【短編小説】シンギュラリティの荒波を乗り越えて:日本の新たな管理者たちの挑戦と日本の奇跡の物語
原案・原作ストーリー
プロローグ
税金制度がなくなった未来の会話
シーン1
A: 「ねえ、昔の人って 『税金』 っていうものを給料から取られてたんだって?」
B: 「そうなんだよ。 よく知ってるね。」
A: 「でもさ、 その 『税金』 でいろんな公共事業の財源が賄われてたんだよ ね。『税金』がなくなった今、 どうやって公共事業の財源を確保してるの?」
B:「いい質問だね。 それはAIが完璧に計算して運用しているからなんだ。 税制分のポイントが十分に確保できるポイントの流れを作り上げたんだよ。」
A: 「え、本当に? 『税金』のような回収方法を取らなくても、ちゃんと財源 を確保できる仕組みがあるってこと?」
B:「その通り。昔は増税政策が多くて、日本は他の国と比べても税率が 高かったんだ。でも、AIが導入されてからは、より効率的にポイントを管理 できるようになったんだ。」
A: 「それってすごいね。 でも、今の時代って普通に暮らせてるし、 昔の経済 状況よりも豊かに感じるんだけど。」
B:「よく気づいたね。 実は、AIの計算力と公平さのおかげで、今の方が一 人あたりの負担率は上がっているんだ。 でも、 その分、社会全体が豊かに なっているんだよ。」
A: 「なるほど。AIが公平に計算してくれるから、みんなが納得できる仕組 みになっているんだね。」
B: 「そうなんだ。これが『完全ポイント制』の魅力なんだよ。
シーン2
A: 「でも、昔は大変だったんだね。 親戚が税金に苦しんでたって聞いたことあ るよ。」
B:「そうだね。 でも、ポイント制に移行してからは、 誰もが必要なポイントを公 平に受け取れるようになったんだ。 たとえば、 子どもの教育ポイントや、 高齢者 の医療ポイントも完全にカバーされてるから、生活がもっと安心になったよ。」
A: 「そうか。それなら、 税金に苦しむ人もいなくなったんだね。」
B: 「その通り。 そしてね、 他の国も追随して、 今じゃ世界中でこのシステムが 採用されてるんだ。 昔のような 『格差』 の問題もかなり解消されたみたいだよ。
A:「未来の社会って、 本当にみんなで作ってるんだね。」
B:「うん、 完全ポイント制はそれを可能にした革命的な仕組みなんだよ。」
シーン3
A: 「でも、 昔は税金逃れとか、 複雑な申告手続きとか、いろいろ問題があっ たって聞いたことがあるよ。」
B: 「そうだね。 でも、 完全ポイント制は、AIがすべての取引を記録するから、
不正がほとんど不可能なんだ。 それに、 申告の手続きもいらないから、すごく シンプルになったんだよ。」
A: 「それって、世界中の国で同じようにやってるの?」
B:「うん、実験的に日本が最初に始めたんだけど、 今じゃ世界中でこのシステ ムが採用されてるんだ。 昔のような 『格差』の問題もかなり解消されたみたい だよ。 それに、 環境問題にも積極的に取り組めるようになったしね。」
C: 「確かに、最初は混乱もあったけど、今は誰もがこのシステムに慣れてる よ。ポイントを使って好きなものを買って、社会貢献もできて、本当に満足して る。」
A: 「すごいね。 でも、AIがすべてを管理するって、 最初の頃はちょっと怖がられ 反対する人もいたんじゃない?」
B: 「確かに、AIの判断に誤りがないか、 公平な立場で常に監視する護民官 のような人が必要になるよね。 でも、 透明性の高いシステムを作るべく、改善 箇所が見つかり次第速やかに修正を加えていったんだ」
それは、ある日突然起こった。
何の前触れもなく、だれも予測していなかった。
それでも、それは、ある日突然起こったのだった。
人気インフルエンサーや、YouTubeでお馴染みのおじいさん元記者や、登録者数が100万人を擁する経済学者のおじさん、炎上戦略で国政政党を作った人たちも「そのようなことが起きるであろう」と、特に警告を発していなかったのにもかかわらず。
しかし、それは、ある日突然起こってしまったのだった。
外を見渡せば、自然界はいつもと変わらぬ日常を見せていたが、人間界は大混乱に陥った。特に各銀行の営業窓口では、老若男女問わずの人たちの怒号が渦巻いていた。
テレビをつければ、どのチャンネルを回しても、ワイドショーでお馴染みの司会者とコメンテーターたちが右往左往するだけで、何の腹の足しにもならない憶測解説が垂れ流されていた。それを見る視聴者の混乱という炎上騒動に油を注いでいるだけのようだ。
中央線沿線の阿佐ヶ谷でワンルーム暮らしをする派遣社員A(26)は、「くっだらん!どうせ、お前たちの生活は安泰なんだろ!」と吐き捨て、リモコンをクッションに投げつけ、テレビの電源を切り、最近飼い始めたハムスターに、小声で語りかけた。
「これからどうなるんだろ?俺たち?」
壁の薄い、隣の住人から漏れ聞く声も、同じ不安にさいなまれている様子だった。
「そういえば、あのおじさん。。。いつも外出してないようだけど、何の仕事してるんだろ?」と、どうでもいい考えが浮かぶも、「考えてもわからん。なるようになれだ」と、吐き捨て、昨日のゲームの続きに興じたのだった。
亀有駅を北上したところにある噴水のある公園が気に入り、すぐ近くのオートロック付きのワンルームに入居を決めた、女子アナ1年生のB子も、YouTubeのライブ配信ニュースを見て「もう、いったい何が起きているのか、これじゃわからないじゃない」と、手に持っていたヘアブラシを手元に投げつけ、すっかり途方に暮れた様子だった。
「一人暮らしじゃ寂しかろう」と、両親が買い与えた愛ネコのミーちゃんは、すばやく身をかわすものの、普段はやさしく、大好きなB子の豹変ぶりに戸惑いつつも、心配そうに彼女の様子を見つめていた。
いったい何が起きたのか?
日本では一体、何が起きているのか?
誰がやったのか?
