とび

小説を書いています、3タイプ構成です。【短編集】【長編集】と【異形者達の備忘録】これ等…

とび

小説を書いています、3タイプ構成です。【短編集】【長編集】と【異形者達の備忘録】これ等を、マガジン収録したい(進行中)。 2024の恋愛小説部門に、ラストダンスを応募しました。一世一代の、恋の話!なのだよ、読んでみて下さい。

記事一覧

連載小説 サエ子 第1章

川釣り 俺の唯一の趣味が釣りである。最近川釣りにハマってしまって、休みの前日は夕方から寝て、夜中に支度を整えて車を出すのだ。夜の高速を飛ばし、お気に入りのラーメ…

とび
1日前
28

ショート アトリエ

近所にアトリエがある。懐かしくて覗いてみた。三階建てのビルで、クロッキー・デッサン教室の張り紙がある。教室と言うからには先生が居る。いかにも美術の先生といった風…

とび
8日前
40

異形者達の備忘録-37 

卒業 高校3年生になると受験が目前に迫り、自然とクラブ活動からは遠ざかる。冬休みも過ぎ、ワンゲル部も2年生の新部長を中心に活動している。3年生が、頻々に顔出しす…

とび
2週間前
41

ショート 思い

俺には歳の離れた弟がいる。母親違いだ。実母は俺を産んですぐ他界し、父子家庭で育った。俺も大学からは、家を出て、奨学金とアルバイトで、一応独立をした。その頃、親父…

とび
2週間前
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ショート 恐怖

うっかり帰りが遅くなってしまった。金欠病の俺は、ボロアパートから追い出され、やっと見つけたボロボロアパートに引っ越して1ヶ月経った。仕事もあるし、部屋も確保出来…

とび
3週間前
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異形者達の備忘録36

メタバースと明晰夢 私は女子高生のユリ、同級生の京子と、メタバース体験教室に1週間行って来た。仮想空間は面白かったし、自分をアバターとして登場させるのも面白かっ…

とび
1か月前
42

ショート 三男坊

俺の家は大きな農家で、長男も次男も農大出て、農業を継いでる。親父は、離村する農家が出る度に、その農地を買い増して行った。俺が未だ中坊だったころは、村の殆どの土地…

とび
1か月前
42

ショート 黒曜石のナイフ

フロアは、パーテーションで仕切られ総務部と経理、営業に分かれていた、20人程社員が居て、忙しいながら働き易い職場である。 6月の半ば、中途入社の社員が紹介された。…

とび
1か月前
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異形者達の備忘録-35

ヤドカリ 秋の夕方、駅前通りの銀杏並木が夕日に映えて、すっかり黄金色だ。 私は今月のお小遣いを手に、商店街の本屋に居た。レジに並んでいると、奥から知った顔が出て…

とび
1か月前
42

ショート シルバーニャ・ファミリー

私は70歳のお婆さんです。長い教員生活で、お付き合いした人も居ましたが、結局定年まで勤めてしまい。退職後も資格を生かして働いていたのです。親の介護も終わり、父の愛…

とび
1か月前
36

ラスト・ダンスその5 最終章

パピヨン 卒業式の朝、俺は父、母、妹に別れを告げた、玄関先で深く頭を下げ、カバン一つリュック一つ、振り返らずに学校へ向かった。今夜からは寮に住む。1人部屋なのは…

とび
2か月前
36

ラスト・ダンスその4

分かれ道 田中が空手の大会に出場する。その日、俺は応援には行かない、全国一斉模擬試験の日でもあったから、ここでトップ10位以内に入れば、奨学金が受けられるのだ。そ…

とび
2か月前
36

ラスト・ダンスその3

修学旅行-告白 学年が変わって、俺たちは、ヨシオ・ツヨシと呼び合っている。ヨシオは、黒帯を取得し、空手部の部長になった。在学中に県大会優勝を目指して連日空手三昧…

とび
2か月前
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ラスト・ダンスその2

団扇(うちわ) 夏休み前、中学校での恒例行事がある。走っても徒歩でも、峠を二つ超えて連山のお守りを貰ってくると言うもの、自転車NGだった。 当初、俺は不参加にして…

とび
2か月前
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ラスト・ダンスその1

あらすじ 寄らば大樹の陰で、意識した人、寄ってみたら、その大樹に心惹かれてしまう、一緒に居られれば良い筈なのに、クルクルと踊る相手は別の人、それで良い筈なのに翻…

とび
2か月前
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ショート 相談相手

洋子は、買い物が入ったレジ袋を力任せにトートバックに押し込んだ。ちくわと魚肉ソーセージ、長ネギで、今日の買い物は終わり、パートへ行って、先輩のレッスンへ行って、…

