消えゆく切実な想いを抱えた秋の歌:赤黄色の金木犀/フジファブリック
2日連続で秋にまつわる曲紹介の反応が思いの外良かったので、調子に乗ってもう一曲ご紹介。
比較的有名かもしれないが、秋と言えばやはりこの歌は外せないだろう。
出だし数秒でエレキギターが奏でる哀愁漂う秋の音色。ロックバンドでは珍しいシンセサイザーが秋の情緒感を醸し出す。そして志村さんのどこか投げやりな声が、やるせない心情を引き立たせる。
秋にまつわる曲であれば、私はこの歌が一番好きなのかも知れない。
もう会えない『あなた』にもし会えるとしたら、何を伝えよう。そんなこと起こるはずが無いことは分かっているけど、それでも伝えたい想いは過ぎゆく季節の中でも、密やかにずっと持っていた。
それでもいつの間にか、あなたに抱いた切実な想いはだんだんと薄れていく。あの時あなたがくれた言葉ですら、知らず知らずのうちに何も感じなくなっていく。
まるでいつの間にか影が伸びていた事で、秋への移ろいを感じたように。
あなたはもう手の届かないところに過ぎ去ってしまった。この気持ちですら、あなたに伝わる事は無いだろう。
そして自分以外の世界は移ろいゆき、切実な想いを胸に秘め続けようとする自分を許さない。
不意に鼻をくすぐった赤黄色の金木犀の香りですら、私の切実な想いを薄めるかのように。
もう会えないあなたへの切実な想いすら、やがて消えてしまう。
そんなことを心の奥底で分かってしまい、自分でもどうしようもないやるせなさに襲われて、自然と歩くスピードを上げてしまう。
そんな帰り道。
以上が私の勝手な解釈ですが、移ろいゆく秋を背景に変わりゆく心のやるせなさを紡いだ、ある意味リアルな歌。
私も深く共感しつつ、やっぱりそうなるよねと少しだけ安心感を覚えた。
数多くの忘れたくない私が抱いた切実な想いも、いつの間にかどうでもよくなったよ。
そしてもうすぐ、この歌を作ってくれたバンドボーカルの志村さんの命日。
ロックの神様に気に入られると、30才まで生きられないのは本当なのかもしれない。
確かに、志村さんはロックの神様に愛された天才だった。
それでもね。早すぎるよ。ほんと。