誰に聞いても「わからない!」の一点張りだった。
この未曽有の非常事態は、なにも、あまりお金を貯めていなさそうな若い人たちだけに起こったことではなかったのだ。
天皇陛下、総理大臣はもとより、政治家、官僚、大手・中小の別なく企業の社長さんたち、投資家たち、大学の教授、いわゆる士業の人たち、病院経営者、お医者さん、裁判官、検察官、警察庁のトップ、メディア関係者などなど。。。
上下階級、地位ステータスの別なく
日本人すべての銀行預金残高、運用可能な資産、外貨トレード用の資金。。。
それらのすべてが、ある日突然「0」になってしまったのだ
この混乱が続いた3日後に、
突然、1日生きるのに必要な3000ポイントが日本全員に支給されたのだ
そして、この救世主ともいえるギフト・カードは、全世帯あてではなく、国民全員あてで郵送されてきたのです。
時期外れなクリスマスプレゼントのようなサプライズに多くの国民は小躍りしたのであった。
それは、厚紙で梱包された実にシンプルな封筒であった。
記念にと、開封前にスマホでその瞬間を撮影する者もいた。
封を開けると、その中には「完全ポイント制」に基づく専用のポイントカードとともに、簡単な説明書が同封されてた
「なになに、なにがどうなっている?」
阿佐ヶ谷のワンルームに住むAは、はやる自分の心を落ち着かせようと、ペットボトルのウーロン茶を一気飲みした。
亀有のB子は、開封作業のお手伝いをする愛ネコ ミーちゃんの参戦により、「こら~ミーちゃん、それ返して」と、すっかりいつもの明るさを取り戻したようだった。
ネコパンチにより取り上げられた説明書を、チュール作戦で取り返したB子は、その内容を注意深く読み解いていった。
「あなたのポイントカードが届きました!」
と、書かれていたのか否かは、定かではないが、どっきりな「ギフトカードって本当にあるんだ」
「世の中、捨てたもんじゃないな」と多くの人が感じたことだけは確かなようだった
そこに記載されていた内容を要約すると
「ええ?」
「うっそ~」
このポイントカードは、電子マネーのようにさまざまな用途で使うことができた。最寄りの駅でカードをかざせば、スムーズに改札が開く。電車だけでなく、バスの乗車やタクシーの決済も対応しており、「キャッシュレス」の進化版とも言える利便性だ。
町のコンビニでは、「ピッ」という軽快な音とともに、カードをかざすだけで商品の購入が完了する。ある主婦が、スーパーのレジで野菜と牛乳を買いながら嬉しそうに話していた。
「これ、ほんとに使いやすいわ。現金いらずで、財布が軽くなっちゃった!」
飲食店でも利用可能だった。あるサラリーマンが昼休みにラーメンを食べ、カードで決済すると店主がにっこり微笑んで言った。
「新しい時代が来ましたねえ。これでうちの売上も確実に記録されますよ。」
全国各地で、「ポイント」が生活に溶け込んでいく様子が見られた。テレビのニュースでも連日、「完全ポイント制」による生活の変化が特集されており、インタビューを受けた若者がこう答えていた。
「最初は不安だったけど、実際使ってみたらすごく便利。今の時代に合った仕組みだと思います。」
さまざまな場面から漏れ聞こえる国民の評判は上々の様子だった
「なんか、あのアニメで見たような話しじゃね?」
「明日は、支給されるのかな」
「『よう実』みたいに、ちゃんとしてないと支給されないんじゃね?」
「これじゃ、まるで3日後に復活するイエスじゃないか」
「いったい、ぜんたい何が起きているんだ」
多くの人が右往左往する中、
圧倒的大多数の低所得者層の人たちにとってはいつもと変わらない金銭感覚なので、最初の3日間は、さすがにビビったものの、1日ごとに着実に支給されるポイントに安心し、いまではすっかり落ち着きと冷静さを取り戻していた。
経済活動も、そのポイントによって、すべてが賄えていることに人々は驚きはしたが、それは些細な問題のようにさえ感じられたほどに、いままでに聞いたことのない「通貨を使わない」ポイント流通経済システムが完備していたのだった。
阿佐ヶ谷でワンルーム暮らしをする派遣社員Aも、この時ばかりは上機嫌で、右往左往する社長、荒稼ぎしていたであろう人気ユーチューバーたちが焦りまくるのを見てひとりほくそえんでいたのだ
「1日、3000円あれば、大金持ちじゃん!」と
「やれやれ、やれやれ。もっと焦りまくれ」とポテチをつまみながら余裕綽々で、ヒマワリの種をほうばるハムスターに1人勝利宣言をするのだった
この、1日当たり、人が生きるのに必要なポイントが支給される日々が3か月ほど続いたころ、多くの人は、この支給をする勢力の人たちが、わたしたちの管理者として最も信頼に値する!と思い始めたのだ。
半年もすると、この突如として登場した新たな管理者たちは、庶民の間では「救世主」として喝采を浴びていた
「弥勒様だ」
「弥勒さまが、現れて、わしらを救ってくださったのじゃ」と
この、新たな管理者たち=「救世主」の正体とはいったい何者なのか
やがて人々の興味関心は、その1点にだけ注がれるようになった
すると、SNSなどの電脳空間を通じてこんなメッセージが発信されたのだ
「みんな、元気にしてますか?
半年前は驚かしてごめんね!