とび
2か月前
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連載小説 サエ子 第1章

連載小説 サエ子 第1章

川釣り

俺の唯一の趣味が釣りである。最近川釣りにハマってしまって、休みの前日は夕方から寝て、夜中に支度を整えて車を出すのだ。夜の高速を飛ばし、お気に入りのラーメン屋で夕食を取る。そして、真っ暗な山道を駆け上り、夜明けとともに、上流の駐車場に到着、お気に入りのポイントまでは徒歩移動だ。

その日、腹ペコで高速を走っていると、携帯が鳴った。時間が時間だ。イヤな予感しかしない、俺は路肩に車を止め、すぐ

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ショート アトリエ

ショート アトリエ

近所にアトリエがある。懐かしくて覗いてみた。三階建てのビルで、クロッキー・デッサン教室の張り紙がある。教室と言うからには先生が居る。いかにも美術の先生といった風貌の老人が教えている。教室には中学生からシニアまで居る、時節柄か、圧倒的にシニアが多い、ゆっくり見ていたら、絵の具まみれの白衣を着た青年が、「描いてみませんか? やってみると面白いですよ」と声をかけて来た。「ありがとうございます。学生時代を

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異形者達の備忘録-37 

異形者達の備忘録-37 

卒業

高校3年生になると受験が目前に迫り、自然とクラブ活動からは遠ざかる。冬休みも過ぎ、ワンゲル部も2年生の新部長を中心に活動している。3年生が、頻々に顔出しすると、返って邪魔になろうというものだ。暇を持て余した私と京子は、放課後、いつも駅前の公園で夕方まで過ごしている。受験勉強? 勿論やってる。志望校に受かる自信だってある。ただ私たちの進む方向は全く違った。京子は外科医、私は自然科学者だ。これ

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ショート 思い

ショート 思い

俺には歳の離れた弟がいる。母親違いだ。実母は俺を産んですぐ他界し、父子家庭で育った。俺も大学からは、家を出て、奨学金とアルバイトで、一応独立をした。その頃、親父はギリギリ40代後半で、出来れば、親父にも幸せな出会いが有って欲しいと思っていた。

大学2年生の春頃、親父から電話があり、曰く、「急な事ですまんが、再婚する事にした。まぁ、腹に子供が居てな、結婚式はしないよ」と言うのだ。腰を抜かしたよ、で

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ショート 恐怖

ショート 恐怖

うっかり帰りが遅くなってしまった。金欠病の俺は、ボロアパートから追い出され、やっと見つけたボロボロアパートに引っ越して1ヶ月経った。仕事もあるし、部屋も確保出来たで、申し分ないのだが、仕事先からアパートまで1時間半ぐらい、これだって、全く問題ないのだ。ただ一つ問題は道だ。

最寄駅から徒歩15分!この道が怖いのだ。田舎の無人駅で、駅から線路に沿って細い道があるのみ、片側は線路側で緑色の高い金網が続

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異形者達の備忘録36

異形者達の備忘録36

メタバースと明晰夢

私は女子高生のユリ、同級生の京子と、メタバース体験教室に1週間行って来た。仮想空間は面白かったし、自分をアバターとして登場させるのも面白かった。その空間でのゲームも目新しくて、面白かった。でも、次回続きをやろうと言う気にはならない、当初22名居た受講生も私達2人のみになってしまった。

夏休みだし、両親は旅行中だし、京子は私の家に連泊している。

夏休みの研究課題をメタバース

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ショート 三男坊

ショート 三男坊

俺の家は大きな農家で、長男も次男も農大出て、農業を継いでる。親父は、離村する農家が出る度に、その農地を買い増して行った。俺が未だ中坊だったころは、村の殆どの土地が実家の所有地だったと思う。俺は親父の兄弟の、末っ子の一人息子だった。震災で家族も家も無くして、学校に居た俺1人が残されてしまった。

そんな時、飛んで来た親父は、すぐ俺を戸籍に入れ、俺は三男坊となった。だから次男とも親子ほどの年齢差がある

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ショート 黒曜石のナイフ

ショート 黒曜石のナイフ

フロアは、パーテーションで仕切られ総務部と経理、営業に分かれていた、20人程社員が居て、忙しいながら働き易い職場である。

6月の半ば、中途入社の社員が紹介された。安田美津子と言う名前で、今時珍しく化粧っ気がなく、小柄で大人しそうだったのだが、初日からやらかした。書類を持って立ち上がった社員と、後ろを通りかかった彼女がぶつかりそうになった。瞬間!【ギャーー】耳を劈く様な悲鳴をあげた。超大音量である

