とび

小説を書いています、3タイプ構成です。【短編集】【長編集】と【異形者達の備忘録】これ等を、マガジン収録したい(進行中)。 現在、【異形者達の備忘録】をマガジンにしようとしてます。

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最近の記事

ショート やっぱり君が好き

世間では就職氷河期なんて言われていた頃、両手に余るほどの面接に落ちていた。彼女がいて同棲までしていたが、アルバイトで何とか食い繋ぐ状況だった。彼女の名前はミサト、ミサトは中堅クラスの会社の正社員で陽気な女性です。 出会いは学生時代、俺はバスケ部で、彼女はそこのマネージャでした。お金が貯まったら旅行しよう、なんて話したこともあった。 路上の針金細工売りで千円の指輪を買い、思い切って借りたちょっと広めのアパートで暮らし始めた。彼女の就職が在学中に決まった時はお祝いしたのに、俺

    • ショート 鬼退治

      5人の少年が入院していた。家出した彼等は、所在不明になり、親達は3日間も探し回った。挙句、鉄橋の下で見つかった。手術は済んで。脳波も順調だ。問題無い筈なのに、1ヶ月近く、1人も目覚めない、原因は全く分からなかった。 眠り続ける子供達の親は、いつ目覚めるか分からないから目を離す事が出来ない、自然と土日は父親、それ以外の日は母親と役割が分担された。話しかけ、体を拭き、向きを変えたりし続けていた。 ある土曜日、父親達5人は病院の喫茶室に集まっていた。吉田真斗の父親が、「あのぅ、

      • 連載小説 サエ子 第12章/最終章

        波路(なみじ) ペットホテルに迎えに行くと、3匹は大騒ぎで飛びついてきた。部屋に戻ると、小さな本棚に白い布を広げ、お位牌を設置し、花と水を供え、写真は劣化しないうちに業者に頼んで加工とデータ化の依頼を決めた。 何をしていても猫ズは2人の体によじ登り、ぶら下がって離れない、ご飯になっても、3匹揃って食べながらウニャウニャと文句が止まらないのだ。本当に、ごめんよニャンズ! 夏休みは後2日もある。チュールもあげようね! 翌日満腹で爆睡する猫達を見ながら、サエ子が「ねえ武史、私

        • 連載小説 サエ子 第11章

          家族写真 山本が電話を切った後、室長が、「普通なら、自分が不利な立場と知って、逃げる所だけどね、相手は頭の薄い変態よ! サエちゃんにお金があるってだけで、接触して来るかもよ、皆んな気を抜かずにね、何かあったらすぐ私に連絡よ!」と言うと、食堂の連中が一斉に「ハイ」って、ありがたいなあ 山本の接触も無いまま、8月に入って繁忙期も終わり、子猫達も成長した。 そんな時、お寺から連絡が来た。寺の再建も終わり、墓地の区画割も済んで、俺達が申し込んであった場所も決まったそうだ。 丁

          連載小説 サエ子 第10章

          タコライスとオム焼きそば これ、山本だよね?とサエ子は呟いた。間違い無いな、と俺も答えた。 「どうしよう武史、アイツ何かの運転資金がいる、とか言っていたから、絶対ここに来るよ、」と言うが、「待て待て、先ず、お前を吉田と呼んでいるからには、俺たちの結婚も知らないだろう、当然情報も漏れていない、画面から場所の特定は難しいと思う、」サエ子は少しホッとしたように見えた。 心配なのは、YouTuberの平井敦子だった、彼女はホームページに住所を晒している。彼女のフォロワー達は、そ

          連載小説 サエ子 第10章

          連載小説 サエ子 第9章

          再来 帰路の車中で、サエ子が言った。「武史、私ね、お金持っているの」「うん、俺だって貯金あるよ、結婚式するか?」「そうじゃ無くて、家族の保険金のことなの、高額あるの、でもアレは家族からの形見だから、お墓を造ろうと思っているの、合同葬儀の時にお寺さんが、名前と住所と生年月日だけで、戒名と位牌を作ってくれて、皆んな位牌を預かってもらっているの、新しい街の整備が終わったら、お墓を立てようと思っているの、お寺や市役所の方は、お墓はいつでも建てられるから、自分の幸せのために使ったら、

          連載小説 サエ子 第9章

          ゾーンと継続

          10代の頃、美大を目指した時、手始めに石膏像のデッサン50枚、描いて来いと言われて、驚いたが、取り敢えず毎日、無我で頑張った。やがて像の美しさに魅了され、アトリエの風景にも魅了され、無我に夢中がくっついた。枚数達成時には、空間に立つパジァントに恋をしていました。無我夢中というゾーンに入っていました。初めて積んだキャリアとそして、受験です。受験は惨敗しました。ずっと昔のことです。

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          ゾーンと継続

          ¥3,000

          連載小説 サエ子 第8章

          見知らぬ風景 猫ネコ・ネットワークに、文句はない! 全部受け入れた。凄く協力的だ。なのに何で! 暴れてばかりで、哺乳瓶に吸い付かないんだよ、「お願い!ミルク飲まなきゃダメでしょー」「頼むよ、何でもするから、飲んでくれよぉ」色々体制を変えてみたりしていたら、アッ咥えた、次の瞬間、すごい勢いでグイグイ飲む、最後になってしまった、1匹は、お腹すいたと、騒ぎまくっている。やれやれこいつもかと、そっと哺乳瓶を近付けると、何と1発で食いついた。思わず泣いたよ、嬉し泣きだ。ありがとうチビ