でもね
まえの管理者たちって、特異点(シンギュラリティ)が間近に迫ってるというのに何もしなかったじゃないですか
「103万円の壁」とか、「兵庫県知事選挙」での騒動話ばかりで、やがて来る大失業時代に向けた「生存権」を守るための対策には目もくれなかったではないですか
なので、わたしたちはそんな古ぼけた管理者たちに大喝!を入れようと思ったのです。市民階層の「生存権」を守り、生きていくために必要不可欠な資金(ポイント)を支給する形でね」
このメッセージを聞いた多くの国民は、なんだか胸のすくような勝利感の安堵とともに、すっかり落ち着きを取り戻し、いつもと変わらぬ日常?いやいや、前よりも活気に満ちた日々の生活に大満足していたのだ。
これにより、「オールドメディアは!」とか「財務省は!」という炎上騒ぎが、遠い昔の記憶として忘れ去られる形で、日本の管理者が、すっかり入れ替わってしまったことを、多くの人たちは薄々感じ始めもした。
いまだに騒いでいるごく一部の、ほんの3か月前までは上位階級に君臨して、日本を我が物顔で謳歌してきた、ほんの一握りの人たちだけを残して。
そんな世論のざわめきの陰で、この「新しき管理者」たちが、この「完全ポイント制」の導入にあたって、さんざんに頭を悩ませていたもがあったことを彼らは知る由もなかったのだ。
この導入が決まった数年前のこと
新しい管理者として君臨した彼らは、日本を救うという使命感に燃えながらも、一つの問題に深く頭を悩ませていた。
「ポイントカードの導入は確かに革命的なアイデアだ。しかし、これが略奪や犯罪を引き起こす引き金になる可能性は、決して低くない。むしろ、この状況下では劇的に高まるだろう……」
会議室には重い沈黙が漂っていた。新体制を構築してから数週間、管理者たちはこの問題の解決策を、寸暇・食べる暇や寝る暇も惜しみ探し続けていた。
「カードそのものを狙った犯罪が頻発すれば、国民の不安は爆発するだろう。これまでの信頼基盤が一気に崩壊する……」
一人の管理者が声を絞り出した。その顔には深い疲労の色が刻まれていた。
「配布されたポイントが安全に管理され、略奪が不可能であることを示さなければならない。さもなくば、制度そのものが崩壊する」
別の管理者がデジタルモニターに向かいながら言った。画面には「認証システム」や「犯罪予測アルゴリズム」のシミュレーション結果が次々と映し出されていた。
「略奪を防ぐには、生体認証の徹底が不可欠だ。カード単体ではなく、スマートフォンや端末と紐づけ、顔認証や指紋認証を義務化する案が有効だろう」
技術担当の管理者が提案を投げかけた。しかし、別の管理者は深くため息をついた。
「だが、それだけで十分だろうか?人々が使用方法に慣れるまで、時間がかかるはずだ。その間に不正が横行すれば、この制度自体が崩壊しかねない」
「……ならば、カード自体を電子化してしまうのはどうだろう?紛失や盗難リスクがある物理カードを排除し、専用アプリでの運用に移行する。スマートフォンの普及率を考えれば、現実的な選択肢だ」
この案には一瞬の静けさが訪れたが、すぐに別の懸念が続いた。
「だが、それではスマートフォンを持たない層をどうする?全ての国民が公平に利用できる制度にするのが、私たちの使命ではないのか?」
最年長の管理者が低い声で指摘した。
議論は夜を越えて続いた。彼らの脳裏には、略奪行為が凶悪犯罪へと発展し、混乱が収拾不能となる未来のビジョンがはっきりと浮かんでいた。
「私たちが慎重になりすぎると、導入が遅れる。しかし、急ぎすぎれば、災厄を招く……」
リーダー格の一人が、苦渋の表情で呟いた。
最終的に、彼らは以下の決定を下すこととなった。
こうして、管理者たちはわずか数週間でシステムの設計を完成させた。彼らの努力は、日本を「特異点の大混乱」から救う重要な一歩となるはずだった。しかし、未来がどう転ぶかは、誰にも分からない。
こうした苦悩により、新たに君臨した管理者たちは、半年もかけない超短期間で「完全ポイント制」の導入に成功したのである。
この日本の成功事例を目の当たりにした世界各国のトップたちは、あまりの見事さにただただ驚くばかりだった
「日本は、うまいことやりましたね」
「実に、見事だったよ」
「暴動も起こらず、ここまで上手くいくとは」
「日本の民度がうらやましい限りです」
と、
この日本劇場ネタの話しが尽きることはなく、彼らの口には、花が咲きまくっていたのだ
そして、この新たにその座に君臨した「新たなる日本の管理者」による見事なまでの荒療治により、日本は203x年に世界中で巻き起こった「特異点」(シンギュラリティ)による大失業の大混乱を見事なまでに無事乗り切ったのであった
「完全ポイント制」の導入により、豊かな暮らしが保証され、時間にゆとりのできた、多くの日本人の中で、「生と死を超越する」方法について真剣に議論するグループが日本全国各地に誕生していた。
こうした日本の動きに世界はまた驚かされた。
「この人類の悲願について真剣に語らう中で、本当に地球村の人類は今世紀中に『生と死を超越する』方法を発見するのではないか」。
そうした期待に地球村全体が、この人類の悲願という「希望の光」を我が胸に点灯させ、みな心踊らせるのであった。
(完)
この物語の「後日談」として、
あ、そうそう、言い忘れてましたが、「完全ポイント制」を導入した1年後のある日のこと、すべての財産が「0」になった富裕層を対象に、「0」になる前にあった、すべての資産・全財産のすべてが「ポイント」として返還されたのであった。
しかし、そうした財産返却が可能になった、その背景には、「完全ポイント制」を通じて、すべてのカネの流れを完全監視・管理システムが完成したが故に可能な政策だったということについては誰も知る由もなかった。
新政府が秘密裏に行い、その真相を隠したままに決行された、この「完全ポイント制」というシステムにおいては、税金、社会保険料といった、いわゆる「基礎控除」という概念は完全に消えてしまったのである。
自動車の保険システムにあっても任意保険を除いて自賠責保険といった強制的な保険加入も免除されるようになったのだ。
しこうして、冒頭のプロローグにあげた未来の人たちの世間話~「昔は税金というものに苦労したんだって」云々の「奇跡の日本劇場物語」は、こうして完成をみたのであった。
