。

それこそが「スピードとキレ」を持ったファイターが得ることが出来るアドバンテージなのではないかと思う。

加えてグラップリングの展開でも反応や対処は素早くなる。

また、絞れていないヘビー級のファイターはラウンドが進むほどに動きが悪くなってくるので、ラウンドを重ねるごとにそのアドバンテージは大きくなっていくと思われる。

そのため仮に優れた能力を持っていたとしても「速さ」を生み出す基礎がないファイターは、後半で差を付けられてしまう可能性が高い。

なのでこれからは技術と身体的な機能で差を付け、そこに戦術を織り交ぜながら戦っていくことが出来るヘビー級のファイターが一歩先をいくことになるのではないかと思う。

現にアスピナルはUFCヘビー級の暫定王座を持ち、ネムコフはPFL VS. Bellatorで行われたヘビー級の一戦で勝利し、スーパーベルトの獲得に成功している。

岐路に立つヘビー級ファイターと王者


©︎Getty Images

今後のヘビー級は「その能力を広く活かすことが出来るファイター」「そうでない者」で大きな差が出てくることになるのではないかと思う。

それはヘビー級での戦績が浅いジョン・ジョーンズにも言えることだろう。

王者ではあるがヘビー級に転向してからまだ一戦しか行っていないジョン・ジョーンズは、進化するその流れに対抗していくことが出来るのか。


Josh Hedges/Zuffa LLC/UFC

次戦で予定されているミオシッチとの防衛戦もジョーンズの怪我で延期され、すでに全盛期を過ぎているミオシッチはさらに待たされた上でこのタイトルマッチに臨むことになる。

なので、ジョーンズがこの試合から得られる説得力はそこまで無いのではないかなと思う。

フランシス・ガヌーとの戦いが行えなくなった以上、ミオシッチの次に控える暫定王者のアスピナルがヘビー級王者のジョーンズを試す存在となるだろう。

そこで初めてジョーンズは「進化していくヘビー級」の中で王者たる存在であるのかどうかを示すことが出来るのではないだろうか。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集