          連載小説 サエ子 第8章

          連載小説 サエ子 第7章

          猫、ねこ・ネットワーク 日曜日は、昼前に出発した。花で一杯の猫達の棺桶を積んでいるから、なるべくゆっくりと寺へ向かう、ペットにお墓は必要無いと言うことで、3匹の首輪を形見に貰って、火葬と供養をお願いした。全てが終わると住職が、 「猫達は、俺達2人が、山本と一戦交えて、怪我をしたり、罪になることが無いように、最後の力で最大限の制裁を下して逝ってくれたのだから、悔しいだろうが、彼のことは放っておきなさい」と言う言葉に頷いた。 寺を後にすると、もう夕方だ。ファミレスで、本日初

          連載小説 サエ子 第7章

          連載小説 サエ子 第6章

          ネコだって戦う! サエ子は泣いた、幼児のようにヤダーイヤダーと悲鳴を上げ、俺に捕まってしゃくりあげた、そのまま暫く背中をトントンしていた。やっと泣き止んでくれた頃には、外はもう真っ暗だった。マルのGPSを外し、サエ子に熱いお茶を飲ませ、急いで買い物に出た。大きな菓子箱をザラザラと開けて綺麗なタオルを弾きそこに、マルを入れ、買って来た花で一杯にした。サバちゃんのカメラを外し、俺のパソコンにセットした。熱い牛乳で、クッキーを頬張るサエ子と一緒に画面に集中した。 老猫なのに3匹

          連載小説 サエ子 第6章

          連載小説 サエ子 第5章

          怒り 普段食べないドーナツを、興奮して3個も食べてしまったので気持ちが悪い、それ以上に、サエ子から聞いた山本課長の話にムカついていた。 あいつは、サエ子の素性を知って、プロポーズした。お金が無いから結婚式は無し、2人きりで籍だけ入れて、家族になろう、いざという時のために、お互いを受けとり人にして、保険に入ろう、と言って、安い指輪を渡した。 サエ子は、家族と言う言葉に恋をした。だから お金なら保険金があるから、小さな結婚式をしたい、思い出の写真も撮りたい、家族の写真一枚

          連載小説 サエ子 第5章

          連載小説 サエ子 第4章

          理由-2(わけ-2) あれから、3度ほど寿司を奢りました。1度目は板前さんに握ってもらいましたが、2度目からは回転寿司です。サエ子も俺も大食漢なので、自己保身のためです。破産したくないですからね、毎週の様に会ってお喋りと食事をしていたのに、連絡がつかない週が、・・・おまけに、女子社員に、最近サエ子が引っ越したと聞いた。俺は何も聞いていない、好きな人が出来た!とかかな? あいつ惚れっぽいからな、イヤイヤ 今週末は久しぶりに渓流釣りだぜ!ヤッホイ! と自分に言い聞かせた。 そ

          連載小説 サエ子 第4章

          連載小説 サエ子 第3章

          理由-1(わけ-1) サエ子が消えてから、課長も会社に来なくなった。皆は当然だと思った。あの時、彼女の目線がしっかり課長を捉え、彼が目を逸らすことを、許さない、強烈な雰囲気だった。それを、全員が目撃したんだ。公衆の面前で命を絶った。目撃した人はそう思った。捜索願いは出さなかった。行方不明届けだけだ。 サエ子には、親族が無かった。大震災の時、家族で唯一の生存者だった。人事と役職者以外、俺たちは知らなかった。皆んなで泣いた。教育担当の課長が知らなかったとは、思えない。家族の庇

          連載小説 サエ子 第3章

          連載小説 サエ子 第2章

          サエ子との関わり サエ子と出会ったのは、7年前だった。以前勤めていた会社に、新入社員で同期入社だった。彼女は、苦手なタイプだった。肩にかかる程度のストレートヘアで、前見えてる?ってぐらい顔に被せていて、キノコの山に赤い唇があるみたいに見えてた。あるコーヒータイムに彼女の真っ赤な唇に張り付いた一本の毛髪(抜け毛)を見つけてしまった。飲み物に口をつける度に、ヒラヒラと動いている。「ウワッ、お前、口紅に長―い髪の毛張り付いてるよ」って言ったら、「ひどーい」って思いっきり睨まれた。

          連載小説 サエ子 第2章

          連載小説 サエ子 第1章

          川釣り 俺の唯一の趣味が釣りである。最近川釣りにハマってしまって、休みの前日は夕方から寝て、夜中に支度を整えて車を出すのだ。夜の高速を飛ばし、お気に入りのラーメン屋で夕食を取る。そして、真っ暗な山道を駆け上り、夜明けとともに、上流の駐車場に到着、お気に入りのポイントまでは徒歩移動だ。 その日、腹ペコで高速を走っていると、携帯が鳴った。時間が時間だ。イヤな予感しかしない、俺は路肩に車を止め、すぐに電話に出た。 電話の相手は同僚のサエ子であった。「もしもし、武史くん、良かっ

          連載小説 サエ子 第1章

          ショート アトリエ

          近所にアトリエがある。懐かしくて覗いてみた。三階建てのビルで、クロッキー・デッサン教室の張り紙がある。教室と言うからには先生が居る。いかにも美術の先生といった風貌の老人が教えている。教室には中学生からシニアまで居る、時節柄か、圧倒的にシニアが多い、ゆっくり見ていたら、絵の具まみれの白衣を着た青年が、「描いてみませんか? やってみると面白いですよ」と声をかけて来た。「ありがとうございます。学生時代を思い出し、懐かしくて、お邪魔しているだけです。」と言うと、「そうですか、それなら

          ショート アトリエ