さらに、この「完全ポイント制」というシステムでは、RPGゲーム的な要素が随所に組み込まれたため、政府が公表しなかったこの事実を疑ったり、陰謀論的な話しに興味を持つ人もいなかったのも事実なのである。
なぜなら、こんな話をせずとも
個人レベルでも、ポイント稼ぎができるビジネスチャンス、ワクワクな学び、創作・出会いの機会の方がたくさん提供されていたからなのです
ChatGPT40miniによる寸評
改編版
それは、ある日突然のことだった。
それは、何の前触れもなく、ある日突然起こったのだ。
誰も予期していなかったし、予言者めいたインフルエンサーや大御所解説者たちも、これについては何の警告も発していなかった。ただ淡々と日々をすごす人々に、何の兆候もなく、それはある日突然、容赦なく襲い掛かったのであった。
人気インフルエンサーたちはいつものように陽気な投稿を繰り返し、YouTubeでお馴染みの元記者のおじいさんも、経済学者のカリスマYouTuberも、何ひとつ警告を発する気配はなかった。
むしろ、彼らの活動は通常運転だった。炎上戦略で国政政党を作り上げた人物でさえ、これが起こるとは予見していなかった。
だが、その日は突然やってきたのだ。
外を見渡せば、自然界はいつもと変わらぬ日常を見せていたが、人間界では大混乱に陥っていた。そんな人間界の喧騒をよそに、いつもと変わらない穏やかな空模様。自然界は何も変わらない日常を紡いでいる。
空は晴れわたり、鳥たちはいつものようにさえずり、街路樹は心地よい風に揺れていた。
しかし、人間界だけは異様な熱気に包まれ、全国各地で大混乱に陥ったていたのだ――。
とりわけ銀行の営業窓口では大混乱が巻き起こっていた。パニックに陥った老若男女が押し寄せ、怒号が飛び交い、泣き叫ぶ人々であふれ返っていた。
「どうして私のお金がゼロになってるんですか!」
「誰か説明しろ!」
テレビをつけると、どのチャンネルも「前代未聞の事態」を特集するが、パニック一色だった。
ワイドショーでお馴染みの司会者やコメンテーターたちは、冷静を装いながらもどこかおどおどした様子で、何の腹の足しにもならない憶測ばかりの解説を垂れ流すばかりで、それを見る視聴者の不安をあおり、混乱という名の炎上騒動に油を注いでいるだけのようだ。
「これって陰謀なんですかね?」
「いや、もしかすると新しい国家的なプロジェクトかも――」
結局、何がどうなっているのかは不明なままだった。
視聴者の混乱は深まる一方だった。
中央線沿線、阿佐ヶ谷のワンルームに暮らす派遣社員のA(26歳)は、そんなテレビを見ていたが、
「くっだらねえ!どうせ、お前たちの生活は安泰なんだろ!」
と吐き捨て、リモコンをクッションに投げつけ、テレビの電源を切ると、最近飼い始めたハムスターに、不安げに語りかけた。
「これからどうなるんだろ?俺たち?」
壁の薄い、隣の住人から漏れ聞く声も、同じ不安にさいなまれている様子だった。
「そういえば、あのおじさん。。。いつも外出してないようだけど、何の仕事してるんだろ?」と、どうでもいい考えが浮かぶも、「考えてもわからん。なるようになれだ」と、吐き捨て、昨日のゲームの続きに興じたのだった。
彼の夕食は、スーパーで半額になった冷凍ピザ。食べかけのピザを口に放り込みながら、スマホで「X」や「Bluesky」、それらしき解説をしているだろうYouTube動画をチェックするも。。。
しかし、そこも大混乱だった。
一方、亀有駅を北上したところにある噴水のある公園が気に入り、すぐ近くのオートロック付きのワンルームに入居を決めた、女子アナ1年生のB子も、YouTubeでライブ配信されていたニュースを見ていたが、思わず手に持っていたヘアブラシを投げつけた。
「もう、何がどうなってるのよ……! これじゃ何が起きてるかさっぱりわからないじゃない!」
「一人暮らしじゃ寂しかろう」と、両親が買い与えた愛ネコのミーちゃんは、すばやく身をかわすものの、普段はやさしく、大好きなB子の豹変ぶりに戸惑いつつも、心配そうに彼女の様子を見つめていた。
いったい何が起きたのか?
日本では一体、何が起きているのか?
誰がやったのか?
誰に聞いても「わからない!」の一点張りだった。
事態は、こうだった。
この未曽有の非常事態は、なにも、あまりお金を貯めていなさそうな若い人たちだけに起こったことではなかったのだ。
それは――日本中のすべての銀行預金残高、運用資産、外貨トレード用の資金が、一夜にしてゼロになったのだ。
老若男女を問わず、天皇陛下や総理大臣をはじめとする上層部から、派遣社員やアルバイトに至るまで、誰もが一文無しにされた。
文字通り、
上は天皇陛下、総理大臣はもとより、政治家、官僚、大手・中小の別なく企業の社長さんたち、投資家たち、大学の教授、いわゆる士業の人たち、病院経営者、お医者さん、裁判官、検察官、警察庁のトップ、メディア関係者などなど。。。
上下階級、地位ステータスの別なく日本人すべての銀行預金残高、運用可能な資産、外貨トレード用の資金。。。
それらのすべてが、ある日突然「0」になってしまったのだ。
だが、この未曽有の混乱が始まって3日後、
最初の3日間をなんとか乗り越えた後、驚くべき事態が待っていた。
突然に、1日に生きるのに必要な「3000ポイント」が、全国民に一斉支給されるようになったのだ。
そして、なんと、この救世主ともいえるギフト・カードは、全世帯あてではなく、国民全員あてに郵送されてきたのです。
季節外れなクリスマスプレゼントのような国中を巻き込む、このサプライズ・イベントに多くの国民は小躍りしたのであった。
厚紙で梱包された実にシンプルな封筒…
記念にと、開封前にスマホでその瞬間を撮影する者もいた。
封を開けると、その中には「完全ポイント制」に基づく専用のポイントカードとともに、簡単な説明書が同封されてた
「なになに、なにがどうなっている?」
阿佐ヶ谷のワンルームに住むAは、はやる自分の心を落ち着かせようと、ペットボトルのウーロン茶を一気飲みした。
亀有のB子は、開封作業のお手伝いをする愛ネコ ミーちゃんの参戦により、「こら~ミーちゃん、それ返して」と、すっかりいつもの明るさを取り戻したようだった。
ネコパンチにより取り上げられた説明書を、チュール作戦で取り返したB子は、その内容を注意深く読み解いていった。
