懐かしい思い出
先日、広島に住む祖母 節子が亡くなりました。
故人を偲んで、祖母のことについて少し記事にしたいと思います。
人を惹き付ける話し方
長寿ラジオの人気DJ
祖母がどういう人か、一言でいうと”人を惹き付ける話をする人”でした。
祖父母は遠方に住んでいたため、頻繁に会える訳ではありませんでした。
それでも私が小学生の頃は、夏休み等の長期休みの度に会いに来てくれました。
祖母が居るだけで、わくわくするような気持ちが沸き起こっていたのを覚えています。
テンションが高く、ノリが良いという訳ではなく、いつも穏やかで流れるような話し方をする人でした。
そして本当に可笑しくて時折笑いながら話をするので、こちらもつられ笑いをしながら楽しく聞くことが出来ました。
いうなれば、長寿ラジオ番組の人気DJのような感じです。
祖母は楽しい話をたくさんしてくれましたが、今でも記憶している話があります。もう何十年も前の話です。
ドラムの水 丸被りの話
祖父は車好きで、脳梗塞で下半身不随になっても尚、片手足でも動かせるよう車を改造して、祖母を乗せて色々な場所へ旅行へ出かけていました。
実家へも、半日掛けて車で来ることもありました。
在る時、祖父と共に車で到着した祖母が、笑いながら
「車、見とらんけ? 水浸しやろ?」
どうやら来る途中に、ドラム缶に入った水を車全体で浴びたそうです。
高速道路で実家へ向かってくるときの話。
お手洗いのためサービスエリアに立ち寄るように祖父にお願いしていた祖母ですが、”到着時間が遅れるのはいやだからやっぱり辞めましょう”と分岐地点直前で言ったそうです。
祖父は、”えぇっ!!”となりながらも、何とか本線へ戻ろうとしたそうですが、結局間に合わず分岐部に置かれたクッションドラムに追突してしまったそうです。
黄色地に黒の反射シートが貼られたあの大きな樽に、です。
ドラムにはロープがくくりつけられていたそうで、自車とぶつかった瞬間、弧を描くようにドラムがゆっくりと宙に浮いて車の屋根に当たったそうです。
瞬間、爆発するようなドーンという音がして、車が潰れるかと思うような衝撃を感じた直後、フロントガラスやサイドガラスの上方から水がだーっと流れてきて、もうパニックになった祖母は車内でぎゃー!!と叫んでいたそうです。
「もう大変やけぇね!ようもようも、、!」と笑いながら話してくれました。
祖母の話はいつも臨場感に溢れていて、その場に自分がいるような気分にさせてくれました。
結構な事故が起きている訳で、身体は大丈夫なのか、後続車の影響は無かったのか、その後の処理はどうしたのかなど色々気になります。
それでもなぜか一緒に笑っていられる安心感がありました。
美容に目が無い
祖母は、いくつになっても変わらず肌が綺麗であった印象があります。
母によると、祖母は昔から色々化粧品を使っていたようで、家で化粧品営業の方と話をする母を良く見ていたそうです。
鳥取県に肌に良いひょうたん水があると聞くと、祖父と共に車で買い行ったり、愛媛県にお肌を洗うのに良い湧き水があると聞くとわざわざ汲みに行ったりしていました。
お友達と一緒に、美容の注射を打ちに行くこともあったようです。
一緒に温泉旅行へ行った際は、大小様々な形の綺麗な色をした化粧品をポーチに入れているのを見かけました。当時小学生の私が冬の乾燥で肌が荒れていると、何とも言えない独特の香りのするクリームを塗ってくれたのを覚えています。
当時は全く意味不明に感じていた祖母の行動ですが、今となっては理解出来ます。
流石に、美容注射をしていたのには驚きましたが、、
母は祖母とは全く逆のタイプで、化粧に全く感心が無い人ですが、
母に言わせると、私の美容への執念深さの部分は、祖母に似ているそうです。
愛嬌がある
祖母が70歳を過ぎて脚を痛めて入院した時のこと。
辛い思いをしていないと良いな、と思いながらお見舞いに行ったことがありました。
病室に入ると、いつもと変わらず、、寧ろ、より一層お肌を艶々とさせた祖母が、鏡を片手に楽しそうに過ごしていたのを覚えています。
何十回りも年下の担当のお医者さんに、「”節子さんはとても70代には見えませんよ。50代かと思いますよ。”って言われたんよ~!私すっぴんよ!ほんまにねぇ、もう先生口が上手いわ~!」と素直に喜びを爆発させていました。
何処に居ても、祖母はいつも楽しそうで、朗らかな人でした。
難しい顔をしている姿の記憶は余りありません。
愚痴を言うときですら、どことなく面白さと可愛らしさがあって、聞いていても不思議と嫌な気分になりませんでした。
難しい話題が上っても、難しくないような話し方で更に面白さもちりばめながら話をしてくれる人でした。
反対に、こちらが難しそうな話し方をしてしまうと、賢いねぇと褒めてくれる、そんな人でした。
社会人になってから、難しい話を子供にも分かりやすく話が出来る方が、ずっと難しいということを知ってから、凄さを実感しています。
羨ましい存在
この人のそばに居たい、と思うような人ってそんなに多くないと思います。なぜなら自分自身が、誰かをそばに居たいと思わせる人では無いということを自覚しているからです。
一方祖母は、居るだけで周りの空気が和らいで、ずっと隣に座って話をしていたい、と思わせる人でした。
祖母の人を惹き付ける魅力は何処にあるんだろう、と考えてみました。
人生で起きることを面白がっていて、それを素直に感情に表す。
人のことは責めずに良く褒める。
純粋な気持ちで物事を受け入れて感情を表す人を周囲は可愛いと思うし、攻撃しないという安心感を与えてくれるから、この人のそばに居たいと思うのかなと思います。(良い意味で、子供のようです)
私が歳を取ったとき、祖母のように穏やかで、暖かい空気を纏いながら話が出来る人になるのが目標です。
きっと本人も、周りの人も幸せだろうと思うからです。
きっと時間が経てばなれるんじゃないかと思っていましたが、今のところ全くそのレベルに到達していません。(まず、相手が笑ってくれるような話が出来ません、、)
自分に無いものを持っていて羨ましい、自分には出来ない。そう思わせる人ってたくさんいます。
けれども、そういう人が身近に居たということを糧にして、
思い出しながら近づくように努力することは出来るかなと今は思っています。
そうしていつか、気付いたら近づいていたら良いなと思ってます。