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異形者達の備忘録-35

異形者達の備忘録-35

ヤドカリ

秋の夕方、駅前通りの銀杏並木が夕日に映えて、すっかり黄金色だ。

私は今月のお小遣いを手に、商店街の本屋に居た。レジに並んでいると、奥から知った顔が出て来た。背後から「あら、隆二(りゅうじ)さんお出かけ?すぐに晩御飯よ!」「すいません、チョットそこまで」そう言ってすれ違った。「こんにちは」と声をかけた。すると彼は、一瞬驚いた顔を向けて。ペコっと頭を下げて出て行った。

帰宅後、京子に電

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ショート シルバーニャ・ファミリー

ショート シルバーニャ・ファミリー

私は70歳のお婆さんです。長い教員生活で、お付き合いした人も居ましたが、結局定年まで勤めてしまい。退職後も資格を生かして働いていたのです。親の介護も終わり、父の愛犬だった秋田犬のタロを連れて、将来ドッグランに出来そうな広い敷地の、この家を買いました。家は二階建ての小さな物ですが、一人者にはこれで十分。

ですが、問題はありました。敷地内に建つ古い木造のアパート。見学時にはてっきり廃墟だと思った。不

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ラスト・ダンスその5 最終章

ラスト・ダンスその5 最終章

パピヨン

卒業式の朝、俺は父、母、妹に別れを告げた、玄関先で深く頭を下げ、カバン一つリュック一つ、振り返らずに学校へ向かった。今夜からは寮に住む。1人部屋なのは嬉しい、アルバイト探しは急務だ。物理的にボッチだから、絶対金が頼りとなる。ギッと、眉を上げるが、心中は、今でも、【大丈夫かオレ!】で一杯だ。本当は、何もかもが怖い!でも後ろの道は、自分で閉じて来たのだ。

学校では、校長・教頭・担任の先生

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ラスト・ダンスその4

ラスト・ダンスその4

分かれ道

田中が空手の大会に出場する。その日、俺は応援には行かない、全国一斉模擬試験の日でもあったから、ここでトップ10位以内に入れば、奨学金が受けられるのだ。そのことは事前に話し合い、エールを送り合ったのだが、当時の朝になって、不安に押し潰されそうになっていた。呼吸がし辛い、指が震える、そうだ!田中だ、ヨシオを見てから会場に行こう、一目だけ!後ろ姿だって良い!

俺は家を飛び出した。朝練場に空

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ラスト・ダンスその3

ラスト・ダンスその3

修学旅行-告白

学年が変わって、俺たちは、ヨシオ・ツヨシと呼び合っている。ヨシオは、黒帯を取得し、空手部の部長になった。在学中に県大会優勝を目指して連日空手三昧だ。いじめが無くなった俺は、奨学金獲得に向けてそれなりに頑張っていた。行動に接点がなくなった俺達だったが、昼食時になるとヨシオが、売店のパンを入れた袋を投げてくる。「ツヨシー、餌だよー」「オー!サンキュなー」と受け取る。多少の期待感で中を

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ラスト・ダンスその2

ラスト・ダンスその2

団扇(うちわ)

夏休み前、中学校での恒例行事がある。走っても徒歩でも、峠を二つ超えて連山のお守りを貰ってくると言うもの、自転車NGだった。

当初、俺は不参加にしていたが、田中が「先にゴールして、引き返してくるから、それまでゆ〜っくり、歩いて来いよ」と言うので参加を決めた。一応家族にも話したが、何のリアクションも無かった。

前日に冷凍庫で凍らせたペットボトルと、チョコレートを持って、大勢の中、

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ラスト・ダンスその1

ラスト・ダンスその1

あらすじ
寄らば大樹の陰で、意識した人、寄ってみたら、その大樹に心惹かれてしまう、一緒に居られれば良い筈なのに、クルクルと踊る相手は別の人、それで良い筈なのに翻弄される心、やがて来たラストダンスの時間、もうフロアには誰もいないのに、音楽は鳴り止まない、そんな恋の物語。

決意

俺は中学1年生の時に家出をした。決して帰らないと覚悟を決めての家出だった。小学校から続く陰湿ないじめが原因だ。中学生にな

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ショート 相談相手

ショート 相談相手

洋子は、買い物が入ったレジ袋を力任せにトートバックに押し込んだ。ちくわと魚肉ソーセージ、長ネギで、今日の買い物は終わり、パートへ行って、先輩のレッスンへ行って、劇団に顔を出して、保育園にエリを迎えに来た。はぁ〜、毎日、この繰り返し、本当に、絶えられなくなっていた。保育士の話を適当に聞き流し、エリの手を引いて帰宅する。

夕飯時、いつもの様に夫は言う、豪華にしろとは言わないが、これほど質素にする必要

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