「あなたのポイントカードが届きました!」
と、書かれていたのか否かは、定かではないが、どっきりな「ギフトカードって本当にあるんだ」
「世の中、捨てたもんじゃないな」と多くの人が感じたことだけは確かなようだった
そこに記載されていた内容を要約すると
「ええ?」
「うっそ~」
このポイントカードは、電子マネーのようにさまざまな用途で使うことができた。最寄りの駅でカードをかざせば、スムーズに改札が開く。電車だけでなく、バスの乗車やタクシーの決済も対応しており、「キャッシュレス」の進化版とも言える利便性だ。
町のコンビニでは、「ピッ」という軽快な音とともに、カードをかざすだけで商品の購入が完了する。ある主婦が、スーパーのレジで野菜と牛乳を買いながら嬉しそうに話していた。
「これ、ほんとに使いやすいわ。現金いらずで、財布が軽くなっちゃった!」
飲食店でも利用可能だった。あるサラリーマンが昼休みにラーメンを食べ、カードで決済すると店主がにっこり微笑んで言った。
「新しい時代が来ましたねえ。これでうちの売上も確実に記録されますよ。」
全国各地で、「ポイント」が生活に溶け込んでいく様子が見られた。テレビのニュースでも連日、「完全ポイント制」による生活の変化が特集されており、インタビューを受けた若者がこう答えていた。
「最初は不安だったけど、実際使ってみたらすごく便利。今の時代に合った仕組みだと思います。」
さまざまな場面から漏れ聞こえる国民の評判は上々の様子だった
「なんか、あのアニメで見たような話しじゃね?」
「明日は、支給されるのかな」
「『よう実』みたいに、ちゃんとしてないと支給されないんじゃね?」
「これじゃ、まるで3日後に復活するイエスじゃないか」
「いったい、ぜんたい何が起きているんだ」
多くの人が右往左往する中、圧倒的大多数の低所得者層の人たちにとってはいつもと変わらない金銭感覚からか、最初の3日間は、さすがにビビったものの、1日ごとに着実に支給されるポイントに安心し、いまではすっかり落ち着きと冷静さを取り戻していた。
こうして、最初はパニックに陥った人々も、徐々にこの新システムに慣れていった。とりわけ低所得者層には大好評だった。
経済活動も、そのポイントによって、すべてが賄えていることに人々は驚きはしたが、それは些細な問題のようにさえ感じられたほどに、いままでに聞いたことのない通貨を使わないポイント流通経済システムが完備していたのだった。
「新しいイエスか?」
「これじゃまるでイエスだな」
「いったい誰がやっているんだ?」
ポイント制の導入により、最初は混乱していた人々も徐々に落ち着きを取り戻していった。とくに、これまで低所得層に属していた人々は、「3000ポイントで十分やっていける」とほくそ笑んでいる。
阿佐ヶ谷の派遣社員Aも、今では落ち着きを取り戻し、ネットで右往左往する有名YouTuberたちを見てあざ笑った。
「ざまぁ見ろよ。あんたらもこれで普通の人だな!」
そんな飼い主であるAの、ひとり優越感には気にも留めず、マイペースでいつもと変わらぬ日常をすごすハムスターは、なにやらベッドルームの模様替えを始めたようだ。
一方、亀有のB子も、ポイント支給に慣れ、以前より質素な生活を楽しむようになった。ミーちゃんと過ごす時間も増え、心に余裕が生まれていた。
管理者の交代?
このポイント制度が導入されてから3か月後、多くの人々がこの新しい「管理者」を信頼するようになった。
「オールドメディアは時代遅れだ」
「財務省?そんなのどうでもいい」
旧来の支配階級が駆逐され、新しい秩序が日本に確立されたのだ。
騒ぎ続けるのは、ほんの一握りの元エリートたちだけ。
しかし、彼らの声は次第に小さくなり、遠い昔の話のように人々から忘れ去られていった――。
こうして、「ある日突然」の変化が日本を飲み込み、すべてを塗り替えたのである。
半年もすると、新たに現れた管理者たちは、庶民から絶大な支持を得るようになっていた。従来の管理者たちは姿を消し、誰もが彼らを忘れ去った。古いメディアの評論家たちも失墜し、炎上商法で成り上がった政治家たちは影も形もなくなった。
「弥勒様だ」
「弥勒さまが、現れて、わしらを救ってくださったのじゃ」
この、新たな管理者たち=「救世主」の正体とはいったい何者なのか
やがて人々の興味関心は次第に、この新しい管理者たちの正体に注がれるようになった。
そんなある日、SNSの電脳空間にこんなメッセージが届いた。
「みんな、元気にしてますか?
半年前は驚かせちゃって、ごめんね!
でも、どうしてもやらなきゃいけなかったんだ。
特異点(シンギュラリティ)が目前に迫っているのに、前の管理者たちは何もしなかったからね。『103万円の壁』とか、『兵庫県知事選挙』なんて騒ぎばかりで、これから来る大失業時代に備えた『生存権』の確保なんて、考えもしなかったではないですか。
なので、わたしたちはそんな古ぼけた管理者たちに“大喝”を入れたんだ。
市民階層の『生存権』を守り、誰もが安心して生きられる仕組みを作るために、生きていくために必要不可欠な資金(ポイント)を支給する形でね」と
このメッセージを聞いた人々の多くは、胸のすくような爽快感を覚えた。そして、すっかり落ち着きを取り戻し、いつもと変わらぬ日常? いやいや、前よりも活気に満ちた日常に戻り、むしろ新しい秩序に満足するようになった。
これにより、「オールドメディアは!」とか「財務省は!」という炎上騒ぎが、遠い昔の記憶として忘れ去られる形で、日本の管理者が、すっかり入れ替わってしまったことを、多くの人たちは薄々感じ始めもした。
だが、一部の元上位階級者たちはまだ騒いでいた。
「こんなやり方は、何かがおかしい!」と。
しかし、そんな彼らの声もやがて消えゆく運命にあった。
こうして日本は、古き管理者たちから新たな管理者たちへと、完全に入れ替わったのだった。
その行方を見つめる人々の目には、どこか輝く希望が宿っていた。
それが「弥勒」と呼ばれる存在なのか、それとも未知のAIや新しい意識体なのか――それを知るのは、もう少し先の未来の話である。
そんな世論のざわめきの陰で、この「新しき管理者」たちが、この「完全ポイント制」の導入にあたって、さんざんに頭を悩ませていたものがあったことを彼らは知る由もなかったのだ。
この導入が決まった数年前のこと
