[ONE] 野杁正明のデビュー戦
K-1 WORLD GPで二階級制覇を成し遂げている野杁正明のONE Championshipデビュー戦が行われた。
対戦相手はキックボクシングのフェザー級ランキング3位となっているシッティチャイ・シッソンピーノン。
デビュー戦で大物との対戦カードが組まれるところから野杁の日本での成績が評価されているような印象を受けた。
ここで勝利することが出来れば一気にタイトル戦線に食い込んでいくことが可能となるだろう。
しかし、キックやムエタイという競技において世界をリードするレベルにあるONEの舞台で、トップレベルに食い込んでいくことは容易ではない。
攻めあぐねた野杁と、上手くいなしたシッティチャイ
今回、野杁はいつも通りの試合展開を見せ、新しい舞台に飲まれることもなく自信を持って臨んでいるように見えた。
しかし、その「いつも通り」が主導権を握り切れなかった要因となってしまっていたのではないかと感じる。
ジリジリと圧力を掛けることで距離を詰め、ボディなどの打撃をまとめていくことで主導権を奪っていく野杁は、シッティチャイに対しても圧力を強めていった。
ただ、今回の試合はケージで行われていた為に、コーナーに詰めて逃げ道を塞ぐこような方法は取れず、追い詰めてもサークリングで脱出し再び距離を取ることが可能になってしまうところがあった。
それに加えて、迫る野杁を迎撃する打撃を打ち込むのが上手かったシッティチャイはケージを背負いながらも細かい打撃を野杁にヒットさせることが出来ていたので、野杁はシッティチャイをしっかりと捉えることが出来ないまま、ただポイントを失っていく流れに飲まれていくような展開に陥ってしまった。
手数と有効打で劣ったままシッティチャイに上手く試合を運ばれてしまった野杁は、脅威を与えるような明確な見せ場を作ることも出来ずに判定で敗れる結果となってしまった。
新天地で求められるハングリー精神
ONEのデビュー戦で黒星を喫することになってしまった野杁だが、新天地となる新たな団体で戦うとなると、その舞台をホームとするべく一からまた築き上げていかなければならない。
その為には、既存のファイターを飲み込んでしまうほどの勢いや爆発力が必要となる。
チャレンジャーとなる立場に変わり、力強さを示す必要がある新参者のファイターが、以前と同じ「いつも通り」のやり方で臨んでしまっては、壁を越えるために必要な出力を生み出すことが出来ないため、団体の壁に跳ね返されてしまうといった結果に収まり易くなってしまう。
なのでやはり新天地で大きな勝利を挙げるためには、動揺を与えるほどの獰猛な「ハングリー精神」が必要なのではないかと感じる。
今回のシッティチャイ戦でも、いつも以上の手数でアグレッシブな展開作りを見せていたらシッティチャイを落ち着かせることなく、もっと相手の中に入っていくことが出来たかもしれない。
カーフやボディにダメージを蓄積させることには成功していたので、あともう一押しとなる部分を埋める攻撃の展開を次戦では見てみたい。
強豪揃いのフェザー級
日本で活躍していた時以上のパワフルさが求められる上に、ONEキックボクシング・フェザー級には世界トップクラスの強豪が名を連ねている為、タイトルを目指す位置まで行くのにも相当過酷な道のりとなることが予想される。
K-1の舞台でもその強さを知らしめたチンギス・アラゾフがベルトを持っているフェザー級では、スーパーボンが暫定王者となっているためランキング1位は空位となっているが、2位にマラット・グレゴリアン、3位にシッティチャイ・シッソンピーノン、4位にタワンチャイ・PK・センチャイ、5位にジョルジオ・ペトロシアンとなっており、この並びを見ればフェザー級がどれだけ攻略難度の高い階級であるのかが分かる。
黒星発進となってしまったが、今後野杁がこのランキングを駆け上がっていく活躍を見せ、バンタム級で活躍する秋元に続いてフェザー級で存在感を放つ日本人ファイターとなることが出来れば、日本キックボクシングの未来をさらに切り開いていくきっかけにもなってくると思うので、これからの活躍に期待したい。