新しい管理者として君臨した彼らは、日本を救うという使命感に燃えながらも、一つの問題に深く頭を悩ませていた。
「ポイントカードの導入は確かに革命的なアイデアだ。しかし、これが略奪や犯罪を引き起こす引き金になる可能性は、決して低くない。むしろ、この状況下では劇的に高まるだろう……」
会議室には重い沈黙が漂っていた。新体制を構築してから数週間、管理者たちはこの問題の解決策を、寸暇・食べる暇や寝る暇も惜しみ探し続けていた。
「カードそのものを狙った犯罪が頻発すれば、国民の不安は爆発するだろう。これまでの信頼基盤が一気に崩壊する……」
一人の管理者が声を絞り出した。その顔には深い疲労の色が刻まれていた。
「配布されたポイントが安全に管理され、略奪が不可能であることを示さなければならない。さもなくば、制度そのものが崩壊する」
別の管理者がデジタルモニターに向かいながら言った。画面には「認証システム」や「犯罪予測アルゴリズム」のシミュレーション結果が次々と映し出されていた。
「略奪を防ぐには、生体認証の徹底が不可欠だ。カード単体ではなく、スマートフォンや端末と紐づけ、顔認証や指紋認証を義務化する案が有効だろう」
技術担当の管理者が提案を投げかけた。しかし、別の管理者は深くため息をついた。
「だが、それだけで十分だろうか?人々が使用方法に慣れるまで、時間がかかるはずだ。その間に不正が横行すれば、この制度自体が崩壊しかねない」
「……ならば、カード自体を電子化してしまうのはどうだろう?紛失や盗難リスクがある物理カードを排除し、専用アプリでの運用に移行する。スマートフォンの普及率を考えれば、現実的な選択肢だ」
この案には一瞬の静けさが訪れたが、すぐに別の懸念が続いた。
「だが、それではスマートフォンを持たない層をどうする?全ての国民が公平に利用できる制度にするのが、私たちの使命ではないのか?」
最年長の管理者が低い声で指摘した。
議論は夜を越えて続いた。彼らの脳裏には、略奪行為が凶悪犯罪へと発展し、混乱が収拾不能となる未来のビジョンがはっきりと浮かんでいた。
「私たちが慎重になりすぎると、導入が遅れる。しかし、急ぎすぎれば、災厄を招く……」
リーダー格の一人が、苦渋の表情で呟いた。
最終的に、彼らは以下の決定を下すこととなった。
こうして、管理者たちはわずか数週間でシステムの設計を完成させた。彼らの努力は、日本を「特異点の大混乱」から救う重要な一歩となるはずだった。しかし、未来がどう転ぶかは、誰にも分からない。
こうした苦悩により、新たに君臨した管理者たちは、半年もかけない超短期間で「完全ポイント制」の導入に成功したのである。
この日本の成功事例を目の当たりにした世界各国のトップたちは、あまりの見事さにただただ驚くばかりだった
「日本は、うまいことやりましたね」
「実に、見事だったよ」
「暴動も起こらず、ここまで上手くいくとは」
「日本の民度がうらやましい限りです」
と、
この日本劇場ネタの話しが尽きることはなく、彼らの口には、花が咲きまくっていたのだ
そして、この新たにその座に君臨した「新たなる日本の管理者」による見事なまでの荒療治により、日本は203x年に世界中で巻き起こった「特異点」(シンギュラリティ)による大失業の大混乱を見事なまでに無事乗り切ったのであった
「完全ポイント制」の導入により、豊かな暮らしが保証され、時間にゆとりのできた、多くの日本人の中で、「生と死を超越する」方法について真剣に議論するグループが日本全国各地に誕生していた。
こうした日本の動きに世界はまた驚かされた。
「この人類の悲願について真剣に語らう中で、本当に地球村の人類は今世紀中に『生と死を超越する』方法を発見するのではないか」。
そうした期待に地球村全体が、この人類の悲願という「希望の光」を我が胸に点灯させ、みな心踊らせるのであった。
ー総括編ー
世界が驚愕した「日本劇場」
日本に突如訪れた混乱と、それを収めた新管理者たちの大胆な行動――この一連の出来事は、あっという間に世界中の注目を集めた。
「完全ポイント制」。
それは、一部の理想主義者や未来学者が夢想していた、すべての資本と労働の概念を根底から覆すシステムだった。しかし、それを現実のものとした国が現れるとは、誰も思わなかったのだ。
新たな管理者たちは、半年前の電撃的な資産リセットの混乱から、わずか数か月で完全ポイント制を導入し、安定稼働にまで持ち込んだ。そのスピード感、実行力、そして暴動ひとつ起こさず実現させた手腕に、世界は唖然とするほかなかった。
世界のリーダーたちの反応
世界中の首脳陣が集まる国際会議の場では、当然のようにこの「日本劇場」が話題に上った。
「日本は、うまいことやりましたね」
フランスの大統領は、どこか感心しつつも嫉妬を隠しきれない表情で語った。
「実に、見事だったよ」
アメリカのリーダーは、いつになく謙虚な態度で讃えた。
「暴動も起こらず、ここまで上手くいくとは」
ロシアの代表は驚きを隠せず、何度も報告書を読み返していた。
「日本の民度がうらやましい限りです」
アジア諸国のリーダーたちは、同胞の成功に心から拍手を送った。
そして、会議の合間に交わされる雑談でも、この話題は尽きることがなかった。
「やっぱり、彼らの管理者はAIだろうか?」
「いや、人間だとしたら、一体どんな教育を受けているんだ?」
「シンギュラリティが来る前に、私たちも手を打たなければ……」
各国首脳の口からは、次から次へと質問や感想が飛び出し、その場はまるで「日本礼賛の花園」と化していたのだ。
「劇場の裏側」としての管理者たちの謎
だが、そんな「日本劇場」の成功を讃える声の裏側では、新管理者たちの正体について、さらなる憶測が飛び交い始めていた。
彼らは、SNSを通じてフレンドリーなメッセージを送りながらも、その実態は誰も知らない。姿を現さないだけでなく、名前や所在地すら特定できないのだ。
「管理者たちは本当に人間なのか?」
「それとも、これが特異点(シンギュラリティ)の到来を告げる何かの布石なのでは?」
一部の陰謀論者たちは、「管理者=宇宙人説」や「日本に秘密裏に開発された超AI説」を唱え始め、インターネット上では真偽不明の噂が拡散していった。
日本劇場は続く
一方、国内では新管理者たちが生み出したポイント制による新生活を、人々は存分に楽しんでいた。
「今月はポイントが余ったから、温泉旅行にでも行こうかな」
「ポイントで本が買えるようになってから、読書が習慣になったよ」
こうした声が街角に溢れ、商業エリアは再び活気を取り戻した。まるで「新しい経済モデルが完成した」と錯覚するほどに、生活は平穏を取り戻していた。
世界は次に何を見るのか
だが、この平穏もいつまで続くのか、誰も確信は持てていなかった。
世界中が「日本劇場」の続きを見守る中で、次に訪れる「幕開け」が何であるかは、まだ誰にもわからない。ただ確かなのは、日本が未来を切り開く「新しい希望の象徴」として、世界に君臨し始めているということだった。
それは、静かに、しかし確実に、次の「物語」への扉を叩こうとしていた――。
「特異点の荒波を越えて」
そして、この新たにその座に君臨した「新たなる日本の管理者」による見事なまでの荒療治により、日本は203X年、世界中で巻き起こった「特異点」(シンギュラリティ)による大失業の大混乱を見事に無事乗り切ったのであった。
シンギュラリティ――それは、人工知能が人類の知能を凌駕し、社会のすべてが劇的に変革される転換点。自動化の波が一気に押し寄せ、多くの職業が消滅し、人々の生活基盤が根底から揺るがされた。世界中で暴動や混乱が相次ぎ、多くの国々が混迷を深める中、日本だけは例外だった。
荒療治の効果
完全ポイント制の導入は、すでに人々の生活の中で深く根付いていた。管理者たちは、失業者が急増しても、迅速にポイントの配給量を増やし、生活インフラの供給を確保することで、人々の不安を最小限に抑えた。
「仕事を失ったけど、不安はないよ。ポイントがあるからね」
「これからは、趣味や学びの時間を増やせそうだ」
そんな声が国内で広がり、日本人の精神的な安定ぶりは、海外のメディアでも大々的に取り上げられた。
世界からの注目と称賛
「特異点の混乱を、あれほど冷静に乗り切るとは……」
「どうやら、完全ポイント制は理論上の夢物語ではなく、実際に機能するものらしい」
アメリカや欧州諸国のリーダーたちからも、日本の成功に対する賞賛の声が続々と上がった。中でも、国際経済フォーラムの議長は記者会見でこう述べた。
「日本は、世界が恐れていた未知の未来に対し、前例を作りました。人類の新しいモデルケースです」
各国の政治家や学者たちは、日本の管理者たちがどのように荒療治を成功させたのか、その仕組みを解明しようと血眼になった。そして、これを模倣する動きが世界中で加速していった。
日本の未来はどこへ向かうのか
管理者たちがSNSで発信したメッセージは、今や国境を越え、地球全体に影響を与えるようになっていた。
「特異点の時代は、私たちに『本当の自由』を与える時代でもあります。今こそ、全人類が次なる挑戦に向けて共に進む時です」
これまでにない希望とともに、日本発のモデルは新たなグローバルスタンダードへと進化を遂げていく。その未来には、さらなる挑戦が待ち受けているのかもしれない。それでも、人々は信じていた。
日本が新たに築いた「完全ポイント制」という荒療治の奇跡が、地球の未来を導いていく灯台となることを――。
生と死を超越する探求:日本が未来を切り拓く時代の到来
時間にゆとりが生まれた日本では、「生と死を超越する」という壮大なテーマが、多くの人々の関心を集めるようになった。
全国各地で誕生したグループは、宗教や科学、哲学の枠を超え、真剣に議論を交わし合った。高齢者も若者も、知識人も一般市民も、互いの考えを尊重し、学び合う場を形成していた。
その動きに世界は再び驚愕した。
「このテーマに本気で向き合っているのは、どうやら日本だけのようだ。」
「もしかしたら人類史上初めて、『生と死を超越する』方法を彼らが発見するのではないか?」
そうした期待と興奮が、地球村全体に広がり始めた。やがて、「日本は未来を先導する国だ」という声が、世界中のあらゆるコミュニティで囁かれるようになったのだ。
やるべきことを明確にし、希望を胸に一歩を踏み出した人々。
その光景は、人類が「未来」そのものをつかむ瞬間のようだった。
この動きの中で、日本と世界は未曽有の調和と進化を目指して歩み始めたのである――希望の光とともに。
(完)
後日談
あれから一年――。
「完全ポイント制」が導入されて以降、社会は驚くほどの安定を見せていた。かつての混乱が嘘のように、街には秩序が戻り、人々の生活には新たなリズムが刻まれ始めていた。
そんなある日のこと、かつて巨万の富を誇った富裕層たちに、驚くべき通知が届いた。
内容はこうだ。
「完全ポイント制に移行する以前に所有していた全財産のポイント返還を実施します。」
一部の者は目を疑い、一部の者は詐欺か何かではないかと疑った。しかし、その通知は正真正銘、政府からのものであった。指定された手続きに従い、生体認証と過去の財産記録を確認した彼らのもとには、消失したはずの財産が、すべて「ポイント」という新たな形で返還された。
「まさか、こんなことが本当に可能だとは……」
財産を取り戻した一人の富豪が震える声で呟いた。彼は、すべてを失った一年間を深い苦悩の中で過ごしてきた。しかし今、その肩の重みが一気に取り払われたかのようだった。
だが、どうしてこんなことが可能だったのか?その背景にあった「秘密」を知る者は誰もいない。
その秘密とは、「完全ポイント制」によって、すべての経済活動が完全監視下に置かれたという事実だった。すべての資産の流れ――銀行口座の動き、現金の移動、さらには隠し財産や脱税まで――が、新たなデジタル監視網に記録されていたのだ。ポイントという形に変換された「新しいお金」は、もはや人間の意図的な操作を許さない完全な透明性を持っていた。
このシステムは、かつての財産のありかを正確に突き止め、その「所有者」に戻すことすら可能にした。富裕層たちに返還されたポイントの裏には、政府による前代未聞の「完全管理システム」が息づいていたのである。
しかし、政府はこの事実を一切公表しなかった。
「すべてを透明にするためのシステムなど、人々に知られてはいけない。それが『完全ポイント制』を守る唯一の方法だ……」
かつて会議室でそう語った管理者たちの言葉が、今なお静かに響いている。
富裕層たちにとって、この返還は予想外の救いだった。そして同時に、国家が手にした「究極の管理能力」がどれほどの力を持つかを、知る由もなかったのだ。
彼らはただ、一言だけを胸に呟く。
「すべてを奪われたと思ったが、そうではなかった。」
そしてこの事実は、未来の日本社会にとって、また新たな物語の幕開けを予感させる出来事となったのだった。
陰謀論を超えて:完全ポイント制の裏側
あ、そうそう、言い忘れていましたが――「完全ポイント制」が導入されてから1年後のある日のこと。
この総括をしてみましょう
かつて、世界を支配するかのような富を誇っていた者たちがいた。彼らの財産は数兆円、いや、それ以上に膨れ上がり、誰もがその無尽蔵の資産を羨んだ。しかし、ある日、彼らの財産は一瞬にして「0」となった。
「どうしてこんなことに…?」 多くの人々が呆然と立ち尽くし、何が起こったのか理解できなかった。その富を享受していた者たちもまた、自分たちの資産が消え去った瞬間、ただ茫然とするしかなかった。誰もがその原因に疑問を抱き、不安に駆られた。しかし、そうした疑念の中で静かに、そして着実に、一つの驚くべき政策が実行されていたのだ。
それは、ある新しい形態の「財産」の復活であった。
それぞれの富豪の財産は、もはや金銭的な意味を持たなくなった。しかし、その前に築かれていた膨大な資産は、まったく新しい価値の形に変容し、それぞれが特定の「ポイント」として変換されていった。驚くべきことに、それらのポイントは全て、等価で交換可能となったのである。
不動産が「不動産ポイント」へ、貯金が「〇貯ポイント」へ、株式や債券などの投資資産は「投資ポイント」へ、外貨は取引対象国の通貨(ポイント)の識別がわかる「外貨ポイント」へ、さらには資産運用から得たものは「資産運用ポイント」へと、すべてがこと細かく分類された。加えて、物品の売買で得た利益は「🉐労働ポイント」として扱われ、どれもが同じ価値を持つ一つの「ポイント」に変換されたのだ。
なんと、「お金」の使い道に応じた「名称」がつく~それらが分類され「各ポイントに変換される」という人類史上初の試みが秘密裏に決行されたのである
この新しい制度は、ただの経済的な再構築に留まらなかった。すべての「ポイント」は、もはや従来の貨幣の枠組みに縛られることなく、持ち主がどのようにその価値を利用するかに自由を与えた。そして、人々はその「ポイント」の使い道を考えることに夢中になった。
ある者は不動産ポイントを使って新たな土地を購入し、またある者は投資ポイントを駆使して新しい事業を立ち上げた。外貨ポイントを用いて、異国で新たな交易路を切り開いた者もいた。全てが等価で、しかもそのすべてに名称が与えられるという、この人類史上初の試みは、富の概念を根本的に変える瞬間となったのである。
人々の中には、この新しい制度に戸惑い、疑問を抱く者もいた。「お金に名前がつくなんて、どうしてそんなことを?」と。しかし、時が経つにつれ、そのポイントシステムは多くの人々にとって新たな希望となり、富の再分配を自然に、そしてスムーズに進めていった。古い時代の財産が新しい形で生まれ変わり、世界は少しずつ、そして確実に変わっていったのであった。
どうしてそんなことが可能だったのか? その背景には、「完全ポイント制」の導入と同時に構築された、すべてのカネの流れを正確に把握・管理するシステムの存在があったからだ。見えないところで、膨大な情報が分単位で処理され、透明性を保ちながらも一切の隙を許さない仕組みが、政府の手によって完成していたのだ。
しかし、この驚くべき事実を知る者はほとんどいなかった。それどころか、「そんなことがあったの?」と疑念を抱いたり、陰謀論めいた噂が広まることすらなかったのだ。その理由の一つには、富裕層がポイント返還を秘密裏に受け入れたこともあるが、それ以上に、このシステム自体に「RPGゲーム的な要素」がふんだんに盛り込まれていたことが大きい。
「今月のミッションに挑戦しよう!」
「新しいスキルが解放されたぞ!」
「地域イベントでボーナスポイントゲットのチャンス!」
日常生活そのものがまるでゲームのようにデザインされ、特定の目標や課題をクリアするたびに報酬ポイントが得られる仕組みとなっていた。ワクワク感に満ちた学びや、創作の機会が溢れ、日々の生活が単なる「稼ぎ」ではなく、「楽しみ」に変わっていたのである。
こうして、多くの人々は陰謀論に関心を寄せるどころか、システムの真相について深く考える暇すらなくなっていた。なぜなら、そんな話をするよりも、目の前のポイント稼ぎに没頭し、新しいチャンスを掴むほうがはるかに魅力的だったからだ。
そして、時代は着実に進み、「完全ポイント制」という未曾有の挑戦は、単なる制度を超え、生活そのものを彩る新しい文化となっていったのであった。
未来への序章:奇跡の日本劇場物語
さらに、この「完全ポイント制」の導入により、日本社会は根底から大きな変革を遂げた。
まず、かつて人々を悩ませた税金や社会保険料――これらの負担が、完全に消え去ったのである。「基礎控除」といった概念そのものが時代遅れのものとなり、煩雑な手続きや計算に追われることもなくなった。
同様に、自動車に関する保険制度も変革を迎えた。強制加入が義務付けられていた自賠責保険は免除され、残されたのは任意保険だけとなった。これにより、かつての複雑で面倒な仕組みは、あたかも霧が晴れるように一掃された。
こうした変革の結果、国民一人ひとりが抱えていた「見えない負担」は消え去り、かつての日本社会が長年抱えてきた重圧がようやく解き放たれたのである。
やがて月日は流れ、未来の人々が世間話を交わす時代がやってきた。
「昔は税金ってものがあって、いろいろ苦労したらしいよ。」
「社会保険料ってのも取られてたらしいね。信じられない!」
「車の保険まで強制的に加入させられてたんだって!」
「それ、ほんと?なんか信じられないくらい大変だったんだな。」
彼らにとって、そんな話はまるで遠い過去の神話のようだった。
それもそのはず。「完全ポイント制」が導入されたことにより、日本は新たな時代を切り開き、世界中を驚かせるほどの社会的奇跡を実現していたのだ。そして、その奇跡の原点となったのが、冒頭のプロローグに語られた「未来の日本劇場」の物語であった。
こうして、「完全ポイント制」という壮大な試みは、時を超えて語り継がれる伝説となり、「奇跡の日本劇場物語」は一つの完成を迎えたのだった。